9 / 11
8.
しおりを挟むそれは所謂デートというやつなのだろう。
私には永遠に縁のないものだ。
「とーのり?なぁにそれ楽しいの?」
「あぁ、楽しいよ。だからごめんね王妃様はパパが独り占めしてしまってるんだ。」
「ずるいわ!!サファも連れてって!!」
またサファが怒ったように頬を膨らませる。
陛下はサファを揶揄うように頭を撫でた。
「すまんな。2人っきりでデートだから。」
その言葉にサファは一瞬驚いてすぐに瞳をキラキラと輝かせた。王妃様は照れたように笑っている。
「デート!!デートするの!?サファともデートして!!」
「ははは、また今度な。行くぞジル。」
はしゃぐサファをそのままに陛下は王妃様の手を取って歩いて行ってしまった。
すごいすごいとサファははしゃいでその背を見送っている。
「行きましょう、サファ。アルとジオが待っているわ。」
「はい!お母様!!………あ、ねぇお母様。」
「なんですか?」
キラキラとした目のままでサファは私に尋ねる。
「お母様はパパとデートしたことあるの?」
繋いでいた手をつい強く握ってしまった。
「お母様?」
不思議そうにサファがこちらをみる。
サファはまだ私の立場や王妃様と陛下がどのように知り合ったのかを教えられていない。
サファの嫁ぎ先が決まっていないからだ。
他国に嫁ぐのならばその国に望まれるように育てなければならない。この国で嫁ぐのならば王家のものとして自我を持って育てなければならない。
自我を持てないのは王太子妃と側室だけなのだ。
王女達は自我を持たなければならない。
「……母は…デートしたことないですね」
「どうして?お母様とパパは恋仲だったのではないの?」
なんて残酷なことを聞くのだろう。後ろに控えている侍女が息を飲んだのが分かる。
「……大きくなったら教えてあげましょう。ほら弟達に会いに行きますよ。」
「えぇー!どのくらい大きくなったら教えてくれるの?」
繋いだ手を振りながら不満そうにサファが尋ねる。
「私の背を追い抜いたら教えてあげましょう。」
「そんなの何年かかるかわかんないよぉぉ!」
無邪気に笑うこの子から笑顔を奪いたくないと思う。私のように自我を否定され続けるのは良い結末を生み出さない。
あと1人、男児を産めば本当に私の存在に無くなってしまう。
その時私はどうやって生きていけば良いのだろう。
いっそ自死してしまおうか。
いや、王家の許可なく側室が命を断つべきではない。
子供はすぐに大きくなり私の元を離れるだろう。今だってほとんどは乳母が世話をしているのだ。
子供たちに私からできることなどない。
では私はどうすれば良いのだろう。
今日も私は存在価値を探しながら生きていく。
fin.
1
あなたにおすすめの小説
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる