転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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契約魔物と契約悪魔

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 準備はそこそこ、旅達には最適の晴天と僅かながらの世話になったエルフのお医者様や、近所のおじいちゃんまで手軽に挨拶を済ませる。本当に短すぎる間だったけれども、一緒の村に過ごした仲間だと村長さんがわざわざ別れの挨拶とお見送りをして、4人は……旅だった。名も知らない村から……。てか、また戻ってくるのに永遠の別れに近い別れ方だったなー。

「ナフェスの村です」

「へー……ってなんで村の名前全く知らないのわかったのさ」

「カリスティアちゃん……。ちょっと村長さんの挨拶の時、村の名前でフリーズしてたもの、わかるわ」

 接客業で鍛えられた、客に分からない質問をされたときの誤魔化しが、二人にバレていたようだ。えへへ………っと頬をかくも、ウィーンママにちゃんと覚えないとダメです!っと怒られる。ため息交じりにアダムスの国行きの馬車が出ている町に繋がる街道をヨタヨタと歩く。

 精霊国とあって、基本は神秘的になにかしらの発光した球が浮かぶ神秘的な森で、普通に魔物が現れることに目を瞑れば中々落ち着く所だ。赤い花、虹色の花、黄色い花、色んな花があるから、話し込んでいる三人にバレないように具現化ストックに収納する。

 花も自然も場合によっては他人も具現化スキルの触媒にできるのだから、必要な行動と自分に言い訳をして、花だけでなく、そこら辺にあったキノコや木の実、さらにはタダの葉っぱも数枚だけだけどストックに収納する。そうとうキョロキョロして危なっかしかったのだろう。途中にグラスが気がついて「転びますよ」っといつも通り手を繋いで引いてくれた。おかげで、もっと色々収穫できると、喜んだのだけれど、それを読んだグラスが「ほどほどにしてください」っと鋭い釘を打ってきた。適当に返事をして道中の魔物を……ウィーンママが倒しながら進んでゆく。

「そういえば、スケイス」

「なんやーあるじはん」

「契約魔物とかの詳細忙しくてまったく聞いてなかったけどなに」

 私以外の一同が、なんで知らないと言わんばかりに空気を重くしてきた。グラスはもう、遠い目をしながらカリスティアだから……っと言いたげに頭を抱え、スケイスはマジで知らなかったんかい、冗談やろ? とコツン!っと自分の空洞の頭を左手で叩いた。ウィーンママにいたっては、口をパクパクしながらワナワナと魔物をボコボコにしながら震えるしまつ。んなこと言われたって知らんもんはしらん!!!

「カリスティアちゃん知らなかったの? まさか、カリスティアちゃん言いくるめて何かするきだったの!?」

「ちゃいますちゃいますちゃいます!!! 疑われるや思って主はんの命令のもと情報と真実と経緯はなしたやろ!? わかったら、その物騒なハンマーおろしてはって、ふぉぉぉわぉぉぉぉ」


ーーーー

 高名かつ魔力の強い者が死ぬことにより、その持っていた魔力が死体から流れ出て、それを魔物が食らう、またはその流れ出た魔力から魔物が発生することがある、そのほとんどが普通の知性のない魔物であるが、希に人類と同等の知性のある魔物が産まれることがある。

 法王は、死ぬ間際に自分の魂と意識を魔力に溶け込ませ、六年の年月を持って自身の死体に少しずつ入り込みあたりの魔属性と融和する形で魔物化する異例の魔物ではある。(前例はあるので、全くの異例ではない)

 その知性のある魔物は、絶大な力と朽ちない身体を持つ代わりに、ある代償が存在する。その代償は徐々に人間性が低下して、やがては本当の魔物なり様々な厄災となるリスクを負うというもの。

 回避する方法は主に二つ。

・自身の人間性を引き留めてくれる契約者を作ること

・理性が無くなる前に自死する

 そうして、契約にはそれぞれリスクがある。

 契約を乞う魔物側は、もしもの時の為に主に自身を命令して縛れる、いわば奴隷に近い状態にして服従する。もしも自分が理性を一時的にでも失った場合は、命令で自死させるか止めるかの最終決定権を委ねるために。

 契約者は、手綱を握ると共に最終決定権を持つ契約者の負う代償は、その契約を乞う魔物提示する願いを了承して契約をし、その魔物が死ぬまでにその願いを叶えなければ自分も、その魔物と共に死ぬと言うこと。


「えーっという、ことなんやけどな? わて、さんっっっざん! 契約前の主はんに言うやないですかい! 前々聞いとらへんからにほんまも~」

「ゴメン、精神が限界過ぎて前々聞いてないし、なんならぱっくり洞窟の記憶が……ない。んで、その願いって?」

「わいのお嫁さんに……って、冗談やからグラスはん。普通に洞窟出してくれで終わりや終わり」

「普通に考えて自分の身を売るんだから、もっと欲のあること言えば良いのに」

「カリスティアちゃん……グラス君……」

 突然にウィーンママに呼ばれたから顔を見ると、セクシーな黄緑色の目をウルウルと潤ませて、頬を膨らませてる。あぁ、これはママなんか拗ねてるなーっと思って、どうしたのかと聞くと、しばいていた魔物を華麗に砲丸投げで遥か遠くに飛ばしてから、両手を広げて私とグラスを包み込むように抱きついてくる。グラスは困った母だと、ウィーンママの頭を撫でてる。ちょっと嫌だったから、グラスに向けてわかりやすくムムムっと顔をしかめると、ウィーンママではなくて私を撫でてくれて、少し満足。

「ウィーン様? ちょっとお力が」

 満足していると、抱きついてくるウィーンママの力が段々と強くなってくる。不味いと顔を引きつらせたころにウィーンママが、力を込めるとともに下げていた頭をバッとあげた。

「私も、カリスティアちゃんとグラス君と悪魔契約する!!!」

 ウィーンママがそう叫んだ刹那、頬に鋭い痛みが走る。ビィン!っという音が後ろでなる。恐る恐る見ると、そこには矢が刺さっていた。放たれた方向を見ると、ローブで顔を隠した人物が木の上からこちらに弓矢を撃ったみたいだ。ローブから僅かにエルフ由来の尖った耳が破れた部分からみえる。

 私も、グラスも、瞬時に周りの気配を察知しようとすると、凄く優しい手つきでウィーンママが頭を撫でて離れる。ゆらり、そろり、と魔力をくゆらせて。引きつった笑いをあげ始める。


「28人、ただの盗賊じゃぁなさそうだわぁ……。こいつら全員殺したら、ママと契約しよ? カリスティアちゃんにはお願いしたいこともあるし」

 ヤンデレヒロインさながらの目に光のない笑みで、悪魔がニタリと笑った。





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