うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第3章

3-3

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 昨日のセラスとサレナの戦いの後。俺達は予定通り、いつものスーパーでいつものように買い物をした。昨日までと違って、なぜか俺が中心に据えられているというか、両側から押さえつけられているということを除けば。

 いつものレジのおばちゃんから、
「あらー、セラスちゃん、いつの間にか大きくなったわねぇ」
 と言われた時はどうしようかと思ったが、
「子供は大きくなるのが早いわねぇ」
 で、済んだ。それで良いのか? おばちゃん結構いい加減だな?!

 でも、俺もあまり人のことをいい加減とは言えない。三人で買い物をしている最中、どうでも良いような話はいろいろしたけど、結局肝心な話は聞けずじまいだった。戦争が嫌になったみたいな話をしてたけど、俺では何かしてやれないのだろうか?

 それにこころもなんだか変なんだよな。あんな状況だったので良く覚えて無いけど、サレナと戦ってる時とか、その後も何か気になるようなことを言ってたし。自分だけ助かるとか最後とかいろいろ。

 とりあえず買い物を済ませ、俺達は家に戻った。セラスは洗濯物をしまったり、夕食の準備をしたりと家事に勤しんでいる。俺とこころはテスト勉強。とはいってもやっぱり集中できなかったのだが……

 セラスをちらりと見ると、鼻歌なんか歌いながら、ずいぶん楽しそうに家事をやっているように見える。昨日までは無表情のまま淡々とやっていたのにな。でも、まあ、なんだ。嬉しそうに家事をしているセラス……ちょっと大人びたせいか、なんだか可愛いというか、綺麗というか……とても良い感じだ……って、ま、まずい。中学生ぐらいって俺の守備範囲だったのか?!

 そう言えば歌なんてどこで覚えたのだろうと思って観察していると、こころがよくやってるのと同じ曲のようだった。

 あれ、と思いながらさらに見ていると、なんだかどこかで見たことのあるような動き……そうだ。こころに似てるんだ。

 今までは正確無比な機械のように作業をしているという感じだったけど、今はこころがやってるみたいに、ゆっくりと丁寧に、楽しそうにやっている。うぅむ、親の背を見て育つというやつなのだろうか。

 セラスの鼻歌につられたのか、こころもノートにペンで記しを付けながら、同じ鼻歌を歌い始めた。俺はその光景をぼんやりと眺めながら、良いなあ、と思った。

 正直に言えば、セラスが来て、それでこころと今まで以上に一緒に居るようになって、こころは俺のことどう思ってるのかとか、俺はこころのことをどう思ってるのかとか、セラスのことも可愛いなぁとか、恋愛経験の無い俺としては、なんというか恥ずかしいし、二人とも気になるなんて最低すぎるが、そんなことばっかり考えていた。結局どうしたら良いのか結論は出なかったけど。

 でも、今、これだけは分かったような気がする。俺は二人と一緒に居るのが好きだ。二人とも大事だ。それだけは確かだと思った。

 セラスが夕飯を作り終えたので、俺達は勉強を止めてありがたく頂くことにする。今日はポークジンジャーだった。いつもながら美味い。俺が美味いと褒めると、セラスは恥ずかしそうに、だけどとても嬉しそうに笑った。うおぉ、その表情、可愛い……

 ちらりと横を見ると、こころがむすっとした顔で肉を口に放り込んでいるので、俺はこほんと咳払いをして、何事も無かったかのように食うのに専念する。だけど、つい気になってセラスの方を向くと、俺とこころが食べているのを、嬉しそうに見ている。

 俺ははっと気が付いた。そういえば、大きくなってからいつもの無表情が出ていない。

 最近は無表情ながらも嬉しい時はすこしそんな表情を見せるようになってきていたが、今は別人なくらい、表情が出るようになってきている。

 これがカルティの言ってた成長とかいうやつなのだろうか。体が大きくなるだけじゃないんだな?

 それにしても、セラスの自称・宇宙戦艦はさっきの事件で嘘ではないことが分かったが、なんでカルティはわざわざセラスをこんな人間みたいに、それも成長させなくては力が発揮できないなんて、戦艦としては不安定な状態に造ったのだろう。
それにマスターになれとか言ってたよな? 別に今のままでもセラスは自分で考えて動いているのに、そんな必要があるのか?

「ところで、さ」

 夕飯が終わりかけたころ、こころが突然言った。いつになく真面目な顔で。

「いろいろ話をしなくちゃいけないかと思うんだけど」

 それを聞いて、うっ、と俺は黙りこんだ。確かにそのとおりなんだが、なんというか、あまり聞きたくはなかったのかもしれない、結局のところは。俺にとっては今が一番楽しいんだよ。どう見たって普通じゃないことに巻き込まれているのは分かるんだが……

 ……でもこれは逃げだよな。やっぱり聞くべきことは聞き、決めることは決めておかないといけないのだろう……セラスが大事なら。

 セラスも嬉しそうにしていた顔が、急に神妙というか、少し悲しそうな顔になって、ちょっとうつむいている。

「では、好一君、どうぞ」

 こころはさっと両手を俺に何か放るように振った。

「え、俺?」

「男の子でしょ? 当然だよ?」

 いや、そういうのは性差別では? と思わなくも無いが、セラスのことだし俺が言うべきだろう……だが、どうも聞くべきことが多いし、セラスの様子を見ると、聞きたくないような……そんな気がむくむくと起き上ってくる。 一瞬俺は言葉につまった。だが意を決して口を開く。

「セラス、お前が宇宙戦艦だってのは本当だったんだな」

「ええぇ?! まだその段階なの?」

 俺の必死の一言に、こころはそんな反応を示す。

「ええって、お前は信じてたのかよ?!」

「セラスちゃん最初からそうだって言ってたじゃない。それにほら、」

 こころはそう言うと、黙ったままだったセラスの手首を取り、親指を当てる。

「脈無いし」

「そ、そうなのか?」

 俺はついきょときょとと、セラスとこころを見てしまう。

「そうです。私は宇宙戦艦セラスチウム。この宇宙とは別の宇宙で建造された宇宙船です」

 セラスは静かに答えた。

「この宇宙? 別の宇宙?」

 な、なんだそれは。

「そうですね、私は学術的な計測器を搭載していないので断言はできないのですが……この世界の歴史や様々な事象は私の建造された世界と似通っていますが、少し違います。何かのきっかけで枝分かれした並行宇宙と仮定した方が、つじつまが合います」

「はあ・・・?」

 なんだかよく分からんがマンガとか小説で見たことがある、パラレルワールドとか、別の世界とかいうやつか?

「こころは分かるか?」

 話しを任されておいてなさけないが、俺はこころを見て尋ねる。

「うん……まあね……」

 こころはちょっと複雑な表情をしながら、そう答える。

「私はカルティが造った、対ヴァルミン用の決戦兵器……でした。……ですが、私は自分に搭載された武装をコントロールできない欠陥品です。敵艦隊との決戦の際、自分の主砲をコントロールできず、共に闘った姉妹達を全滅させてしまった上に、自分の暴走で作ってしまった時空の断層に巻き込まれて、この世界にやってきたのです……そしてコーイチと出会いました」

 セラスはそう話しを続けた。

「欠陥品って・・・そんなことないだろ」

「いいえ、私は欠陥品です。存在する意味を果たせなかったのですから」

 セラスは自嘲気味に微笑むと、俯いた。俺もそれ以上何を言うことも出来ず、だまりこむ。

 それにしても……断片的に聞いてたことは、全部本当だったんだな。というか別世界の宇宙戦艦とこうやって話をしてるってのも、信じられない、ありえないことだよなぁ。セラスを最初は人間だと思ってたせいで、こう、なんというか、宇宙戦艦だと認識するのも難しいし……まあ、良いや。なんだろうとセラスはセラスだ。それは変わらないだろう。

「ヴァルミンとかいうのについては、前少し聞いたけど、あれで全部なのか?」

「はい、そうです。正体不明の戦闘機械群……本体は極微小のナノマシン。機械にウイルスのように取り付いてコントロールを乗っ取り、なんらかの法則に基づいて人類に対して攻撃を行う……それしか分かっていません。どこからか指令を受けて行動しているのか、完全に自立して人を襲うようにプログラムされているのか、それすらも分かっていません」

「はあ……」

 ホントに正体不明だな。セラス達を造れるような科学の進んだ別世界でも分からんのか。俺にはお手上げだな、あいつらの正体とやらについては。

こころをちらりと見ると、暗い顔をして、下を向いている。……怖いのか? だけど、なんだろう。こころはヴァルミンの話しになるとちょっと変だよな。

「で、マスターってのは?」

 こころも気になるが、この機会に話しは全部しておかなくてはいけないと思い、俺はセラスへの質問を続ける。

「……マスターとは、私に指示や行動の許可を与え、場合によっては私を操作する存在……そうですね、パイロットに近いかもしれません」

 セラスはなぜか声を小さくして、俯き加減に答える。

「ん? お前、自分で動いてるじゃないか」
 俺が尋ねると、

「ええ。日常行動は行えますし、規定に基づいた戦闘行為は行えますが」

「ふーん? じゃあなんで必要なんだ?」

「……私に搭載された兵器……時空振動砲と時空共振機関の運用には、マスターが必要なのです……」

 セラスはそう答えると下を向いた。

 状況が完全に分かった訳じゃないけど、ヴァルミンと戦う為にはマスターってのがどうしても必要ってことか。カルティさんは俺になれって言ってたけど、どうすれば良いんだろう。

 これで俺がマスターになれば、セラスが来てから感じてた、とんでもないことに巻き込まれるってのが確定するな……

 だけどやらなきゃセラスが連れ戻されるかもしれんし……それにセラスはあんまり戦いたくないようだな、サレナとの会話からすると。でも、育子さんだっけ? 元もマスターってのは。そういった他の誰かがマスターになるとセラスのことをどう扱うか分らんし……

 俺は悩んだ。正直に言って俺がセラスや起ころうとしているとんでもないことに何ができるか、まったく自身が無かったからだ。ヒーローとか英雄とか、そういう存在なら迷うことなくこういうことに突っ込んでいくのだろうが、残念なことに俺はそんな存在じゃない。

 だけどだ。俺は下を向くセラスを見つめた。セラスは俺にとって大事な存在だ。それをほっぽり出すなんて、とても出来ない。だとすれば、どうなるか分らんけど、やるしかないだろう。

「セラス、お前が良ければ、俺、なるぞ。マスターに」

 俺なりに決心したとは言え、さすがにちょっと照れ臭いので、俺は頬を掻きながらちょっと横を向いてセラスに言った。ふっと視界に入ったこころは、喜んでいるような、それでいて困ったような、複雑な表情をしている。視線を戻すと、セラスはうつむいていた顔をゆっくりと上げた。ん? なんだろう、無表情と言うよりは、なんだかぼーっとしたような表情をしている。

「わた、私は……ヴァルミンと戦う為に造られた宇宙戦艦……た、た、た、戦うことが・・・私の造られた理由、存在意義……だ、だ、だ、けど、わ、私は……」

 セラスはぼーっとした顔のまま、壊れた機械みたいに、そんなことを呟いた。前にもあったな、こんなこと。ヴァルミンと戦った時か。どうもセラスは『戦う』ってことが引っ掛かってるらしい。やっぱり失敗ってのがトラウマになってるのかな。

「おい、セラス?」

 俺がセラスの頭に手を置いて、撫でながら声を掛けると、セラスははっと我に返った。そして、まるで泣くように顔を歪める。そして、突然立ち上がると、逃げるようにアパートの部屋から出て行ってしまった。
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