うちの居候は最強戦艦!

morikawa

文字の大きさ
37 / 40
第6章

6-6

しおりを挟む
 俺とセラスはセラスの船体に乗り込み、俺は操縦席に座った。以前と同じように操縦席が浮き上がり、全方位モニターが周囲を映す。

 そして船体のエンジンが駆動を始める。そこまでは同じだ。だが、セラスと同期した俺にははっきりと感じられる。その駆動が、出力が、以前とは違うことに。

「システム、全て正常。コーイチ、発進命令を!」

 セラスもそれが分かっているのか、力強く微笑む。

「ああ。行け! セラス! 宇宙戦艦セラスチウム発進!」

 セラスの笑顔が勇気をくれる。俺もセラスに笑い返し、告げる。

「はい! セラスチウム、発進します!」

 とてつもない力を銀色の粒子に変えて周囲に振り撒きながら、セラスチウムは空間の狭間を突き破り、宇宙空間へと出た。その横にブラックサレナも姿を現す。

「ふふふ、いい感じね~」

「私の時とは桁違いですね・・・」

 立体ディスプレイにカルティ達の姿が映る。

「こころ達はどこだ?」

「ああ、今捕捉した。データを送る」

 俺の前にモニターが現れ、ラナンキュラスの現在位置と航跡が表示される。こころの奴、わざわざヴァルミン達を誘うように木星近くのヴァルミン達に近付いてから、太陽系から十光年以上も離れた場所にワープしてやがる。よく分らんがプロキオンとかいう恒星の近くか。誘われるままに10万のヴァルミン艦隊もこころ達を追っているようだ。

「俺達も行くぞ!」

「はい、コーイチ。超高速航行機関、起動します!」

 セラスチウムの通常エンジンが激しく駆動を開始する。

「ほう、だいぶマスターぶりがさまになってきたじゃないか?」

 ディスプレイの向こう側でサレナがにやりと笑った。おうよ、俺だってやる時はやってやるさ! なんてったって女神様が力をくれてるんだからな!

 セラスチウムとブラックサレナは、超高速航行を開始した。周囲は星々の煌めく宇宙から虹色の空間へと変化する。

「こころはどうするつもりなんだ?」

「えっとね~、こころちゃんがこの宇宙に来た時の壊れた宇宙船を、内緒でラナに運び込んだみたいなのよ。ラナは次元に干渉できるから、その船のシステムを解析できれば別の宇宙へ転移することも可能だと思うわ~」

 俺の問いにカルティが答える。そういえば一昨日どこかへ行ってたな。その時から準備してたのか。いや、この宇宙に来た時から、みんなに迷惑かけないつもりでいたんだな、こころの奴・・・

「あら、知ってて黙ってた私を怒らないの?」

「べつに。結果が変わったとは思えないしな。それに問題なのはこれからだ」

 そうだ。逃げ続けるしかない、こころの運命を俺達が変えてやる!

「あら。思ってたより大物なのね~。これは本当にお任せできちゃうかな?」

 カルティは嬉しそうに笑う。

「なんだよ、それ?」

「ん~? 私の存在意義ってとこかな~?」

「よけい分らん」

「そう~? じゃあ着くまでに告白してあげる~」

「な、なんだよ、告白って?!」

「ん~? 私はね、超天才だけど、孤児だったから、奨学金とか貰う為に勉強ばっかりしてたのよ~」

 人の話聞かねぇし。まあ、恐れてたような話じゃなさそうだから良いけど。

「だからね~、あんまりエンタメ的な本とかは読めなかったんだけど、それでも好きな本があったの~」

「ほう」

「それはね~、すごい剣を手に入れた英雄がお姫様と世界を救うお話なの~」

「へえ」

 変人かと思ってたけど、お姫様に憧れるなんてフツーの女子っぽい所もあるんだな。

「その物語のね、すごい剣を造る鍛冶職人に、私憧れたんだ~」

「フツーじゃねぇな?!」

「そう~? それでね、ヴァルミンが現れた時、私はいつか出会う英雄の為にすごい戦艦を造ろうと思ったの~。で、この娘達を生んだのよ~」

 その英雄ってのが俺だってのか? サレナもそんなこと言ってたけど、俺はそんなガラじゃないな。こころは絶対に守ってやりたいし、その為ならなんだってするけど、世界を救うなんてことは無理そうだ。

 だけど、カルティはにっこりと微笑んだ。その笑顔はとても可憐で愛らしかった。まずい、変人とは言え、こんな美少女に微笑まれると、どきっとする。

「目的の座標へ、出ます!」

 話の途中だったが、セラスがそう告げた。次の瞬間、虹色の空間から、元の星屑の中の宇宙へ、俺達は突入する。

「こころ!」

 俺は叫んだ。ラナンキュラスの黄色い船体が、ヴァルミン達から攻撃を受けているのがモニターに拡大されて映る。

 ヴァルミンの戦艦は多種多彩だ。いくつもの宇宙の戦艦を乗っ取ってきたのだろう。戦闘機のようなもの、海に浮かぶ船のようなもの、円盤型のようなものや葉巻型、円柱状のようなものまである。

 とんでもない数のそんなヴァルミン共は幾つもの列を作り、まるで無数の頭を持つ大蛇のように上下左右から、逃げるラナンキュラスへ波状攻撃を仕掛けている!

「セラス!」

「はい! 主砲、時空振動砲準備します!」

 時空干渉機関が駆動し、船体が鈍く震える。前には無かった手応えだ。俺は照準モニターを睨み、トリガーに手を添える。セラスチウムの船首から、巨大な五叉の槍が敵へ向けて突き出された。

「主砲、発射準備完了!」

「こころから離れろ! くらえ! 時空振動砲!」

 俺はトリガーを力いっぱい引く。この宇宙の構成そのものに干渉する、とてつもない力を秘めた白銀の波が、ヴァルミン艦隊へ向けて放たれた。

 眩しく輝く銀の波は敵艦隊を一閃し、数千の敵艦を一瞬で粒子に分解する。強制的に分解された分子のエネルギーは光と振動に変化し、すさまじい爆発を起こした。ヴァルミン達は隊列と解き、バラバラに分散して後退を始める。

「こころ!」

 俺は叫ぶようにこころを呼んだ。

「好一君?! セラスちゃん?!」

 通信が繋がって、こころとラナの姿が立体ディスプレイに現れる。

「来て・・・くれたの?」

 こころは涙ぐむ。

「あたりまえだ! 俺もこころのことが大好きなんだよ!」

 言った。言ってしまった。勢いに任せて。こころは涙をぽろぽろと流しながら、嬉しそうに微笑む。うぅ、気恥ずかしい・・・

「まあ、ここに来たことは褒めてやる、です。でもセラスはどうするつもりだこのクソ外道、です」

 むすっとした顔でラナが言う。ええい、ここまで言ってしまったら、もう最後まで言ってやらあ!

「セラスも大好きだよ! 二人とも大好きだ! 二人が一緒でなきゃ、俺は嫌だ!」

「うぎゃー! この最低強欲淫乱男め、です! 堂々と二股宣言しやがった、です! もう死ね、です!」

「死なねえよ! 俺はセラスと、どんな敵からでもこころを守ってやるんだ!」

「むぎゃー?! |*@#$%&!!!!」

 ラナが言葉にならない叫び声を上げた。それを見て、セラスはくすくすと笑い、こころも涙をこぼしながら泣き顔を大きく歪めて笑う。

「ごめんなさい、こころ」

「セラスちゃん?」

 微笑を押さえて、セラスはこころに話しかけた。

「私、こころがコーイチにキスした時、こころが居なければ良かったのにと思ってしまいました。私、汚いんです、醜いんです。だから恥ずかしくてこころに会わす顔がありませんでした」

「なんだ、そんなことだったの」

 こころは涙を拭きながら答える。

「だったら私も汚くて醜いよ。セラスちゃんみたいに、好一君の傍にずっと居たい。羨ましいって思ってたんだから」

「ぐぎょー?! 二人とも頭おかしい、です! こんなゴミクズ二股男に、です!」

 ラナが叫ぶ。悪かったな、ちくしょう。こころとセラスはくすくすと笑う。

「だってしょうがないよ、好きなんだもん」

「そうですね、好きなんですから」

 うぅ、二人ともありがとう・・・ごめん、そして嬉しいよ。だけど恥ずかしい・・・

「おい、痴話は後にしろ。ヴァルミン共が体勢を立て直したようだぞ?」

 サレナが呆れた顔で割って入る。ヴァルミン達は僅かな間に体勢を立て直していた。前方に巨大な半球形の包囲網を敷き、後方にも無数の戦列が回り込み俺達の退路を断とうと動いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...