転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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王妃奪還作戦【7】

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「こちらが聞かされている事とで宜しければお話しましょう。強化剤を浸透させて開発させた理由は【悪魔の存在そのものの攻撃】が目的とされております。ええ、強化剤のおなじみに能力で記憶を代償に力を増大させるというもの、まぁ、この試み、ここまでやって浸透させたのは良いのですが……肝心の悪魔ディザには効果が無いという悲しき事態でして。はい」

 記憶と言うだけあって強化されるステータス効果は絶大だ。けれども、実際に使われている、推奨させれいる効果は強化とは違い記憶を消す効能。リチェルリットに浸透こそしないけれど、売人の数は他の国を抜きん出て多い。人身売買組織があるところだからだけでない何かを感じざる終えなかったが……やはり理由があった。自身の考えて居たよりも複雑な理由が。

「復唱してください。とある悪魔とはリチェルリットに住まうディザという悪魔のことである」

「ええ、誓って間違いはないので復唱いたします。悪魔とはディザという悪魔のことです」

 人間は嘘をつくときに僅かに瞳孔が広がる。男の黒い目を睨み逸らすことはなく瞳孔の動きを観察した。嘘はない、瞳孔の不自然な伸縮はない。男は目が一度も逸らされぬことに居心地悪そうに数回だけ目線を外したが、やがて観念してまた目線を合わせた。

「結構。お次は何故、人身売買組織はディザの存在を攻撃することとなったかを……予測は不要です。知ることだけお答えください」

「知ることですと。初めにリチェルリットのとある童話から、遡る必要がありますが如何致しますか?」

「リチェルリット建国童話でしたら、頭に入れてあります。進めてください」

 リチェルリット建国童話、あの絵本には確かに建国のさいに悪魔が出てくる。ディザという悪魔はリチェルリット建国から居る悪魔だということを、裏付けられてしまった。記憶の中の元上司が頭に浮かんでは、自身の怒りで浮かび上がった顔をひねり潰した。私の目に灯った僅かな怒りを感じた男が再度動揺するが、構わず目を細めて「進めなさい」と一押しすると、顔に汗を吹き出しながらも口を動かした。

「承知致しました。人身売買組織のエリニュス様は……童話に登場します暗殺者の末裔で在らせられます。当時の悪魔に恨み妬まれ、代々続く見世物のような身間違えのない、虹色の髪をその身に宿す呪いを掛けられた一族のご息女。疎ましい虹色の髪と、代々の契約で必要悪として押し込められる、一族の恨みにての行動でございます」

 虹色の髪、エリニュスの髪色はそんな巫山戯るような髪だとは噂で聞いた居たが、呪いとは考えが及ばなかった。自身もこの姿で、呪いだのと言われのないことを囁かれているだけで相当心痛ましい事であるのに、自身ではない先祖の過ちと恨みをその身に背負う苦しみは、真に察し同情することは叶わないが、どれだけの苦しみかは想像が付く。

 つくづく、元上官とはいえ、ディザとは性格が合わないと子供心から今の成長した自分でさえ思う。親の罪は親の罪、子の罪は子の罪。それを分けられない考えの者は誰であれ好かない。嫌いとは一概には断じることはないが、軽く言うなれば、私個人の苦手な者の特徴の一つであることは間違いは無い。

「最後です。カリスティアという女の知る情報を余すことなく全て吐きなさい。偽れば命を持って、償って頂きますことを心に置いてください」

 自身の声が静かに殺気を乗せて部屋に響き渡る。声と気迫に押されて研究者の中でも若い者達が息を飲み、小さく悲鳴を上げる。自分がどのような顔をしているのかは想像に容易い。嫌でも疎ましくあれど自身の顔だ。どのようにすれば人は恐怖するのかは、手に取るようにわかる。カリスティアには余り見せたくない、射殺すような目で目の前の男を見据える。

「偽るなどと氷帝と言わしめられるお方に、恐ろしゅうて私めにはできません。勿論余すことなく事実をお話しましょう。宜しければ、それで我々の命に慈悲を与えて頂けないでしょうか?」

「ええ、最後の質問も……必ず、嘘なくお答えいただければ、此処にいらっしゃる全員の命を見逃すことを誓いましょう」

 快く思わなくとも、その言葉選びは至って冷静かつこちらを刺激しないような声音で要求を言う男に、目を細め殺気を少しばかり緩めて承諾する。男は握りこんでいた手をゆっくりと力を解き、だらりと左手と宙に放り出す。殺気が緩んだことで部屋全体の緊迫した空気が、研究者達の安堵で僅かに満たされてゆく。


カリスティア、人体実験被検体ナンバー14号、出身は宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲン

本名、サクリファイス。異世界から呼び出して定着させた者の本名は不明

備考
サクリフェス、サクリファイス、どちらも名の意味は【供物・生け贄】
産まれたものの、宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲンに相応しくない魔法適正を持つ者などや、【親自ら不要と断じた子供に】男女問わずに名付けられる名前である。書類上は後者で記載されており、親自ら人身売買組織に売り渡されたとされている。有名どころだと、リチェルリット騎士団副長、リアンの前の名前もサクリフェスとなっている。

 悪魔ディザが、我らが世界の自然の意思を騙し獲得した【運命を読むスキル】に影響されず、なおかつ異世界だからこその強力なスキルを持つ者を、この世界の人間では成し得ないディザの討伐の為だけに呼ばれた者。
 自然の意思からディザを倒す為だけに【願いを叶えるに等しいスキル】を与えられた者。

「この世界に降り立った瞬間に、強化剤を飲ませてしまったせいで、それらの記憶は全て消え去ってしまったようですが……。これが、我々が密かにカリスティアという人間に執着しつつも、間接的な行動しか取れない理由です。どのような愚か者でも、願いを叶えるに等しい力を持つ者を敵に回すなど恐ろしゅうございます……。まぁ、具現化という異質が目立って、スキル事態が願いを叶えるに等しいと勘づくものはあまりおりませんので、そこは安心なさってください」

 突飛が過ぎる。突飛過ぎて自身の頭では理解が追いつかない。異世界? 供物、生け贄? 売り渡された? 人体実験? 彼女がいったい産まれて貴様らに何をした? 何もしていないのに何故一人の子供……しかも自身の世界ではなく、暮らしていた所から無理矢理引っ張り出されてきたのに、世界の命運を賭けて化け物を殺してください?

「巫山戯のも……大概に……」

 この男に言っても仕方の無い事だ。なのに、どうしても言葉が荒れる。自身に定着させた敬語のメッキがベリベリと剥がれていく幻聴がする。冷静に男が「そのときの資料です。よろしければ」と包みに入った書類を震える手で受け取り、男から背を向ける。此処に居ては怒りで自身の身が焼き切れそうだった。

 ざわざわ怒りを背負う私を見て恐怖する研究員の横を無言でかいくぐり、凍らしたドアを元に戻して振り返らずに飛び出すように外へでる。カツカツ、カツカツ、怒りに狂う自身の心の叫びに、呼応するように靴が音を立てる。

【主はぁん、グラスはん、自称ママ悪魔はーん、ドロウはん。王妃様確保しましたんで、わてさきに行ってますわ~】

「……カリスティアを回収してから向かいましょうか」

 スケイス様の声が脳内に響いたおかげで、少しだけだけれども頭が冷えた。自身の魔法で物理的に頭を冷やせればいいのですが……なんてことを思うくらいには段々と冷静さが戻ってきた。不意にカリスティアの魔力が感じられる所まで近づくことができたのだが……。魔力が異常に乱れている、気配と足音を最大限消してカリスティアの方へ急いで向かった。



「私は行かないからッッ!!!」

 
 
 カリスティアの痛々しいまでに威嚇するような声が響く。


「カリスティア……」

 




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