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一章 出会いの舞

②遊郭で-2 side傑

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side傑


ガラガラガラ


「はぁ…」



黒髪が開けた窓から吹き抜ける風になびいてサラサラと音を立てる。
彼は遊都を支配しているといっても過言ではない大企業『ケイデンス』の社長である、弓削傑ゆげすぐる
離婚した母親の後を継ぎ、企業を更に発展させてきた手腕とすれ違う女性、いや、男性までもを魅了してしまう美貌により遊都で知らない者はいないほどの存在だった。
そんな完璧人間でさえも最近は仕事が積もりに積もって休む時間も取れていなかったので疲れが出たのかため息がつい溢れてしまった。



「さすがにお疲れでしょう。少しはお休み下さい。」



こちらは、傑の秘書である高松浩二たかまつこうじ。ビシッとスーツを着こなし、こちらもまた美しい顔をしていた。



「あぁ、だが、これは身体的なものというより精神的なものの方が大きいような気がする。」



遊都でNo. 1で居続けるということはそれ相応のプレッシャーが毎日彼にのしかかるわけで…。


「では、遊郭にでも行ってみてはどうでしょうか?私のオススメをお教えしましょう。」



おもむろに高松はメモ帳を取り出すと話し始めた。



「最近、私が足繁く通っている場所がありまして…普通の遊郭とは少し違うんです。女性ではなく男性が接待してくれるんです。」



少し恥ずかしそうに照れながら、しかし嬉しそうに話す自分の秘書を見て傑は不思議な感情を抱きながら質問を1つぶつけた。



「男?むさ苦しい男たちと金を払ってまで一体何をするっていうんだ??」



高松は純粋すぎる自分の主人を見て呆れたように言った。



「男といってもとっても可愛らしい少年たちですよ、相手してくれるのは…ほら。」



高松は遊郭の情報を傑に見せると、URL送っておきますね、と言いながら遊郭の説明を始めた。



「『玉の緒』という遊郭です。繁華街の一角にこじんまりとした感じであるのでお迷いにならないで下さいね。
私は、秋亜しゅうあくんが好みなんですが、ここは人気No. 1の瑠亜くんが有名ですよ。私も、一瞬姿を見ただけなのですが、もう絶対可愛いです…。」


普段は寡黙で淡々と作業をこなす高松だが、遊郭の話になると止まらないようだ。しかし、今の説明は傑が瑠亜に興味を持つのには十分であった。



「分かった、では、そこにしよう。残りの業務を頼めるか?」


「勿論です、感想聞かせてくださいね。」



傑はデスクの上を整頓すると、掛けてあった鞄を手に取り颯爽と夜の街へ繰り出して行った。

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