うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第5章

5-6

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 サレナを部屋に誘って、なんともない雑談をした後、俺達は明日学校があることだし寝た。用心のため心持ち昨晩より布団を離して。

 サレナはセラスと同じく睡眠を必要としないそうで、キッチンでぱらぱらと新聞をめくっている。
 正直なところ、こころと二人っきりだとどうして良いのか、いやどうかしてはいかんのでありがたい。布団に入ると、意外にサレナに揉まれたのが効いていたらしく、俺はいつの間にか眠ってしまった。へたすると、どこかがむずむずして眠れなかったかもしれんからな、サレナさまさまだ・・・

 翌朝、目覚ましで目を覚ますと、こころがキッチンで朝飯を作っていた。サレナはもう居ない。早朝にヴァルミンの反応があったとかで、出て行ったらしい。それにしても数が多いな。以前セラスが倒してから昨日まで何もなかったというに・・・

 こころの朝飯を今朝はきちんと味わい、学校に行く支度をして育子さん家に行く。

 そこでは育子さんが、カルティにコーヒーを淹れていた。

「おはよ~」

 カルティは目の下にクマを作っている。せっかくの美少女さんが台無しだ。

「お前らも一緒に朝飯食えば良かったのに」

「ああ、ごめんね~。せっかく誘ってもらったんだけど、作業があと少しだったからね。とりあえず終わったから、もう寝るわ」

 俺はその言葉を聞いてベッドを見る。セラスはまだ寝たままだ。だけど、一緒に寝ていたラナが居ない。

「おはようございます、です」

 後ろから声がした。俺とこころが振り返ると、朝日を浴びて金色にも見える黄色いツインテールをふわりと揺らし、山吹色のゴスロリ風ドレスを着た美少女が居た。

「あ、ラナちゃん! 元気になったんだ、良かったね~」

 こころはまるで人形でも抱きしめるようにラナをぎゅっとやり、頭を撫でた。セラスの時と同じ反応だが、まあ何と言うか、一昨日自分を攫った相手にでも屈託がない。大したもんだ。ラナもなんだか嬉しそうにしている。

「ラナは修理が終わったからね~。ついでに船体の改良もしておいたから。結構疲れたわ~」

 カルティはコーヒーカップを置いて、首をコキコキとやる。それを見た育子さんは甲斐甲斐しく肩を揉み始めた。

「こころちゃん、その娘、気に入ったならもらってくれない?」

 肩を揉んでもらいながら、カルティはまるで手作りの人形でもプレゼントするみたいに言った。

「え?」

 びっくりした様子でこころはカルティを振り返る。

「ラナったらこころちゃんが気になるみたいで、マスターはこころちゃんでなくちゃ嫌だって言うの。あ、育子の登録は解除したから。良ければもらって?」

「いいんですか?」

「ええ、どうぞどうぞ。本人の希望だし」

「いいの? 迷惑かけちゃうよ?」

 こころはラナをじっと見ながら言った。ラナはこくこくと頷く。

「大丈夫だ、です。お姉ちゃんはラナが守ってやる、です」

「じゃあ、お願い・・・」

 こころはそう言って嬉しそうに、そしてなぜか一瞬悲しそうな顔をして、ラナを抱きしめた。

 ラナは嬉しそうに、人差指をこころの額へ向ける。指先が金色に輝き、こころに触れた。こころは一瞬びくっと震える。

「これでお姉ちゃんはラナのマスターだ、です」

 ラナは嬉しそうにそう宣言すると、じろっと俺を睨んだ。

「だからあんなヘタレのスケコマシは要らない、です!」

 ヘタレは認めざるをえないが、そんなことはしとらんわ! というかできんわ! しかも古い表現だな!

「いかにも変態っぽい顔をしていやがる、です。どうせ美少女や美女に囲まれてうはうはハーレムぅとか思ってるに違いない、です」

 ぐはっ! い、いや、確かにラッキーとは思っていないと言えば嘘になるが、ハーレムとまでは思っていないぞ!

「ヘタレだから直接的な行動はできないとしても、間違いなくいやらしい妄想はしているはずだ、です」

 ぐほっ! な、なぜ分かる・・・こころは苦笑いし、カルティは露骨にくすくすと笑っている。お前ら笑ってないで何とか言ってやれ! もうしまいには俺、泣くぞ?

 結局ラナは学校まで付いてきた。セラスが来た時みたいにたちまち人気者だ。

 しかもこいつ、比較的大人しかったセラスと違い、さかんにうろうろするし、色々と手や口を出しやがる。採点されて戻ってきた俺のテストを覗かれて「やっぱりヘタレは脳味噌までヘタレだ、です」などと言われた時はもう泣きそうになった・・・

 放課後は放課後で、こころはラナを連れて「荷物取りに言って来るね」とか言ってどっか行っちまうし。

 アパートに戻ったけどカルティ達も出かけているようで、セラスの様子を見ることも出来なかった。こころから部屋の鍵はもらってあるけど、女子の部屋に俺だけで居るのも気が引けるので、俺は2日ぶりに自分の部屋に戻った。

 育子さんが片づけてくれたおかげで、部屋はきれいになっていた。三人で住んでいた時と変わらないな、天井が無い以外は。

 俺は出来の悪いテストが詰まったカバンを放り投げ、居間の畳の上にごろりと横になった。そしてようやく気付いた。一人になっちまったことに。
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