首輪を嵌めて飼い殺しましょう

夜瑠

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番外編2.

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今代王家は歴代類を見ないうつけの代だと言われている。

幼い頃から多くの使用人や家庭教師達に「どうか貴方だけは真面に育ってくれ」と懇願されて育ってきた。


留学先で見つけた恋人を正妃にした前代未聞の王の父上。

男の身でありながら正妃の座についた王妃様。

婚約者の座を奪われた常に冷静、無表情の側室の母上。

絵を描くことに人生を捧げてしまったサファ姉上。

植物に魅力されてしまったチナリィ姉上。

料理人になると豪語するアル兄上。

騎士として国に尽くすというジオ兄上。



誰一人として真面に王族としての役目を果たすつもりがないのかと言いたくなるような奴らばかりだ。我が兄弟達は全員が趣味に生きて趣味に死にたいらしい。

全員全力で取り組むから最高水準の知識と技術が伴っていることもまた事態を深刻化させている。

お陰様で普通なら回ってこないだろう王位継承権3位の僕が現在最有力候補として貴族たちに持ち上げられている。

事の始まりはサファ姉上の小さな反発からだった。幼かった姉上は父と正妃を恨み彼らの望まないことをしてやろうと考えた。そのために数々の悪戯を敢行している中で城の廊下にペンキで落書きをした。

それが思ったよりも心に刺さりいつの間にか悪戯心より作品を完成させたい気持ちが強くなった。

もちろん頗る怒られたのだが母上だけが好きなようにやれば良い。ただ壁や廊下は流石にダメだからキャンバスに貴女の思うを描きなさい。と仰られてから絵描きにのめり込んでいった。

大体他の兄弟も似たような感じだ。

母上だけが認めてくれた。
母上だけが褒めてくれた。
母上だけが理解して下さる、

そうして母上の許可の元は次々に王族教育を放棄していったのだ。

「キースセリオ。」

不意に母上が僕を呼んだ。

「はい。母上。」

「何か悩みはありますか。」

「……兄上達が趣味に生きていることです。」

ついムスッとして言ってしまうが母上は変わらぬ無表情でそうか、と答えるだけだった。

「貴方の趣味はなんですか?」

「は?僕の?」

趣味。そんなもの特に思いつかない。帝王学や王族としての教養を他の兄弟の代わりに詰め込まれたから他のことをする暇などない。

難しい顔をして考え込んでいると頭にポスっと母上の細く小さな手が乗っていた。

撫でる、というより置いた、という感じがする。

「貴方の好きなように生きればいい。周りの人達と同じように趣味に生きれば良いのですよ。」

「そうは言っても…僕がしっかりしないと……」

「趣味で息抜き出来ないほど切羽詰まった人に民は着いていきませんよ。余裕を持ちなさい。」


その言葉は僕に大きな衝撃を与えた。そんなこと誰も言わなかった。皆押し付けてくるだけで、息抜きなんて教えてくれなかった。

僕も姉上や兄上みたいに楽しく生きて良いのだろうか。僕はにならないといけないのではないのか。

チラリ、と母上の目をみると無表情の顏に浮かぶ瞳は不安そうな僕を写していた。

「意志を持って生きなさい。」

その言葉は意志を奪われ続けて生きてきた彼女の無念と憧憬のように思えた。





何年も後、今代王家は歴代類を見ない黄金期だと言われることになる。

国境を越え恋人を愛し続けた王。

多くの差別に晒されながら王を支えた王妃。

天才を育て上げた稀代の才媛の側妃。

芸術家の市民権獲得に貢献した第一王女。

特効薬を幾つも創薬した第二王女。

食文化の向上に生涯を捧げた第一王子。

存在だけで他国が恐れる剣豪の第二王子。

そして、それら全ての兄弟を正しく扱い民の生活を1番に考え善政を敷いた後の賢王、第三王子。


今でも国には第三王子の口癖であったと言われる「意志を持って生きなさい」という言葉が広く知られている。





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感想 1

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みんなの感想(1件)

dragon.9
2021.01.02 dragon.9

側妃さまの救済をお願いします。
番外でも、
子供達が立派に育ってよかったです。
先王と王妃やその他、の理不尽にもざまぁwwwwがあればよかったかな!?
愚王と正妃のざまぁwwwwもあれば、尚良し。
なんですが、
子供達が反抗してくれてるようなので、
ちょっとスッキリしました。

切なくて、感情移入しちゃいました。

2021.01.02 夜瑠

感想ありがとうございます!

ざまぁ要素今回は入れられなかったので他の作品で入れられるよう考えてみたいと思います!

今後もよろしくお願いします。

解除

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