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アナタ スキル ハ ソレガ デキル ノ デス 

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 あれから、カロネちゃんと一緒に神聖魔法を共に練習して、想像具現化スキルなしの自分の努力でできるようになった頃に、リュピアちゃんは機密情報管理のトップ エピク・ランティッドに未来有望な子供として引き取られたことを聞いた。寂しくもあったけど、自分みたいな子供が面倒見るよりは役職がしっかりしているから幸せに暮らせるだろうと思って身を引いた。それでも、近所の子供程度には仲良くなろうと、エピクに今度お願いに行こうと思う。そのためには、今回の体験を終わらせて休みがもらえないかを交渉するために今日は部屋をでて急いでセシルの元へと走った。

「笹野さん!笹野沙羅さん!起きてください、休憩とっくに終わってますよ」

「ッッ! う、あ、はい!申し訳ございません!すぐに行きます」

 確かに私は走っていた。あの城を汗水垂らして庭の手入れをする王の隣を通り抜け、春の気候から夏に差し掛かる湿気の空気を身体で切り裂いて、顔見知りになった貴族や兵士に挨拶を交わして私は、向かって居たはずだったのに、いつの間にか居たのは前職の休憩室。頭の状況が整理できないままに、休憩のタイムカード切ってお店のホールへと出た。

「いらっしゃいませ、4名様ですか? わかりましたこちらの方へご案内いたします!」

 夢だったのか? あの日々は全て休憩室の夢だったのか?親友を庇って死んだのも、全て、全て夢? 頭の中は大パニックなのに、無意識のうちにどうしても出てしまう嘘の笑顔。その嘘の笑顔を見て満足する魔物より魔物らしいお客の群れ。この身に染みた感情労働と、上司、同僚、客の板挟み特有の肌を包丁で逆さに撫で付けられるような歪な緊張感……全て知っている。

「おい! いつまで待たせるんだよ! チャーハン!!! 一分も待ったんだぞ!」

「大変お待たせして申し訳ございません。お客様の貴重なお時間を消費してしまって大変申し訳なく思います。すぐにだせるように誠心誠意やらせていただきますので、どうかお待ちくださいませ。ご指摘ありがとうございます」

 待てない客のクレーマー。若い男の店員以外が来ると文句に来る飲食店をホストと勘違いしたクレーマー。めまぐるしく襲ってくる人間モドキを満足させるために自然に身についたこの笑顔と言葉選び。それでも満足せずにお金目的で駄々をこねるやつも店員の容姿をケチ付けるのに身を費やすやつも……もう、もうッ……!

 もう、いやだ もう、いやだ。 もう、いやだ。 もう、いやだ。 もう、いやだ……。



     
      「みんな、皆消えちまえ!!!!!」




 お客様のオーダーを取る伝票をかなぐり捨てて、へたりこんで叫ぶと周りの景色が歪んで本当に消える。全てが全てが速やかに崩れて滲むように消える。右も左も下も上も表も裏も前後斜めもわからない暗闇だけが目の前にあるだけ。唯一あるのは……ステータスを唱えた時のように頭に浮かぶ文字。


 【想像と物質具現化スキル説明】

 自分の想像を具現化するスキル。物質具現化スキルの併用により等価交換や現象や事象にMPと力や想像力と意思があれば全てのことが成せるスキル。他のスキルとの親和性も高いので、このスキルで何でも。名 名 ナ ナンでももモ デキル デキル デキキキ。







「う、あ、夢? 本当にここは夢……? 夢?」

 目を覚ますと異世界のほうの私の自室、本当にここが現実なのか夢なのかわからない。確かに窓から差し込む光は明るく、窓を開ければ初夏に差し掛かるどこか湿気た暑さが頬を撫でる。確かに自室なのだけれど、本当に自分がここに居るのかがわからない。ここが夢?それともアレが夢?どっちがどっちだかわからなくて、人に会えばわかるだろうと、自室の扉に手を掛けるも力が入らなくて床にへたりこんでしまった。

 何時間……いや本当は数分や数十分かもしれない時間をへたり込んだまま動かなかった、せめて動けないならベットに移動しようとしても、扉の前から少し離れただけで動く気力がなくなってしまった。やがて、ノックの音が扉の前で聞こえた。返事をする元気もなく繰り返されるノックが聞こえる扉を前に見つめていると、確認の為かドアノブが握られゆっくりと開かれると、白銀の白髪と切り揃えられた前髪と、最近は少し長くなってセミロングくらいになったのも手助けしてどこか中性的な顔立ちのつり目気味の青の眼の少年……グラスが現れた。

「居るのだったら返事してください、いつまでも教団に貴方が現れないと私が駆り出されたのですから……床に座るのは、はした」

 グラスがいつも通りの口調と声で叱っている。その光景がとても嬉しくて、今ここが現実だって思いたくて……。思わずグラスのあきれたように細められた眼と相変わらずの鉄面皮を見ながら、ほろほろと涙を流してしまった。いつもの鉄面皮が何事だ!っと言わんばかりに顔を狼狽えさせ慌てて、グラスも床に膝をついて、頬に流れた涙を手で払ってくれた。

「グラス……」

「何かあったんですか? 私でよければ何でも聞きます。貴方の涙を精一杯受け止めますから……今は大丈夫です、泣いても大丈夫ですよ」

 せっかく払ってくれた涙がまた一つ二つと眼から零れる。泣いてもいいという言葉が自分の意思をすり抜けて心に訴えかけてくる。【いつも思ってた、ここは死後の夢なのでは?】薄々思っていた事が夢として出てきただけなのに、夢だからそんなことは起こらないと一蹴りしたいのに、頭のどこかであるかもしれないと追い掛けてくる。結局私は涙も、この不安も堪えきれずにグラスにしがみつく形で本当の4歳のように声に出して大泣きしてしまった。服に皺が付くほどにしがみついても、優しく頭を撫でてなにも言わずに泣かせてくれるグラスに……いつも迷惑を掛けて振り回しているグラスにしがみついてただ只管に泣いたのです。



 

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