転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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王妃奪還作戦【9】

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「速く俺と愛らしい、ミルクベスオークちゃんを速く助けんか!!! 俺はグラスのお父様だぞ?」

「キンキン耳が五月蠅いぞ、元馬鹿王めが、静かにすることもできんのか!!!」

「なにぃ」

「なんだぁ」

「もうやだ、このへちゃむくれオデブ馬鹿中年共」

 子供達を頑張って解放したのだけど、子供の中に押し込められているようにベビーな魔物をあやしてる、デブ王がいらっしゃった。「ごめんねぇ、一緒に行きたいけど大丈夫?」という感じで奴隷の子供達だけで避難して貰ったのだが、デブ王が護衛しながら逃がせだのどうのこうの……。六歳八歳くらいの奴隷の子でさえ(なんだろこのおじさん)という、言いようもない覚めた目で見られて居るのにも関わらずだ……。五月蠅いし、腐ってもグラスのお父さんだし、ということで……重い中よっこらしょっと持ってやったのにもかかわらず。喧嘩ばかり。

「何でこの五月蠅い中年を、右に左に俵持ちして運ばにゃならないのさ……。それなら見目麗しい美女を運びたいわ……はぁ……」

 成人男性でもいいけど、どうせ助け出すならば、女の私でも美女が良いんですよ美女が。何が悲しくて、右でギャーピー、左でギャーピー騒ぐオッサン共を運ばないといけないの? 何度でも言おう、なんで運ばないといけないんだっけ?

 私の機嫌も知らずにギャンギャン喚く中年に、ついに面倒くさくなって横の窓に向かってぶつかるかぶつからないかの寸前で二人を投げ入れようとする。自身の命の危機となれば一気に静かになる小心者の鏡の反応、こんなことされて静かになるくらいならば最初からお口チャックして貰いたい。

「静かにしないなら……今すぐに窓から捨てるよ。というか適当に転移の指輪あげるから、二人仲良くどっかいって」

「仲がいいぃ!? 自国を滅ぼす贅沢の限りを尽くした愚か者だぞ!?」

 お前も贅沢してアダムス傾かせた要因が何を言うか。

「こんな、頭だけでかくなって中身スカスカの爺と、元国王の実績を持つ俺が仲がいいだと!?」

 脳みその中身スカスカ同士仲良くしてくれ。

 お互いが右と左でガンガン文句を垂れるから、鼓膜が震度五弱くらい揺れるし、頭痛と耳鳴りもしてきたものだから、赤ちゃん魔物だけうまく保護して、騒音の元をぶん投げた。デブ王は勢い余ってズボンと下着がズレて、文句ブーブーぶー太郎は床に顔面殴打した。絶対にギャンギャン反論されるのは目に見えていたので具現化で使い捨て転移指輪二人分と、魔物の赤ちゃんは優しくデブ王のズレた尻の上に置いて転移させた。やっと五月蠅いのが消えたと、ほっと肩をなで下ろして、謁見の間に向かう。

 ぶー太郎に悪魔の禁忌を聞いてからというもの、とても嫌な予感がする。私自身の嫌な予感はアテにならないはずなのに……今回は本当に嫌な予感で胸がはち切れそうになって、急いで謁見の間に向かう。向かうにつれて血の匂いが強くなっていく。高級な布は血を含んで、歩く度にザリザリとした足から悪寒が漂うな感触で……暫くすると首がない死体ばかりが、転々と横たわっていた。

 どれも、高級な召し物で包まれた人ばかりが横たわっていて。少し進むと奴隷の死体があったけれど、それは苦しまないように魔法で内側から心臓を止められたような綺麗な死体……。首のない死体と、苦しまないように殺された死体の違いが気になり、それぞれの死体に近づいて魔力を研ぎ澄ましてみれば。

(苦しまないように殺された方がスケイスで……首がないほうがウィーンママ……)

 知っている者の魔力で、ごくりと緊張ででた唾を嚥下した。やっぱり、この世界の人間は生き死にのやりとりは普通の事なんだと思わされた。死体を後にして謁見の間へ再度向かった。謁見の間に近くなるにつれてパタリとスケイスが殺した死体は無くなり、代わりにウィーンママが殺した首のない死体が少し増えて横たわっている。流石に城の上までにはこないと思って居たからか、地下から1階を中心に暴れたから下に行けなかったのか……上流階級の人が一網打尽にウィーンママに殺されたことがよくわかる。

(こうして見ると……本当にこの世界も血筋とかお家とかが好きだねぇ。日本もそうだけど、別にお家がらが良いからって、何やらしても優秀って訳じゃないのに、実力に不相応な贅沢あたえるから……)

 自分もなんやかんやで上流階級嫌いが移ったのか、死体を見てもなんとも思わなくなってきた挙げ句にそう思うようになった。別に私が嘆いても変わらぬ現実だと思って、死体を一瞥して足を進ませる。やがて謁見の間の扉の前にたどり着いたので、扉を開けるために左手で扉に触れて力を入れた。

「つーかーまーえーたぁ。よぉ、お久しぶりだなぁ14号」

「ひぅ、……エリ、ニュス」

「正解、部下も、どいつもこいつも役立たずだったからエリニュス様が来てやったのさ」

 お前の為に、吐息の掛かるほど近くで囁かれて身が硬直した。気配はなかったのに、最初から最後までずっと魔力で探知していたのに、こんな風に目を隠され、腕も身体も瞬時で拘束させられるなんて思わなかった。本当に軽い吐息の間に拘束されて頭が混乱した。そして……14号という私が最初ステータスで書いてあった名前を言われたことにも、脳内がガンガンと叩かれるような衝撃を走らせた。

「14号、充分遊んだだろ? 帰るぞ」

「私はカリスティア。帰る? 巫山戯ないで私が帰るところは……」

「帰る所はこっちだ。ねぇ、ディザをお友達の為に殺すんだろ? こちらもそのように動いて居るんだ、目的が一緒仲間だ。大人しく帰っておいで」

 こんな残忍なことをする奴となんかと一緒になりたくない。と吐き捨てるように言ったらエリニュスは、喉を鳴らして笑っている。必死に堪えているのがわかるくらいにプルプルと震えている。笑いながら抱き込むように私を器用に拘束し直す。本当に女かと思う位にびくともしない。魔力で抵抗しても力で抵抗しても笑いすら崩せずに、抵抗は悲しく無駄に終わった。どうしよう、とも考えられないほどにあっけなく捕まった私は、せめて戦意だけでも失うわけにはいかないと気持ちを高ぶらせる。

「残忍、残忍ねぇ」

「何が、言いたいの」

 キャッキャと耳障りな声で再度喉を鳴らして笑う。一目見た時からわかっていたけど、この人も中々の狂い具合の人間の用だ。絡みつくように私を拘束する腕の力を強め、耳元に口を近づけてこれでもかというくらいにくぐもった笑いを聞かせてくる。

「あの女悪魔だっけ? お前がママと慕って出会わなければ、こうして憎んで憎んで……苦しむことなんて無かったんじゃないかい? 人を残忍て責められる立場なのかい?」

 何も言えなかった。それに気を良くしたエリニュスがさらに、私の耳に毒を流し込むように滑らかな声音で言葉を紡ぐ。

「あのお前が好きな小僧も、お前が助けた時点で関わりをスッパリ断って居ればこうして……ここまで大変な旅をしなくてもよかったのになぁ……。そう思うだろ……あんだけ強くて将来有望で城に居ればどれだけの地位と名誉があったか」

 段々と私の呼吸が荒くなって頭の回転が鈍くなってくる。言葉そのものに魔力が乗っているのはわかるのに至近距離かつ魔力負けしていて抵抗が出来ないままに、私の心は逆撫でられる。

「氷帝って呼ばれるまでにどれだけ苦労しただろうな? 進んで死地に赴いて、傷付いて、守って、ボロボロになっても目覚めないし、お荷物なお前を守る為に……泣かせる話だねぇ……」

 五月蠅い。

「あぁ、そうそう。確かドロウだったかい?そいつのパパンを魔物に変えたのは私でね……。変えた理由は」

「聞きたくない」

 変えた理由に言いようもない拒絶感。嫌だ嫌だと顔を振るために力をがむしゃらに揺らすけど、びくともしない。さらに気を良くしたエリニュスが喉を鳴らす。

「まだ持つか、中々手強いねぇ。変えた理由は……カリスティア、お前の為に変えたんだよ。お前のその最悪を招くスキル……。スキルを奪って仕舞っておける水晶の実験の為に!!! ドロウだったかのパパンが犠牲になったのさ!!! 我々はそのスキルが欲しい」

「だったら好きだけスキル取れば良いじゃない!!! 勝手にとってどっか、どっかいってよ!!!」

「嬉しいねぇ。だから一緒に帰ろう、ここじゃお前のスキルを取ってやれないんだ。丁度良いだろう? お前がいなければ全員集まって旅する意味がないんだ。お前のせいで危険な目にあうことも無くなる」

 考えられなくなってくる頭を叱咤して動かす。どうしても私を連れて帰りたいようだ。甘言に惑わされて堪るかと虚ろな毒に犯された頭を少しでも動かして、私は再度暴れる。


「私は行かないからッッ!!!」


 力一杯暴れながら叫ぶ。私のせいなのは重々承知、私が悪いのは重々承知、だからって役目を逃げるのは違う。グラスも、ウィーンママも、スケイスも、ドロウ君も、王子やらなんやらでなりたくもない使命と役割を持って生まれて今が在る。私だけ、逃げるわけにはいかない。

 私のせいだというのならば、それを最後まで突き通す。もう、私は恨まれる覚悟も迷惑掛ける覚悟も……今此処で決めた。その決意を霧散させるつもりの言葉が、さらに私の心を一突きした。

「前の世界も家族が居ただろう? 言うとおり来てくれれば愛すべき家族の元へ帰らせてやることもできる。優しいと評判のお前だ。さぞかし愛されていただろう? 帰るべき場所の為に……」

【人殺しが罪にならない世界だったら、殺したいくらい嫌い】

「そんな家族……前の世界には居なかった」

 愛すべき家族の言葉で引き出された記憶が、走馬灯のようにゆっくりと音声が頭の中で再生される。そんな中での私の反論は自身でもどうかと思う位には、冷たくて……五月蠅いエリニュスが一瞬で静かになるほど、自身の声が頭の中で響いた。


 そんな中で、大切な三人の声が聞こえた。



「カリスティア!!!」「カリスティアちゃん!!!」「カリスティアはん!!!」



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