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第4章 「公式ラジオ」と「罰ゲーム」
第26話 教えてなぜなにGoogle先生!(前編)
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18時過ぎ。
内見を終えて帰宅した私は電気ケトルに水を満たすとスイッチを入れた。
お湯を沸かしている間によそ行きの服を脱ぐ。
たたんでそのままビニール袋へ。部屋着のTシャツとステテコに着替えると、スプリングベッドに上がって押し入れの襖を開けた。
押し入れの上の段は「川崎ばにら」の各種グッズの保管場所。
下の段は服や布団などの生活品を置いている。
下段の手前に並んだカラーボックス。
そこから布製の収納箱を引き出すと、脱いだ「よそ行きの服」を納めた。
「流石に今日は暑かったし、クリーニングに出した方がいいかな?」
じっとりと汗ばむ肌。
項に手の甲を当てれば汗が指の間に滲んだ。
食事の前に身体を拭こう。
そう思った矢先に電気ケトルが「カチッ!」と音を立てた。
コンビニで買った春雨スープにお湯を注ぐ。
春雨スープがふやけるのを待ちながら残ったお湯でタオルを湿らせた。
「今日の配信はどうしよう」
汗を拭いながらすっかり気分は平常モード。
私はこれからする配信の内容について考えだした。
今日はいろいろ疲れたし視聴者参加型でお茶を濁そう。
マリオカートか、スマブラか、テトリスか、世界のアソビ大全か。
どれが良いかなとヒントを求めてパソコンを立ち上げる。ブラウザで確認したのは本日一緒に都内を回った先輩――「青葉ずんだ」と「網走ゆき」のチャンネルだ。
目に入るのは圧倒的なマリカ配信。
「やっぱり、『8位以下で即終了』かなぁ? けど、苦手なんだよなぁ……」
私のリスナーは割と本気で倒しに来るんだよね。
姫プなんてさせてくれない。へたすると一試合目で終了してしまう。
ゆき先輩のように「泣きの1回」ができればいいのだが。
リスナー相手にもコミュ力の低さを露呈してしまう自分が憎い。
春雨スープの蓋を開ける。
湯気の向こうにPC画面をにらみながら割り箸で透明の麺を啜った。
「あるいは『8位以下で罰ゲーム』か。運動不足だし腹筋でもするかなぁ」
ただ、罰ゲーム系は配信終了時刻まで続くのが確約されているので、同接数があんまり出ないんだよな。コラボでやるならまだしも単独ではリスキーだ。
短時間でも良いから、「8以下で即終了」にトライするか。
数字をあきらめて、「罰ゲーム」で長時間配信するか。
春雨スープを飲みきったその時――Discordに着信が入った。
「誰からだろう?」
ポップアップしたのは笑顔のうさみみキャラ。
丸い耳をしたロリ系のVTuberのアバターだ。
すぐさま私は着信に出る。
「もしもし、うーちゃん?」
「ばにら、おつかれー! 今、暇ぁー?」
「うーん、暇っちゃ暇だけれど、忙しいって言えば忙しいかな」
「なにそれ? え、もしかして配信中?」
「うぅん、配信の準備。なにしようかなって迷ってた所」
かけてきたのは同期の「出雲うさぎ」だった。
DStars3期生の末っ子ポジション。ロリ担当のVTuberだ。
中身は現役女子大生。昼間は講義のため配信は深夜帯が多い。
ちなみにリアルもちみっこ。
地雷系ファッションを好むかまってちゃんな女の子だ。
いつもはこの時間は講義のはずだが、どうしたんだろう?
「ていうか、うーちゃん講義は?」
「教授が奥さんと喧嘩して休講になっちゃった! だから、かまちょかまちょ!」
「配信準備中だって言ったでしょ」
「えー! なんでー! ばにら、遊ぼうよぉー!」
こっちの都合なんてまるで気にせず構ってアピールをするうーちゃん。
こういう所が、本当に「末っ子だな」って思う。
あと「若いな」とも。
「そうだ! じゃあさ、これからコラボしようよ!」
「コラボ?」
「レトロゲーの公式案件にうさぎだけ出られなかったじゃん? その埋め合わせ!」
「……なるほど」
「ばにらと突発コラボ! ずんだ先輩ともしたんだしいいでしょ!」
「まぁ、ちょうど腹筋マリカをしようと思ってたからいいけれど……」
「腹筋マリカ! いいね、やろうやろう!」
うーちゃんと突発コラボか。
(……してもいいのかな?)
同期の3期生でコラボをすることは割とある。
けれども突発ということはなく、いつもスケジュールを調整してやってきた。
なにげにこういうのは同期でもはじめてかもしれない。
少し悩んでから私は、うーちゃんとの突発コラボをOKした。
「じゃあ、このあと19時からのスタートでいいかな?」
「おけまる! それじゃ、急いで準備するね!」
「なんかごめんね、急にこんなこと頼んじゃって」
「違うよばにら! 頼んだのはうさぎの方だから!」
「……あ、そっか」
「けど! 突発コラボ受けてくれて嬉しい! ばにらって、こういう突然の予定変更とかあんまり好きじゃなさそうだったから!」
「……そんなことないよ」
「あるある! そんなことあるから!」
ずんだ先輩とかかわるようになって、私もちょっと変わってきたのかな。
突発コラボに抵抗がなくなったのはもしかしなくても良いことだろう。
この調子でオフコラボや他の先輩ともコラボもできればいいな。
奇妙な充足感を覚えながらうーちゃんとの通話をいったん切る。
空の春雨スープをゴミ箱に捨てると、私は「腹筋マリカ」の準備をはじめた。
まずは、腹筋ができるスペースの確保だ――。
内見を終えて帰宅した私は電気ケトルに水を満たすとスイッチを入れた。
お湯を沸かしている間によそ行きの服を脱ぐ。
たたんでそのままビニール袋へ。部屋着のTシャツとステテコに着替えると、スプリングベッドに上がって押し入れの襖を開けた。
押し入れの上の段は「川崎ばにら」の各種グッズの保管場所。
下の段は服や布団などの生活品を置いている。
下段の手前に並んだカラーボックス。
そこから布製の収納箱を引き出すと、脱いだ「よそ行きの服」を納めた。
「流石に今日は暑かったし、クリーニングに出した方がいいかな?」
じっとりと汗ばむ肌。
項に手の甲を当てれば汗が指の間に滲んだ。
食事の前に身体を拭こう。
そう思った矢先に電気ケトルが「カチッ!」と音を立てた。
コンビニで買った春雨スープにお湯を注ぐ。
春雨スープがふやけるのを待ちながら残ったお湯でタオルを湿らせた。
「今日の配信はどうしよう」
汗を拭いながらすっかり気分は平常モード。
私はこれからする配信の内容について考えだした。
今日はいろいろ疲れたし視聴者参加型でお茶を濁そう。
マリオカートか、スマブラか、テトリスか、世界のアソビ大全か。
どれが良いかなとヒントを求めてパソコンを立ち上げる。ブラウザで確認したのは本日一緒に都内を回った先輩――「青葉ずんだ」と「網走ゆき」のチャンネルだ。
目に入るのは圧倒的なマリカ配信。
「やっぱり、『8位以下で即終了』かなぁ? けど、苦手なんだよなぁ……」
私のリスナーは割と本気で倒しに来るんだよね。
姫プなんてさせてくれない。へたすると一試合目で終了してしまう。
ゆき先輩のように「泣きの1回」ができればいいのだが。
リスナー相手にもコミュ力の低さを露呈してしまう自分が憎い。
春雨スープの蓋を開ける。
湯気の向こうにPC画面をにらみながら割り箸で透明の麺を啜った。
「あるいは『8位以下で罰ゲーム』か。運動不足だし腹筋でもするかなぁ」
ただ、罰ゲーム系は配信終了時刻まで続くのが確約されているので、同接数があんまり出ないんだよな。コラボでやるならまだしも単独ではリスキーだ。
短時間でも良いから、「8以下で即終了」にトライするか。
数字をあきらめて、「罰ゲーム」で長時間配信するか。
春雨スープを飲みきったその時――Discordに着信が入った。
「誰からだろう?」
ポップアップしたのは笑顔のうさみみキャラ。
丸い耳をしたロリ系のVTuberのアバターだ。
すぐさま私は着信に出る。
「もしもし、うーちゃん?」
「ばにら、おつかれー! 今、暇ぁー?」
「うーん、暇っちゃ暇だけれど、忙しいって言えば忙しいかな」
「なにそれ? え、もしかして配信中?」
「うぅん、配信の準備。なにしようかなって迷ってた所」
かけてきたのは同期の「出雲うさぎ」だった。
DStars3期生の末っ子ポジション。ロリ担当のVTuberだ。
中身は現役女子大生。昼間は講義のため配信は深夜帯が多い。
ちなみにリアルもちみっこ。
地雷系ファッションを好むかまってちゃんな女の子だ。
いつもはこの時間は講義のはずだが、どうしたんだろう?
「ていうか、うーちゃん講義は?」
「教授が奥さんと喧嘩して休講になっちゃった! だから、かまちょかまちょ!」
「配信準備中だって言ったでしょ」
「えー! なんでー! ばにら、遊ぼうよぉー!」
こっちの都合なんてまるで気にせず構ってアピールをするうーちゃん。
こういう所が、本当に「末っ子だな」って思う。
あと「若いな」とも。
「そうだ! じゃあさ、これからコラボしようよ!」
「コラボ?」
「レトロゲーの公式案件にうさぎだけ出られなかったじゃん? その埋め合わせ!」
「……なるほど」
「ばにらと突発コラボ! ずんだ先輩ともしたんだしいいでしょ!」
「まぁ、ちょうど腹筋マリカをしようと思ってたからいいけれど……」
「腹筋マリカ! いいね、やろうやろう!」
うーちゃんと突発コラボか。
(……してもいいのかな?)
同期の3期生でコラボをすることは割とある。
けれども突発ということはなく、いつもスケジュールを調整してやってきた。
なにげにこういうのは同期でもはじめてかもしれない。
少し悩んでから私は、うーちゃんとの突発コラボをOKした。
「じゃあ、このあと19時からのスタートでいいかな?」
「おけまる! それじゃ、急いで準備するね!」
「なんかごめんね、急にこんなこと頼んじゃって」
「違うよばにら! 頼んだのはうさぎの方だから!」
「……あ、そっか」
「けど! 突発コラボ受けてくれて嬉しい! ばにらって、こういう突然の予定変更とかあんまり好きじゃなさそうだったから!」
「……そんなことないよ」
「あるある! そんなことあるから!」
ずんだ先輩とかかわるようになって、私もちょっと変わってきたのかな。
突発コラボに抵抗がなくなったのはもしかしなくても良いことだろう。
この調子でオフコラボや他の先輩ともコラボもできればいいな。
奇妙な充足感を覚えながらうーちゃんとの通話をいったん切る。
空の春雨スープをゴミ箱に捨てると、私は「腹筋マリカ」の準備をはじめた。
まずは、腹筋ができるスペースの確保だ――。
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