転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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40年に一度

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 無駄に広い奥ゆかしい処刑場。悪魔族の国の半分囲うような広さを誇るこの場所は、花びらが降るロマンチックな景色からの一時間後には猛吹雪という、普通の人間ならば気温差で死に至るほどのデタラメ天候、それでも、氷雪適応体質のグラスや、悪魔のアドラメルクママ、私の具現化スキルでどうにか切り抜けられる……筈だった。

「ママ、これ下手すればいつまで続くの?」

 洞窟の入り口を指さしてママに聞くと、バツの悪そうに口を歪めた。指の先にはぷくぷくと、泡立つ溶岩が目と鼻の先で流れ落ちている。結界がなければ、アドラメルクママ以外仲良く蒸し焼きとなることは想像に難しくはない。

「えーっと、長くて15日弱くらいかしら」

 避難先の洞窟の中でママ以外の顔から色がさぁ……っと消える。


 精霊国に戻る為に、支度を終え出発した私達は、嫌々ながらもこの奥ゆかしい処刑場へと足を進めたのだ。最初は予想通りに花の雨と猛吹雪の繰り返しで、流石に慣れてきたから、文句も少なく足を踏みしめ警戒を怠らずに進んだ。

「キャァ!」

「全員頭を手にしゃがんで! すぐに!!!」

 だが、花の雨の気候の時に急に地が割れるような大きい地震が起きた。王妃様は突然の事に悲鳴を上げ、地震には慣れている県に住んで居た私は、すぐに全員に指示をした。私の指示通りに全員頭を守ってしゃがむ、スケイスは王妃様に守るように覆い被さり、アドラメルクママはドロウ君を守るように覆い被さる。グラスはもしもの時の為に地震の中で必死に障壁を張り、後から詠唱を始めた。私も援護するように具現化で二重に障壁を張って地震に対抗した。

 体感30分以上揺れに耐えた。揺れが収まった頃に頭を上げて見ると、障壁の上にいくつか当たったら即死だろう大岩が乗っていた。周りに岩も何もない平原なのに何で岩が降ってくるんだ! なんてことは今更すぎてもはやため息しかでてこなかった。

(大岩が多いわ……なんて、心の安定の為に、寒い冗談言いたくなるくらい、この場所は……はぁ、今度こそ二度と絶対に行かない。こんなところ。ベーだ!!!)

 心の中で大騒ぎしながらも、障壁を解いて起き上がる。王妃様とドロウ君は恐怖で失神したようで、スケイスとアドラメルクママに力なく担がれていた。さて、それじゃ進みましょう。そう思って口を開こうとすると焦った様子のママが叫ぶように言った。

「すぐに高い所に避難しないと……。すぐに此処は溶岩だらけになっちゃうわ! 急いで!」

「スケイス! 予知!」

 この平原の中で高い所なんて言われてもそんな物はない。ならば予知に縋るしかない。手早くスケイスに予知をして貰うことにした。

「進路から左斜め五度のあの山ん中や! あそこの洞窟でやり過ごす予知が見えた!」

 何もない平原なのにも関わらずにうっすらと見える山を指すスケイス。アドラメルクママが焦るくらいに切羽詰まった状況で、あんな所まで足で行くのは無茶がある。ならば私の具現化の簡易転移指輪か、グラスの空間転移魔法のどちらか。

「足では間に合いません。6人転移を実行します。カリスティア」

「OK、全員分の使い捨て簡易転移指輪を即席で作る」

 流石に六人となるとグラスも難しいのか、丁寧にだけれども素早く魔力を練り上げている。もし、グラスが失敗した時用に使い捨てを作るが、どうしても転移できる距離が短くなってしまう。明らかに間に合わないけれど、やらぬよりはマシ程度の距離。それぞれが、イレギュラーに対応するために知恵と身体を使う。




【逆巻きの滴持ち 滴に宿す憧憬は遠方 滴落つる導は近辺 我は此処 我は現在 我は標 滴消えにし場に我来たる   大規模転移 アップシュタント・エスケイティーオ】





 グラスがフルの詠唱を成功させてくれたお陰でこうやって洞窟に避難できたのだけれど……。平原はしっかりと溶岩の海、結構高度が高めの洞窟でさえスレスレ。私とスケイスの合同結界8枚でも熱さが防げないほどの熱に晒されてしまった。ママが言うには、この溶岩大災害、40年に一度を今日の今に引いてしまったからだそう……運が悪すぎて泣けてくる。

「えーっと、スケイスとアドラメルクさんは食わなくても平気だから、ギリギリ10日籠もるので限界だな。これ以上伸ばすとなると、身体に良くない。特にグラス、お前はしっかりと食べろ」

 失神から回復したドロウ君は、必死に食べ物と相談してギリギリ10日持つと言ってくれた。ドロウ君は食料を持ちながらも、じっと私の膝に頭を置いて地べたに横たわるグラスとみた。

「面目ありません……」

「何をおっしゃいますか、グラス、貴方の働き無くば……人間である私達4人は死んでいました。しっかりと栄養と休養をお取りになること、わたくし達を信じて下さいませ?」

 流石に6人の長距離&大規模転移は無茶だったのか、グラスのMPとHPと体力がスッカラカンになってしまったようで、今は私の膝で元から白い顔をもっと真っ白にしてダウンしている。申し訳なさそうに謝るグラスを、良い意味で感謝と窘める言葉を掛ける王妃様。グラスも王妃様相手には何にも言えないようで黙って、はいの二言の返事をした。

「出発する前に、ストックの中の魔物全部売っちゃったの不味かったなぁ……。仕方ないから食料も足りなくなったら具現化するよ。一応MPあれば出来るし」

「それは止めた方がええで」

「ん?」

「今何かあって戦えるのは、主はん、アドラメルクはん、わての三人。現在戦力外は、王妃はん、ドロウはん、グラスはん三人。カリスティアはんが支援に回って戦う人間は減るちゅーことは、もしもの時の危険の対処ができない可能性が大きくなる。だから、悪いが具現化で食料確保は推奨せん。幸いに水の確保だけやったら、ドロウはんも王妃はんも水魔術、グラスはんは言わずとも氷で確保できるからのう」

「わかった」

 確かにこの世界は強かれど、不意の出来事には全て対処できるかと言えば違う。この状態で戦闘が出来ない人間が増えるのは危険……次はそうも考えれるようにしよう。スケイスの言葉を噛み砕き納得して了承する。そして使えそうならば吸収する。「面倒慣れしていらっしゃるの~こわ」っという言葉が聞こえた。

「面倒慣れしてるんじゃなくてそういう性格なの」

 グラスの触り心地のいい髪を梳かしながら撫でて心を落ち着ける。私が本格的にグラスに構い初めようと思った瞬間に皆が皆の作業に没頭し始めた。

 グラスは最初こそ申し訳なさそうな顔で皆を窺って居たが、ちょくちょく気を逸らすように会話を挟みながら、寝かせるように頭をなで、切り揃えられた前髪を梳くと。うとうと、とグラスの目が微睡んで来た。もう一息とばかりに、あやすように胸を心臓の速さでトントンと叩くと。やがて、グラスの目が閉じられ安らかな寝息が聞こえた。人が居る中でこうされてるとはいえ、グラスが寝るという事は気温や転移のこと含めて相当消耗したということだ。

(そういえば、ディザ的には王妃様は死んでいないといけない人間。もし、グラスが消耗して実力を発揮できない場所で……襲われたら。守り切れるかな……)

 もし、ディザの立場で、殺したはずの王妃様が助けられたという情報を手にした場合は、一番厄介なグラスが消耗している今を狙う。ポーションでMPやHPの回復は出来るが、消耗する際に生じる疲労はどうしても回復出来ず、休ませることでしか回復させられない。氷雪適応体質スキルには弱点となる灼熱の気温……。グラスはあえて火属性魔術を習得することによって、多少なりとも耐性はあるが、こんな溶岩の前では焼け石に水だろう。

『      』


 ん? 気のせい……かな?









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