転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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『  し て  たし  こ   よ』

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こぽ……。こぽ……。






 寝てみたけどダメだった。ダメだったどころか……悪化した。







「うぅぅゥゥゥ……」

「カリスティアちゃん……大丈夫?」

 結界石という物があれば、野宿でも見張りを立てずに朝まで全員寝られる。けど悪魔の睡眠は、身体だけ寝かせて精神は起きているとかなんとか……。だからすぐ起きられる実質見張りのアドラメルクママが、私の異変にいち早く気がついた。ママは音もなくすぐに近づいて私の背中を擦ってくれた。

コポコポ……。『  』

 寝て見たけど、息は出来るのに息をし辛く肺が押しつぶされそうに痛くて、何よりも頭も痛いし身体も重たい。耳から聞こえる水の音も先ほどよりは近づいている。声のような物もご健在で耳を覆うように両手を頭にやるけれど……塞いでいるのに、水の音は耳元で鳴ったままだった。

「ゥ、ゥァァァ、ァ……」

「どないした?」

「わからないの、急に頭を抑えてて……」

 声を小さくして会話しているのだろう。水の音に遮られながらもどうにか声が聞こえた。ついにスケイスも異変に気がついて起きてきたみたいだ。申し訳ないなっと思って居ても頭はどんどん痛くなる。唸り声を上げないだけで精一杯だった。アドラメルクママが始終背中を擦ってくれる。スケイスも私の様子が尋常じゃないと思ったのか全員をたたき起こし始めた……この真夜中に。

「ろうひたんだ~。ふぁ……、ふぁ!? どうしたんだ!?」

「……病気の方の知識はわたくしにはございません」

「カリスティア? どうしました? 頭が痛いのですか?」

「ゥウウウゥ……」

「アドラメルクはんが言うには、急にそうなったらしいんや。お二人さん医術は……あー……ようわかった」

 医術の知識があるのは、この中では私だ。その私がこうなっているからそれはお手上げだろう。本当に申し訳ないと思うけれど、痛いのと息苦しいのでとても返事ができない。グラスも私の様子を見に俯く私の顔をのぞき見た。俯いて下に垂れ下がる髪をどかして、私の様子を見たグラスがギョッとしながら目を見開いた。

「カリスティア! 聞こえますか? 力を抜いて下さい、唇を噛み切ってしまいます」

「グラス、タオルを持って参りました。これをカリスティアの口へ」

 相当噛みしめてたらしい。タオルを受け取ったグラスがゆっくりと力を抜くようにと何度も言ってくれたお陰で、少しずつ痛みに耐えながら口を開く事が出来た。口を開いた瞬間にタオルを噛ませられる。多少心の余裕が出来たが、頭が凄く痛いから激痛へと変わりすぐに余裕がなくなる。水の音もすぐそこに迫って……辛うじて聞こえていた皆の声が聞こえなくなってしまった。あれだけ擦ってくれたアドラメルクママの手も、寄り添うように居てくれたグラスの温もりも……水の感触で感じなくなってしまった。




『     て    』



 
 声も段々と近づいて来た。痛い頭を抑えながら酸欠の意識の中で聞こえた方向に顔を動かす。俯いた顔をあげるだけで近い付いてくる何かが見えた。

長い黒髪

4歳くらいの背丈

細くて折れそうな腕と足

この世界に来た時にゴブリンの血で汚して捨てた……あのボロボロの服。

千両出しても買い取りたいと言われるほどの丸くて大きなアメジストの瞳……。

狂気を含んだように無邪気に笑っている顔……。


4歳の私が居た。


 ペタペタと裸足で私の目の前に来た。無邪気で……それでいて狂気を孕んだ笑顔の私? が目の前に来た。四歳とは思えぬ復讐に濡れて爛々と光る紫の目と、その私が私の頬に、それはそれは優しく頬に手を添えた。私に触れられて私は嬉しそうに無邪気に笑った。完全に四歳のソレ、だけどそれに似合わない知性も感じられた。


『わたしをみて、わたしはここ、あなたもここ、かぞくもともだちもいっしょ! けど、からだはわたしの! だから……』










































か   
く   
ご   
し   
た   








「い、い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 叫んだ瞬間に水の音も感触も……女の子も消えた。女の子……あの女の子も私だ、私という異世界の魂の人間を入れる前の真の身体の所有者であるはずの子供……。抜けていたピースがカチカチをはまる幻聴がした。異世界の魂を入れたとしても、なんで私の意識だけがあったの? この身体の所有者本人ではなく。

【「うえぇぇぇぇん。夜真っ暗こわいよー」】

 一秒で移り変わるようにペルマネンテが精霊国を襲ったあの時らへんに、魔力を封じる魔具を付けた……。私は確かに4歳らしい行動をした……意識はあるのに。私は私を具現化し続けていると思い込んだけど……違うんだ。元の4歳である私が……具現化で私を呼んだんだ。だから、魔力を封じる魔具を付けたときに……。


 もし、私とあの子の考えが似ているのならば、私という存在に大嫌いな世界を押しつけて眠り続けることを選んだ。もし、記憶を見られるのならば……私が前の世界が大嫌いだということは筒抜けなのだから。ならばと、私という存在を具現化した。力がもし、あの子が所有権を持っているのな らば……。

『ころさせて くれないなら せかいがどうなっちゃっても わたしはしらない せいぎょはわたし せいぎょしなければ ぜんぶがめちゃくちゃ』

 不意に声が聞こえた。殺させて……というならば私ではなく、本来の所有権であるこの子が親を殺すみたいだ。殺す……私自身ではないけれど私自身が憎しみで人を殺す。そう思うと頭痛の次は気持ち悪くなってきた。

「う゛」

「気持ち悪いか? 袋は持っててやるから大丈夫だ。ほら、安心して、な?」

 優しい声と絶えず擦られる背中に促されるままに、戻してしまった。汚れるのも厭わずにグラスは私の口を濯いでくれた。優しい皆に泣きそうになりながらも、やっとのこと会話が出来るくらいにはなった。頭痛も幻聴も吐き気も今はない。けど、容認しないようならば……彼女はこうやって脅してくるだろう。さて、私はどうすれば良いのかね。

「ありがとう……」

 テキパキと着替えやら、吐いた分のお腹に良い料理やら、何もかもやってくれた皆にぐったりしながらもお礼を言うと皆笑ってくれた。寝る時間が大幅削れるし、進行だって遅くなると言うのにだ。皆優しいから、無理をしてでも私を医者に……あぁ、それが狙いか。医者に掛からせる為には町へと行かないといけない。

「一口食べてみて、食べれそうでしたらで構いません。無理して食べないでくださいね」

「うん」

 悪いとは思うけれど抵抗する気力も体力も無い。何も言わずにドロウ君が少ない食料の中で作ってくれた料理を食べさせて貰った。戻す気配無く全て食べられたことに、皆がわかりやすくほっとしたような気配がする。グラスは言わずとも、安堵したように息を吐いた。その後にグラスは魔法でテキパキと食器を洗ってドロウ君のところへ返してすぐに、私の元へと腰を掛けた。

「……」

「病気では、ないようですね」

 当たりだけど何を持って当てられたのか不思議でしょうが無い。そうチラリとグラスを見ると、困ったような、それでいて優しい青の瞳が細められた。

「この中で、前の世界含めて医学の知識に明るいのはカリスティアです。具合が悪くとも声が出なくとも……移る病気ならば、私を最低一度は遠ざけますから」

 そうやって笑われると、乾いた心がグラスを欲しくなる。怖い、グラスと一緒に居たい。そう思うとすぐに察してグラスは両手を私の前に差し出してくれた。迷わずグラスの中へと入り込む……冷たい。冷たくて心地良い、撫でてくれる……それが暖かい。体温じゃなくて心が温かい。

 グラスと私以外は支度を終えたらまた眠りについた。気配では、皆最後まで心配してくれたけれど。やるべき事として寝てくれた。グラスは、私がやっと寝落ちても傍に居てくれた。とても嬉しい……。

(嬉しいんだけど、こうもポンポン色々ありすぎると……心の方はもうすでに冷静になってきた。ダメだ、態々ホラーっちくに登場したことに腹立ってきた寝よう)
















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