首輪を嵌めて飼い殺しましょう

夜瑠

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番外編.

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私はこの国の第一王女として生まれた。

王位継承権は第4位。弟3人の次だ。余程のことが無い限り私が王位につくことは無いだろう。

そのためにお母様は男児を3人産んだのだから。

現在の正妃は前代未聞の男の方だ。そして隣国の方でもある。

幼い頃はその理由がよくわかっていなかったが最近漸くわかってきた。城のメイド達がお喋りしているのを聞いてしまったのだ。

「身体で誘惑した男」
「男に負けた人形」
「生きた愛玩人形」


それらは恐らく正妃様と側室である私のお母様のことだ。

お母様はいつも無表情だ。
何を考えているのか全くわからない。


けれど1度だけ聞いたことがある。

あれはまだ私が5歳の頃、お母様にお父様とデートをしたことがあるか聞いた時。今思えばとても残酷なことを聞いてしまった。

どんな顔をしていたのか覚えていないがその日の夜にわざわざ私の部屋に来てくださったお母様とお話をしたのだ。そんなこと1度もしたことがないのであれから3年経った今でも覚えている。


「サファ。よく聞きなさい。」

「はい。お母様。」

「これから何があっても笑って泣いて、感情を表に出して生きなさい。王族らしくなくても良いからしたいようにして生きなさい。自分で考えて行動しなさい。母のようになってはなりませんよ。」

いつもの様にお母様は無表情にそう言った。控えていたメイド達は驚いていた。

私にはお母様が何を言いたいのかよくわかっていなかったがとりあえず返事はしておいた。

その時にお母様はとても安心したような顔をしたのだ。

初めて母を人間だと認識した日だった。実の母ではあったが私はお母様が苦手だった。

何があっても表情が変わらずいつも背筋が伸びた人間味のない人。いつも王妃様やお父様に頭を下げている。


弟の婚約者の王妃教育が2年前から始まった。まだ3歳の小さな女の子が毎日毎日泣きながら厳しく叱責されているのを見た。最近ではその子も表情が乏しくなっている気がする。

私はこの子が過去のお母様だと思った。お母様もこうして小さな頃から育てられたのだ。それなのに正妃の座を奪われた。私達を産むためだけに側室になった。

私の母の人生の一端を知り絶望した。

お母様はこんな小さな頃からお父様のために育てられたのにお父様は王妃様と幸せになってしまったの?

物語の中の支え合って生きていく王子様とお姫様の理想が崩れ去ってしまった。

同時に王妃様とお父様が恨めしくなった。

3人目の弟が生まれてからお父様はお母様と会わなくなってしまった。お母様も離宮から動かなくなってしまって最近はよく私を抱きしめる。

お母様は私を抱きしめるのがとても苦手だ。妹のチナリィも言っている。とても不慣れでいらっしゃると。きっと抱きしめたことも抱きしめられたこともないのだ。


私はお母様がいつも口にする言葉が嫌いだ。お父様と王妃様も嫌いだけどこっちの方が嫌い。ついでに小さな頃2人に懐いていた自分も嫌い。

でも、

「貴方達は幸せに笑って生きなさい。」

お母様のこの口癖がやっぱり一番嫌い。

私達が幸せになってもお母様は冷たい離宮で不幸になっていくのですもの。

お母様が今からでも幸せになってくれることを私は願うの。








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