8 / 10
08. 戦い?の行方
しおりを挟む
伯爵家の中庭に いつもセッティングされていたテーブルセットは、いつの間にか撤去されていた。
いま、その場所には、木刀を手に向かい合って立つ、大人(推定年齢20歳)と子供(推定年齢9歳)の姿があった。
『師に手ほどきを受ける弟子の図』であれば、平和にも思えそうなところだが、残念ながら、そうではない。
主に、大人の方が。
「小僧・・・てめぇ生意気になりやがって・・・」
ぶつくさ悪態をつきながら、本気でガンを飛ばす家令に対し、
「おかげさまで、毎日鍛えていただいてますので・・・」
なんて、お坊ちゃんの方は既に達観しているかのように落ち着いていた。
(・・・どっちが大人なものやら・・・)
家令は何をこんな子供相手に八つ当たりしているのか。
しかも、仕える家のご嫡男に対して。
お坊ちゃんも慣れてる風なのが、もう何ともいただけない。
ロゼリエが途方に暮れかかっている間にも、件の大人と子供は、打ち合いを開始した。
圧倒的体格差にものを言わせて、力でねじ伏せようとする家令。
「うっわ、せっこっ!大人げなっ!」
思わず本音が飛び出るロゼリエに、家令が更にぶちキレる。
「ちっくしょう小僧ぉぉぉ!!すっかりロゼリエ様たらしこみやがってぇぇぇ!!」
「だから、あんた何言ってんの??」
「ロゼリエ様がショタコンだって、いつ把握しやがったぁぁぁ!!」
「いや違うし!!」
お坊ちゃんは、おそらくロゼリエと家令の会話は耳に入っていない。
体格も力も全く及ばない相手を前に、必死で攻撃を受け流している。
自ら攻撃を仕掛けるような余裕はなく、防戦一方ではあるが、辛うじて直撃を受けることなく、何とか食らいついていっている。
「え、お坊ちゃん、大人相手に凄くない?」
普通に関心してしまい、独り言のつもりで呟くと、
「もう生かしておけねえぞ小僧!すんなり死ねると思うな!!」
と、家令は勝手に煽られていて、もう何だか収集がつかなくなっている。
今にもふっとびそうなお坊ちゃんに、容赦なく木刀をふるう家令。
善戦していたお坊ちゃんも、だんだん息があがってくる。
木刀を受け流そうにも、受けた衝撃にぐっと体が沈み込むようになってきていて、うまく力を逃がせなくなってきている。
ハラハラしながら状況を見守っていたロゼリエだったが、ふと気が付いた。
家令はまだ息もあがっていないのに、攻撃は、最初より緩やかになってきている。
急所はもちろんのこと、後々ダメージが残りそうな部位なども、決して狙わない。
お坊ちゃんの構えているところに、小細工することなく真正面から打ち込んでいる。
言葉の暴力こそとんでもないが、家令なりに手加減はしているらしい。
(これも伯爵家流の教育の一環ってことなのかな・・・
それがわかってるから、お坊ちゃんも文句ひとつ言わず受け入れたって考えると
合点もいく。
もしそうだとしても、それはそれで、だいぶ気の毒ではあるけど・・・)
そろそろ体力も限界かな、という頃合いで、家令はお坊ちゃんの足元を一払いして転ばせると、顔の前に木刀を寸止めし、『勝負あり』を明示する。
お坊ちゃんも、静かに木刀を地面に置き、勝負(?)は決した。
「おら小僧。おとなしく負けを認めて、そこにひれ伏せ。」
子供相手に高圧的な態度を崩そうとしない、残念な大人の家令に、
「えぇ・・・何様・・・?」
と、ロゼリエが思わず呟くと、
家令はやっと、いつもの飄々とした雰囲気を取り戻し、
「俺様。」
と、にやりと笑った。
「ご指導ありがとうございました。今後も精いっぱい精進して参りますので、
どうかいつか、商会で使っていただきたく存じます。」
片膝をつき、礼の姿勢をとったお坊ちゃんが、丁寧に口上を述べる。
「ええっ!? お坊ちゃん、めちゃめちゃしっかりしてるじゃない!
本当に人見知りってわけでもなさそうだし、将来 期待できるよ!」
ロゼリエが関心していると、家令がまた憮然とした表情になる。
「ロゼリエ様・・・? やっぱりソイツぶっ殺しますよ・・・?」
「だからあんたねぇ・・・」
子供のように拗ねて、不穏な発言を平気でしてくる家令をなだめていると、
お坊ちゃんは、大人のように寛容な笑みで家令を見守りながら
突如、ぶっこんできたのだ。
「僕は、伯爵家と商会を全力で支えていくことをお約束しますから、
少しくらいはロゼリエ様にご助力いただくこともご容赦くださいね、
兄上。」
―――――と。
いま、その場所には、木刀を手に向かい合って立つ、大人(推定年齢20歳)と子供(推定年齢9歳)の姿があった。
『師に手ほどきを受ける弟子の図』であれば、平和にも思えそうなところだが、残念ながら、そうではない。
主に、大人の方が。
「小僧・・・てめぇ生意気になりやがって・・・」
ぶつくさ悪態をつきながら、本気でガンを飛ばす家令に対し、
「おかげさまで、毎日鍛えていただいてますので・・・」
なんて、お坊ちゃんの方は既に達観しているかのように落ち着いていた。
(・・・どっちが大人なものやら・・・)
家令は何をこんな子供相手に八つ当たりしているのか。
しかも、仕える家のご嫡男に対して。
お坊ちゃんも慣れてる風なのが、もう何ともいただけない。
ロゼリエが途方に暮れかかっている間にも、件の大人と子供は、打ち合いを開始した。
圧倒的体格差にものを言わせて、力でねじ伏せようとする家令。
「うっわ、せっこっ!大人げなっ!」
思わず本音が飛び出るロゼリエに、家令が更にぶちキレる。
「ちっくしょう小僧ぉぉぉ!!すっかりロゼリエ様たらしこみやがってぇぇぇ!!」
「だから、あんた何言ってんの??」
「ロゼリエ様がショタコンだって、いつ把握しやがったぁぁぁ!!」
「いや違うし!!」
お坊ちゃんは、おそらくロゼリエと家令の会話は耳に入っていない。
体格も力も全く及ばない相手を前に、必死で攻撃を受け流している。
自ら攻撃を仕掛けるような余裕はなく、防戦一方ではあるが、辛うじて直撃を受けることなく、何とか食らいついていっている。
「え、お坊ちゃん、大人相手に凄くない?」
普通に関心してしまい、独り言のつもりで呟くと、
「もう生かしておけねえぞ小僧!すんなり死ねると思うな!!」
と、家令は勝手に煽られていて、もう何だか収集がつかなくなっている。
今にもふっとびそうなお坊ちゃんに、容赦なく木刀をふるう家令。
善戦していたお坊ちゃんも、だんだん息があがってくる。
木刀を受け流そうにも、受けた衝撃にぐっと体が沈み込むようになってきていて、うまく力を逃がせなくなってきている。
ハラハラしながら状況を見守っていたロゼリエだったが、ふと気が付いた。
家令はまだ息もあがっていないのに、攻撃は、最初より緩やかになってきている。
急所はもちろんのこと、後々ダメージが残りそうな部位なども、決して狙わない。
お坊ちゃんの構えているところに、小細工することなく真正面から打ち込んでいる。
言葉の暴力こそとんでもないが、家令なりに手加減はしているらしい。
(これも伯爵家流の教育の一環ってことなのかな・・・
それがわかってるから、お坊ちゃんも文句ひとつ言わず受け入れたって考えると
合点もいく。
もしそうだとしても、それはそれで、だいぶ気の毒ではあるけど・・・)
そろそろ体力も限界かな、という頃合いで、家令はお坊ちゃんの足元を一払いして転ばせると、顔の前に木刀を寸止めし、『勝負あり』を明示する。
お坊ちゃんも、静かに木刀を地面に置き、勝負(?)は決した。
「おら小僧。おとなしく負けを認めて、そこにひれ伏せ。」
子供相手に高圧的な態度を崩そうとしない、残念な大人の家令に、
「えぇ・・・何様・・・?」
と、ロゼリエが思わず呟くと、
家令はやっと、いつもの飄々とした雰囲気を取り戻し、
「俺様。」
と、にやりと笑った。
「ご指導ありがとうございました。今後も精いっぱい精進して参りますので、
どうかいつか、商会で使っていただきたく存じます。」
片膝をつき、礼の姿勢をとったお坊ちゃんが、丁寧に口上を述べる。
「ええっ!? お坊ちゃん、めちゃめちゃしっかりしてるじゃない!
本当に人見知りってわけでもなさそうだし、将来 期待できるよ!」
ロゼリエが関心していると、家令がまた憮然とした表情になる。
「ロゼリエ様・・・? やっぱりソイツぶっ殺しますよ・・・?」
「だからあんたねぇ・・・」
子供のように拗ねて、不穏な発言を平気でしてくる家令をなだめていると、
お坊ちゃんは、大人のように寛容な笑みで家令を見守りながら
突如、ぶっこんできたのだ。
「僕は、伯爵家と商会を全力で支えていくことをお約束しますから、
少しくらいはロゼリエ様にご助力いただくこともご容赦くださいね、
兄上。」
―――――と。
73
あなたにおすすめの小説
5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!
158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・
2話完結を目指してます!
エリザは恋について考えていた
通木遼平
恋愛
「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。
※他のサイトにも掲載しています
第一王子様が選んだのは、妹ではなく私でした!
睡蓮
恋愛
姉妹であるクレアとミリア、しかしその仲は決していいと言えるものではなかった。妹のミリアはずる賢く、姉のクレアの事を悪者に仕立て上げて自分を可愛く見せる事に必死になっており、二人の両親もまたそんなミリアに味方をし、クレアの事を冷遇していた。そんなある日の事、二人のもとにエバー第一王子からの招待状が届けられる。これは自分に対する好意に違いないと確信したミリアは有頂天になり、それまで以上にクレアの事を攻撃し始める。…しかし、エバー第一王子がその心に決めていたのはミリアではなく、クレアなのだった…!
【完結】深く青く消えゆく
ここ
恋愛
ミッシェルは騎士を目指している。魔法が得意なため、魔法騎士が第一希望だ。日々父親に男らしくあれ、と鍛えられている。ミッシェルは真っ青な長い髪をしていて、顔立ちはかなり可愛らしい。背も高くない。そのことをからかわれることもある。そういうときは親友レオが助けてくれる。ミッシェルは親友の彼が大好きだ。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい
花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。
ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。
あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…?
ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの??
そして婚約破棄はどうなるの???
ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。
collage
優未
恋愛
好きになった人は、父の罪を暴くために近付いてきただけだった。
国家反逆罪を犯した父と共に処刑された主人公だが、気が付くと彼と出会う前に戻っていた。
1度目となるべく違う行動を取ろうと動き出す主人公の前に現れたのは…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる