転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

文字の大きさ
75 / 175

どの笑顔?

しおりを挟む
 切り立った崖、鬱蒼とした森を背に桃色の髪とサイドテールの少女と、青年のわりにはくたびれた中年のようなオーラを放つ青色の髪とオールバックの男が、雇われの殺し屋に襲われている4人を見て、ケラケラと笑う。桃色の少女が笑う度に、シャラシャラと自分の首と手を繋ぐ手錠の鎖が音を立てる。

「やっぱり、早々に私たちが殺せばいじゃーん。臆病者!」

「しょうがないだろ。万が一で負けたら俺らの国が終わる。国の命運がかかってんだから、慎重に分析して……確実にあいつらの首を落とす」

 一人を覗いて大物揃いの強豪だがなと、自傷君に笑ってみるものの横の馬鹿ピンクは戦いたいのに!!! とガキらしく地団駄を踏む。何度かたしなめてみるもののコイツが、俺の言うことなんて聞くわけがなく。

「あー腹立った!!! 空飛べ………………オッサン!!!!」




「誰がおっさ、ああああああああああああああああ!!! お前、おぼえてろおおおおおお」

 腹立ったの一言で切り立った崖に突き落とされた。風と水魔法の混合でうまく中に浮かび上がり怒りのままに浮かび上がる。自身の青筋と血管がブチブチと切れる音が響く、やらかした元凶のデキュナスは浮かび上がったと同時に腹を抱えて、「マジで空とんだ。オッサンウケる」と声たかだかに笑い始めた。

「あいつらよりお前を先に殺すぞ馬鹿が」


ーーー

 血肉が踊るというのはこういうことを言うのだろうか。

「あはははははははははははははははははははははははははははは」

「……。ここはウィーンママに任せて行こうか、ママ先に行ってるね」

 いろんな者を血祭りに上げているウィーンママに断ってから、グラスの左腕を繋いで先へ進む。後に続いてスケイスがカコカコと付いてくる。グラスも突然始まった血祭りに流石に動揺したのか、返事の言葉はない。怖くはないかと、グラスの顔を見るために後ろを見ると、グラスは後ろを向いていて、やれやれと首を振ってから、こちらを見てにっこりと笑った。どうやら血祭りは平気みたい。

「主はん、以外と冷静やな」

 突然始まった真っ青血祭りにいち早く行動したことが、冷静と見られたらしい。冷静? どこが? ただたんに、あの反精霊の洞窟の惨状を彷彿とさせるような光景は見たくないがためである。そんな私の遠い目を察したスケイスが、バツの悪そうに後ろを掻いてから、ポンポンと頭を軽く撫でてくれた。

「一度、目的の確認でもしましょうか」

「はーい」

 気晴らしと気を引き締める為に今回の旅の目的をもう一度グラスが話してくれることとなった。手を繋ぎながら道を塞がない程度に横に並んで、スケイスは一歩引いて従者のようにしている。法王って言う割には大分……。まぁ、節制とか慈悲とか必要と聞いたから、他人に奉仕するってのは法王の場合には慣れたものなのか? 疑問に思うも、流石にここまで踏み込めるほどには、交友は浅いので聞かないでおく。今はグラスの確認を聞かないと。

 

 ラブマルージュ様の内密の依頼により、私達は知識の国アダムスに決死の覚悟で向かいます。長年鎖国を経て冒険者や商人のみ国へと入ることが出来ていましたが……そのアダムスの国に入ったものは今まで誰一人国から戻っていません。

 死んだ、利用された、アダムスの国が良すぎて帰ってこない、いろんな憶測が飛び交いましたが、結局どれも確証は得られずに居ます。まぁ、帰ってくる者が誰一人居ないのだからあたりまえですが、そんな中で、ディザ様……いえ、ディザがアダムスの国を危険視のちに調査と、数人精鋭を送りました。

 その精鋭の中に、カロフィーネ様に忠誠を誓い、ラブマルージュ様の手塩に育てた騎士一人を紛れ込ませたのです。その騎士……キースハルト様からの緊急要請がラブマルージュ様のところに届きました。内容は【アダムスの国から忘却の治療ができる科学者を発見したが脱出が困難、緊急要請を求む】です。

 現在は国から直接動くことはできないが、生半可な冒険者に依頼しても逆にこの事態を深刻化させるだけ、ならば、あえてカリスティア……や、私を動かすことで撹乱させる目的でしょう。

「流石に、虚偽の報告だけじゃ、もうやってけなくなったみたいだから丁度よかったわね」

「ぴゃ!」

「ウィーン様、お疲れ様です」

 グラスの話しが一段落してすぐに、後ろからひょっこりと血の香りを纏ったウィーンママが現れる。服には血が全く付いてはないのだけど、血の香りがぷんぷん漂ってくるので、殺ることはやったのだろう。それよりも虚偽の報告?

「はい、カロフィーネ様とリュピア様など、私達の捜索の結果をすり替えたりして、守ってくださったのですけど……そろそろ限界でした」

「六年ももったんやから、上出来やんけ。あと、この先の村よるやろ? スルーするで、あんまいい予知見えてこんかった」

 さっくりと胸に刺さる心の刃、本当にこんなに皆に尽力してもらっているのに、私の剣術は未だに苦手と言うグラスに素手で受け止められるし、強度じゃウィーンママには勝てないし、能力も予知能力のが使いどころあるし……。いや、たしかに具現化って凄いけど、消費が凄くて……うん。

 嬉しい反面自分の無能さが浮き出てくる。できることなら、具現化を駆使して皆の野宿や生活を整えることくらいだ。幸い、今までの職歴の経験で、食べ物関係や、どうすれば人間はギリギリの食料で3日間無理して動けるかも、分かるのだから。

「野宿する? それなら具現化で色々整えられるし」

「そうしましょ、それに宿よりも野宿のほうが契約の内容話しやすいわ」

「そ、そうですか。契約はともかくカリスティアの提案通りに野宿の方向で行きましょう」

 野宿の為のテントやライター類を具現化するか、このメンバーだから、もう惜しみなく使ってしまおう。正直弱くて役に立たないお荷物なりの貢献だ。皆のお荷物にだけは極力なりたくない。頑張らないと、まだ、私は働ける。頑張れる。

「カリスティア?」

「うん? そうだ、料理とか具現化で道具作れるし色々言ってね」

 グラスが心配そうな顔をするものだから、思わず大丈夫という意味を込めて笑って返す。うまく笑えたから大丈夫だというのは気づいてくれるだろう。弱いのは嘆いても仕方ないから、今回の旅を利用して強くなればいい。そう結論付けて、笑う。笑ってるはずなのに、グラスが腑に落ちないような顔で引いてくれた。うまく笑えたはずなのにおかしいな。

「じゃ、行きましょうか」

 おかしくても進まねば、笑顔一つ違うくらいでは事態は動かない。動かせない。ウィーンママの行きましょうかの声に合わせて、笑顔を消す。そうだ、最初から私無表情なのだから、自分でもどの笑顔をグラスに向けて居るのかわからない。歪で他人を心配させるくらいならば……。

「うん、具現化で色々なもの作れるから、草原の中にベットでも作る?」

「目立ちすぎや! 布でええ!」

 わざとグラスに顔を見られない位置に移動をする。繋いだ手は放してくれないから多少歩きにくい形になってしまったが。

(頑張ろう、今は……身の丈に合わない才能に振り回される凡人の私にはそれしかできない)
 





 




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...