うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第6章

6-8

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 俺達の周囲、広大な宇宙空間に無数の歪みが生じ、そこからさっきのと同じくらいのデカブツがどんどんと湧いて出てきている。い、いったいどんだけ居るんだよ!

 しかもデカブツはそれぞれが数え切れないほどの戦艦を引き連れていやがる! これは・・・何百万、何千万? いやもっと居るのか?

「か、確認できただけでも、大型戦艦一万! 敵戦列艦一億! さらに増大中です!」

 育子さんが震える声で伝えてくる。さっきのとは桁が幾つも違うぞ?!

「まるで全並行宇宙中のヴァルミンが集まった見たいね~」

 口調はいつもと同じだが、さすがにカルティの声も震えている。俺もトリガーを握っていた手が汗でびっしょりだ。全員が茫然と圧倒的な敵艦隊を見上げている。

「みんな、逃げて! 私が、私が居るから・・・私から離れて! 私を殺して!」

 こころが泣きながら叫ぶ。俺はディスプレイのこころを見た。その手には銃を握っていて、それをラナが必死で押さえている。あいつ、また・・・

「こころ! 勝手なことすんな! 言うな!」

 俺は怒鳴った。こころはびくんと我に帰る。

「俺とセラスが守ってやるっていっただろ? だから勝手なことすんな」

 俺は出来るだけ笑顔を浮かべて、こころに言った。

「それにこれだけの数だ。本当にすべてのヴァルミンが集まったのかもな。それなら好都合だ。一気に片付けてやる! お前の苦しみを終わらせてやるよ!」

 俺は自分を鼓舞するように、でかいことを叫ぶ。

 そうだ、俺は育子さんに銃で脅された時もびびっちまってたし、苦しむお前やセラスに何もしてやれなかった。だから、だからこそ、ここで引くわけにはいかない! それに、丸っきり勝算が無いわけじゃないぞ!

「カルティ! リミッターを外してくれ! いいな、セラス?」

「はい、コーイチが望むのなら」

 セラスはにこりと微笑む。

「いいの? 制限起動は上手く言ったけど、これから先は自信無いわよ~? あくまで理論上で作ったものなんだから~」

 カルティは苦しそうな顔をして答える。

「別にかまわねえよ。皆は下がってろ」

「それにね、うまく起動できたとしても、コントロールにはセラスとコウイチ君が今まで以上に同期しなくちゃいけないから、二人の思考が混ざってセラスに取り込まれちゃうわよ。それもかなりの確率で」

「そん時はそん時だ。俺はセラスを信じてる」

 俺はセラスの手を握った。そうだ。セラスは俺が望むのなら全宇宙最強の戦艦になってくれると言った。俺はそれを信じる!

 セラスも微笑みながら、俺の手を握り返してくる。カルティはやれやれといった感じで苦笑する。

「好一君!」

 こころが涙をぽろぽろとこぼしながら俺を見ている。

「待ってろよ、すぐに片付けてやる」

 俺はにやっと笑ってこころに言った。

「それじゃあ、リミッター外すわよ~! はい、外れました~!」

 ディスプレイを操作しながらカルティが言った。

「セラス、限界まで回せ!」

「はい!」

 がくんと船体と俺の頭が揺れた。まるで急上昇でもしているかのような感覚。それと共に視界がぼやけ、だんだんと白くなっていく。

 正直に言えばかなり怖い。だけどそんなもんに負けてられるか! 俺は絶対にこころを守ってやるんだ!

「ヴァルミン艦隊、動き始めました!」

 育子さんが叫ぶ。

「サレナ! ラナ! 少しの間もたせろ!」

「ああ、任せろ!」

「この大馬鹿虫め、です! お姉ちゃんを泣かせたら承知しないぞ、です! やつらを倒して無事帰って来てら、極多少は認めてやらないこともない、です!」

 俺は二人の返答を聞いてから、最後にこころに微笑んだ。

「行ってくる」

「待ってるから! 待ってるから!」

 こころは涙をぼろぼろと零しながら叫ぶ。

「時空共振エンジン、完全起動!」

 セラスのその声と共に、俺の視界は完全に真っ白になった。

 全てが白い空間に、見えるものは裸の自分と同じく裸のセラスの輪郭だけ。だけどその俺達も分解し、まるで一つの情報のように融けあい、形を失う。

《操縦者と中枢体の完全同期を完了》

 一つになった俺達は、一緒に呟く。

『どう? コーイチ君?』

 カルティの声だけが白い世界に響く。いや、響いたんじゃないな。情報として認識したって感じだ。本当に機械になったみたいな感覚だな。

《問題なし。システム完全に掌握中》

 情報となった俺達には、船体はもちろんのこと、膨大なエネルギーを生み出している時空共振エンジンのすべてが把握できている。それにしてもこいつはとんでもない力だな。想定を遥かに超えてなおも上昇し続けている。

『想像以上の力ね。まあ、それも当然か。私が作った時は一つの宇宙に干渉するだけの設定だったから。無限の並行宇宙があるのなら、このエンジンは掛け値なしに無限の力を生むことができるわ~』

《そこまでは不要だ》

 カルティはくすくすと笑う。

『コーイチ君、あなたは今、無限の力を手に入れた。コントロールさえできるのなら、全ての並行宇宙に干渉してなんでも出来てしまう、まるで絶対神のような力よ? あなたは何を望むの?』

《別に。俺はどんな奴からも好きな女子を守ってやれる力があれば、他なんかどうでも良いよ》

 カルティはまた笑う。

『無限の力を持った、こころちゃんの為だけのヒーローか。ま、それも良いでしょ。さ、じゃあ決着を付けて頂戴~? ヒーローさん~?』

 俺達は敵を確認する。敵艦隊のすべてが認識できる。数、大きさ、距離、すべてが数値として。

《時空干渉砲、発射準備》

 誰に聞かせるでもなく、俺達は確認するだけのように呟く。それにしても凄まじい力だな。こんなものフルで打ったら、この宇宙が吹き飛んじまいそうだ。

《時空干渉砲、発射》

 俺達は小指で弾くくらいのつもりで、ごく軽く、打った。

 全方位に白く輝く巨大な波、膨大なエネルギーを持つ振動が放出される。波はブラックサレナとラナンキュラスのみを避け、億を超える全ての敵を飲み込み、一瞬で掻き消した。

《敵艦隊、全滅を確認》

 俺達はそう呟いた。勝ったんだな。そう思った瞬間、どんどん意識が遠くなってきた。遠くなる意識の中で、セラスの声が聞こえる。

《コーイチ・・・コーイチと一つになっているのはとても幸せで気持ちいいです。だけど・・・》

 俺達は離れ、白い世界の中で輪郭を作った。セラスが俺を強く抱きしめる。

《だけど、やっぱり、こうして触れ合うのが一番幸せで気持ち良いです。溶け合って一つで居るより、一つになることを願ってなった方が》

 セラスの唇が、俺のに軽く触れる。それから俺の意識は途切れた。
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