転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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負け恥の行動

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 身体ががひしゃげ、心も記憶もひしゃげて、俺は死ぬはずだった。結局『狂犬』相手に手も足もでないままに国の役目も果たせずに、そこら辺で潰れた死体になっていく様を他人事のように見て居た。ゆっくりと舌で唇の周りをなめ回しながら、見せつけるように草を踏みつけてこちらに来る。

【「空飛べ……オッサン!!!」】

 デキュナスの声が顔が走馬灯のように思い起こされる。家族の記憶を犠牲にした必死の抵抗も数分持たずに散った俺に残ったのは……。口がうるさくて乱暴で、粗暴のくせして繊細な馬鹿娘らしい。終わりを悟り観念して目を瞑ると、さらに鮮明にデキュナスに関する記憶が呼び起こされる。

 最初出会ったあいつは、桃色の髪以外はた普通の村娘みたいだった。そのときは話し方もちゃんと娘らしい話し方で暴言なんてものは特になく、面倒見係として俺とペア組まされた時には俺に怯えていたくらいに普通の娘だった。一方の俺は……記憶を消しちまったから覚えてないが、誰かを恨みながら軍に入れられたことだけは覚えている。その何かが大切な家族というものに危害を加えていたような気がする。覚えてねぇ。

 そんなことは置いといて、デキュナスは怖がっていた俺を避けるように日々過ごして怯えていたが、ある日の任務でデキュナスが教官に必要以上に体罰を受けているところを、無理矢理助けていたら……今のような馬鹿娘に成長していた。
 一昔のように俺の一動作ごとにビクビクと怯えなくなり、逆に俺と同じような口調で言い合いをするようになり、いつの間にか自分のことを虐めていた教官を叩き潰してのし上がり、乗り気じゃない俺を連れて国の幹部へとのし上がった……といっても捨て駒幹部だけどな。

「おい、おっさん!」

「何度言わせればわかるんだ馬鹿が、俺は……あー」

「まさか、忘れたとか言うんじゃないよな?」

「呼ばれなさ過ぎて忘れた。俺名前なんだったか」

「あたしじゃなくて、やっぱオッサンが馬鹿じゃん!!」

 いつも通りの二人に支給された寮の部屋で言い合いしている中での会話だ。そういえば……俺の名前なんだっけかな……たしかついさっきまでは覚えていたはずなのに思い出せない。

 目の裏に浮かぶ景色が段々と滲んでくる。目を瞑っていつまで経ったのだろうか、もう首を潰された後のなのかが分からなくなり、目を開けると……悪魔とガイコツが狂犬相手に戦っていた。ターゲットとその仲間達だ……。俺は無様に後方に下がっているガイコツの元へ這い寄ると、乱雑にポーションを掛けられて、いくつか投げつけられた。俺はお前らを殺そうとしていたのに、トドメは刺さずにポーションを惜しみなく投げつけてくるこいつらに……一瞬だが恐怖を感じた。理解が出来なかった……俺が同じ状況なら、殺すのにだ。行動の意味が分からなかった。


 俺は急激に回復する身体を引きづって、夜の更けて夜の町さえも閑散とした中の住宅街を回復した身体に鞭を打って走り出す。いくつか酔っ払いと身体がぶつかるがそれを無視してただただ……ターゲットを求めて走り出す。都合の良いことは承知だ、俺自身も期待しちゃいないけれど。

「待ってろ、デキュナス……すまねぇ……」

 家族すらも零れ落としてしまった自分にはコイツしかいなかった。せっかくポーションで治った足がまた熱を帯びて軋み、オールバックで整えた髪は無残に草と土が付いてボサボサに、ふらつく中で植木や木箱などに当たって軽い怪我が体中にまた新しく出来てゆく。

 やがて目的地の宿屋に着くころには、治ったはずの身体がまたボロボロになっていた。それでも気配を消すことはズタズタの状態でもできる。正面から宿屋の人間に気づかれずにターゲットとの居る部屋に向かう、その頃にはもう気配なんて愚か、足音も聞こえるし痛みで零れる息使いも五月蠅い。もう、自分が扉の向こうにいることはバレてるだろう。それを承知でターゲットの部屋の扉のノブに手を掛けてひねった。







「俺は、アダムスの国の命令で数多の殺し屋をターゲットのお前に向けて解き放ち、その後に仲間と一緒に厄災の魔物に乗じてお前を殺すつもりだった。けど、けど、お願いだこんなこと恥なのは分かっている。許されないのも分かっている……だけど、頼む。俺の仲間を助けてくれ、命だけはッッ!! 俺の命ならば持って行ってくれて構わない、労働もなにもかもする奴隷にでも!!!」

 グラスに運ばれたままに寝ている最中に、アダムスの国の人がボロボロの状態で私の部屋に入ってきてすぐに何度目かも分からない懺悔と謝罪と……願いを言ってくる。騒ぎを聞きつけて私の部屋に飛んできたグラスは、殺意を纏った射殺すような目をしてアダムスの人見て居る。私の返答次第では……即座に魔力でその人を殺すだろうことが分かるほどに、はち切れそうな殺意を纏わせていた。

 そんなグラスとアダムスの人を見て、私は小さくため息をついた。その小さいため息は静かで狭い部屋に酷く響いて、グラスは杖を構えだし、アダムスの人は身体を縮こまらせる。「グラスまって」私のため息を合図に殺そうとするグラスを言葉で静止をして、新しく作っておいて空のポーチに手を突っ込んでポーションを取り出して、彼に飲むように言う。彼は戸惑いガチに受け取って飲んでくれた。見る見るうちに傷が治るので、我ながら凄いなと場違いに感心しそうになるのをグッと堪える。

「ターゲッ」

「喋るな」

「ちょっグラス!!!」

 身体を治したところで改めて話しを聞こうとすると。グラスがアダムスの人の言葉を遮りその人の首元を掴みあげて壁へと投げ捨てた。思わぬグラスの暴挙に慌てて私が止めようと声を掛けるも反応はない。反応はないままに治した男の首もとを掴んで、また壁へと投げ捨てた。男は呻くけど、当然の行動だと思って居るのか諦めたような目でグラスを見上げている。私が居る位置ではグラスの背中しか見えないが……背中だけで分かる怒気が、止めようとする私の足を立ち止まらせる。

「仲間も情けを掛けてくれたのだから、その中心のカリスティアという人物を懐柔すれば、お仲間も助けてくれるはず……っとでも思いましたか? 笑わせないで頂きたい。 ええ、貴方の願望通りにカリスティアならば助けるという選択肢をとります。……。貴様らのような人間は……いつも……いつもッ!!!」

 男の身体が徐々に凍ってゆく、諦めた目をした男が私の目の前で凍ってゆく。グラスが殺すように睨むだけで本当に人が死んでしまうと錯覚させるように。手を使わないで男を凍らせている。恨みの乗ったグラスの声は静かに震えていた。やっと動き出した足が、手が、グラスの元へと動くときには……。

「……殺します」

 氷よりも冷たく生命を絶つような声音が……部屋に響いた。
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