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何を思ったのだろう、いや逆に何も思わなかったのだろう……。殺しますに含まれたのは殺意以外の感情はなく、最初の多弁に表されていた怒りもない。ただ……初めてグラスを恐怖という意味で怖いと思うのはこれが初めてだった。
いつもいつも、というのは私が寝ている間や気づかない間にも同じような人間が現れて……グラスはその手を血に染めてきたのだろうか? 背筋をなで下ろす恐怖と、喉から這い出る罪悪感が身を支配して、止めるために手を伸ばす、足を伸ばす、間に合わない、ならばどうする?
「ストック」
咄嗟で私は具現化ストックのことが頭によぎり、目の前の人間を殺そうとするグラスをストックに仕舞った……、仕舞えたのだ。全身を一気に凍らせるつもりだったのか、グラスの冷たい魔力に覆われてガタガタ身体を震わせる男と……出来てしまったことえの恐怖で震える私、それぞれの恐怖に震えた者がそれぞれの息づかいで静寂を裂いていた。
私は……初めて生きた人間を仕舞った。
カタカタ震えながらストックの中の魔力を探るとちゃんとグラスが生きてそこに仕舞われていたことがわかり、安堵してはいけないのだけれど安堵する。生きたまま保存ができることは……魔物でわかっていたから、死ぬことはない。ある意味このストックの中が一番安全だ。そう確信して震える男に話しを聞くことにした。
聞いて分かったのはスケイスとママが今も戦っていることと、狂犬というものに殺されそうになったこと……。アダムスの人間で私を殺そうとしたことも、口調が多少粗暴ながらもちゃんと説明してくれた上に……あるものを狂犬という相手から咄嗟にくすねて此処に持って来てくれたらしい……。【魔物化の解除】という魔法だか、スキルが入った宝石を……。あのままグラスに殺させていたら、この宝石も道連れに死ぬ所だったそうだ……危ない。
「うん、わかった。助けるよその子」
「本当……なのか? 本当にいいのか?」
「本当だけれど絶対はないから……そのときはちゃんと覚悟はして欲しい。それができないなら白紙」
「あぁ……。それでいい」
床に座らせたままの話しで悪いがとりあえずそれでお互い決まったところで、私はとなりの三人が泊まっている部屋に移動して、アダムスの男はわるいけど私の泊まってた部屋に居て貰うこととなった。今から宿屋の女将さんに頼んでも部屋はたしか空いていないだろうし、そもそも……大分遅くだから流石に宿の女将さんも起きてないと思うから。
「ストック……。グラスッ……」
三人の借りている部屋に移動してから、グラスをストックからだすと……。つり目気味の目は爛々と切れ味を持ち目は動向が開いて、歪むように口元は笑みのようなものを浮かべていた。自身の知らないグラスがそこに居たものだから明らかに、怯えたような目を彼に送ってしまった。けれど……グラスはそのまま歪な顔で三人部屋を様子を見るように顔を振ると「今すぐアレを部屋からどかしますので待っていてください」っとせっかく止めたのにまた殺しに行きそうになるので、震えそうになる身体を押さえてグラスの腕を掴んだ。
「いィ……つぅ……」
「カリスティア!」
グラスの腕を掴んだ瞬間に私の身体が凍る。肌は冷たすぎて逆に焼けるように熱く、自身の皮膚の皮からジンジンと内側の肉を刺すように凍らせてくる初めての感覚で、グラスの腕を掴んだままその場に体勢を崩して、傍のテーブルに身体と頭をぶつけた。
グラスは私が凍った瞬間に(しまった!)と言わんばかりに殺気を霧散させてすぐに纏っていた魔力を散らせた。慌てて火魔法を使いゆっくりと自身の凍らした私の氷を溶かそうとする。私よりも痛々しく、私よりも重いなにかに沈むように顔をゆがめて「申し訳ありません」っと空虚に謝罪をするのみ、結局私の腕が解凍されるまでお互いに言葉はない。
私も初めてのことで、微妙に話しにくいけれど話さなければならない。今回も時間がないのだから、そう思って私はグラスをイスに座らせて私もイスに座る。色々此処になんでグラスが居るのかとかの説明もしなければいけないのだけれど、それは後でも良いだろう。今は……殺させないように話さねばならない。
魔法で明るくした室内に浮世離れして写るグラスは……。目を合せにくそうに机の下を見ている、私を凍らしたことに相当堪えたのか、殺意に満ちた顔が一転して一瞬で覇気のない憂いに満ちていた。酒も入っていたし理性と感情の制御が上手くいかなかったのだろうと私の中で判断して笑みを浮かべる。その笑みを見てくれるはずの目は下向いていて意味はないけれど。
「助けることにした」
助けることにしたから、殺すな。駆け引きとか上手い誘導とかはできないから結局は主語のない結論を先に言う。だからだろうか、下向いていたグラスの顔は微笑む私の顔を見て、目をこれでもかと開くと「何を言われたのですか?」っと震えた声で言ってきた。どうやら、私は……欺される前提の人間らしい……グラスの中では。
「何も。欺されてる可能性も込みで私がそう判断しただけ」
「……わかりました。助けることは協力します。ただし」
「ただし?」
「彼がカリスティアを謀った場合は必ず彼を殺します……」
次は……ありません。グラスはストンと私の中に落とすようにあっけらかんと殺すと……言った。声音はそうだが目は明らかにこれ以上の譲歩を許さないほどに厳しいものだった。その厳しさは周りを振り回している私が当然受けるべきものとして甘んじて受け入れて、私も負けじと微笑みながら眼力を強める。暫くにらみ合った後に、お互いの気の抜けたようなため息を同時にこぼした。
「夜更けですが今すぐドロウ様と緋想様の元へ行きましょう」
「はーい。アダムスの人を緋想さんとドロウ君のとこに持ってく前に冷凍保存しないでよ」
「されたくなければ、私にしたように彼をストックに仕舞えばよろしいかと……永久に」
「謝るからそんな怖いこと言わないで」
いつもいつも、というのは私が寝ている間や気づかない間にも同じような人間が現れて……グラスはその手を血に染めてきたのだろうか? 背筋をなで下ろす恐怖と、喉から這い出る罪悪感が身を支配して、止めるために手を伸ばす、足を伸ばす、間に合わない、ならばどうする?
「ストック」
咄嗟で私は具現化ストックのことが頭によぎり、目の前の人間を殺そうとするグラスをストックに仕舞った……、仕舞えたのだ。全身を一気に凍らせるつもりだったのか、グラスの冷たい魔力に覆われてガタガタ身体を震わせる男と……出来てしまったことえの恐怖で震える私、それぞれの恐怖に震えた者がそれぞれの息づかいで静寂を裂いていた。
私は……初めて生きた人間を仕舞った。
カタカタ震えながらストックの中の魔力を探るとちゃんとグラスが生きてそこに仕舞われていたことがわかり、安堵してはいけないのだけれど安堵する。生きたまま保存ができることは……魔物でわかっていたから、死ぬことはない。ある意味このストックの中が一番安全だ。そう確信して震える男に話しを聞くことにした。
聞いて分かったのはスケイスとママが今も戦っていることと、狂犬というものに殺されそうになったこと……。アダムスの人間で私を殺そうとしたことも、口調が多少粗暴ながらもちゃんと説明してくれた上に……あるものを狂犬という相手から咄嗟にくすねて此処に持って来てくれたらしい……。【魔物化の解除】という魔法だか、スキルが入った宝石を……。あのままグラスに殺させていたら、この宝石も道連れに死ぬ所だったそうだ……危ない。
「うん、わかった。助けるよその子」
「本当……なのか? 本当にいいのか?」
「本当だけれど絶対はないから……そのときはちゃんと覚悟はして欲しい。それができないなら白紙」
「あぁ……。それでいい」
床に座らせたままの話しで悪いがとりあえずそれでお互い決まったところで、私はとなりの三人が泊まっている部屋に移動して、アダムスの男はわるいけど私の泊まってた部屋に居て貰うこととなった。今から宿屋の女将さんに頼んでも部屋はたしか空いていないだろうし、そもそも……大分遅くだから流石に宿の女将さんも起きてないと思うから。
「ストック……。グラスッ……」
三人の借りている部屋に移動してから、グラスをストックからだすと……。つり目気味の目は爛々と切れ味を持ち目は動向が開いて、歪むように口元は笑みのようなものを浮かべていた。自身の知らないグラスがそこに居たものだから明らかに、怯えたような目を彼に送ってしまった。けれど……グラスはそのまま歪な顔で三人部屋を様子を見るように顔を振ると「今すぐアレを部屋からどかしますので待っていてください」っとせっかく止めたのにまた殺しに行きそうになるので、震えそうになる身体を押さえてグラスの腕を掴んだ。
「いィ……つぅ……」
「カリスティア!」
グラスの腕を掴んだ瞬間に私の身体が凍る。肌は冷たすぎて逆に焼けるように熱く、自身の皮膚の皮からジンジンと内側の肉を刺すように凍らせてくる初めての感覚で、グラスの腕を掴んだままその場に体勢を崩して、傍のテーブルに身体と頭をぶつけた。
グラスは私が凍った瞬間に(しまった!)と言わんばかりに殺気を霧散させてすぐに纏っていた魔力を散らせた。慌てて火魔法を使いゆっくりと自身の凍らした私の氷を溶かそうとする。私よりも痛々しく、私よりも重いなにかに沈むように顔をゆがめて「申し訳ありません」っと空虚に謝罪をするのみ、結局私の腕が解凍されるまでお互いに言葉はない。
私も初めてのことで、微妙に話しにくいけれど話さなければならない。今回も時間がないのだから、そう思って私はグラスをイスに座らせて私もイスに座る。色々此処になんでグラスが居るのかとかの説明もしなければいけないのだけれど、それは後でも良いだろう。今は……殺させないように話さねばならない。
魔法で明るくした室内に浮世離れして写るグラスは……。目を合せにくそうに机の下を見ている、私を凍らしたことに相当堪えたのか、殺意に満ちた顔が一転して一瞬で覇気のない憂いに満ちていた。酒も入っていたし理性と感情の制御が上手くいかなかったのだろうと私の中で判断して笑みを浮かべる。その笑みを見てくれるはずの目は下向いていて意味はないけれど。
「助けることにした」
助けることにしたから、殺すな。駆け引きとか上手い誘導とかはできないから結局は主語のない結論を先に言う。だからだろうか、下向いていたグラスの顔は微笑む私の顔を見て、目をこれでもかと開くと「何を言われたのですか?」っと震えた声で言ってきた。どうやら、私は……欺される前提の人間らしい……グラスの中では。
「何も。欺されてる可能性も込みで私がそう判断しただけ」
「……わかりました。助けることは協力します。ただし」
「ただし?」
「彼がカリスティアを謀った場合は必ず彼を殺します……」
次は……ありません。グラスはストンと私の中に落とすようにあっけらかんと殺すと……言った。声音はそうだが目は明らかにこれ以上の譲歩を許さないほどに厳しいものだった。その厳しさは周りを振り回している私が当然受けるべきものとして甘んじて受け入れて、私も負けじと微笑みながら眼力を強める。暫くにらみ合った後に、お互いの気の抜けたようなため息を同時にこぼした。
「夜更けですが今すぐドロウ様と緋想様の元へ行きましょう」
「はーい。アダムスの人を緋想さんとドロウ君のとこに持ってく前に冷凍保存しないでよ」
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「謝るからそんな怖いこと言わないで」
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