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最終戦争【1】
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拝啓、カリスティアちゃんとグラスとスケイスへ。俺は今嬉しくないハーレム状態です……嬉しくない全くもって嬉しさの欠片の胡麻程にもない、何故なら……。
「僕は男ですけど、可愛い服が好きですから」
「まあ! じゃあ私がいーっぱい着せ替えの服あげるわ」
「馬鹿悪魔の服なんぞ、どうせ悪趣味極まりないだろ? 無理して着なくて良い」
「そんなことはありませんよ。アドラメルクの服のセンスは私のお墨付きです」
見た目だけ見れば、男装麗人の女と、落ち着いたセクシーさを誇る女と、素朴系の華奢で大人しい感じの女と、育ちの良さ満点の包容力満点のマダム。そこら辺の男ならば涎物の美女が俺の周り集まっているのだが、実は男と人妻と同性愛者と無性愛者というラインナップで……物語のような事なんて100%起こらないのだ。
なんでこうなったか? それはだな。
最初は王妃様と俺とアドラメルクさんの三人で居たんだが、リチェルリットの中でも情報に明るい役職に就いているという、エピクさんとリュピアさんが王妃様の少数護衛として来たのだ。王妃様の存在が城に密かに知れ渡ってディザという悪魔の存在に傷が付いた。元の縋っている人の感情と絵本の悪魔として国を守っているという信頼の元で力を得て居たのに、その信頼が崩れてしまったのだ。
ディザはわかりやすく弱体化して、現在は城に謹慎というなの幽閉状態にあるそうだ。魔力封じの枷をしているから特に何かを出来る状態ではないと思うのだが、俺はちょっと嫌な予感半分にその話を聞いていた。その間で段々プライベートな話しになり……。結構リュピアちゃんって可愛いなって思って居たのに、ナチュラルにあっさりとその思いは砕かれた。ここまで嬉しくないハーレムはどこの世界探してもいないだろう。
「そろそろ、空間魔法の魔力が安定するポイントまで付いたぞ。なんだ、野郎だってのに体力ないな、お前」
そんな暗い気分の中で、俺たちはエピクの言う魔力が安定するところまで行く事となった。それが魔物がうようよの足場の悪い獣道の最悪な山道だった。王妃様はエピクさんに抱えられて登っているから良いとして、それ以外は自力で登るのだが、リュピアさんは思ったより身軽でシュッシュッとスタイリッシュに登りながら、短剣を投げて魔物を仕留めてた。アドラメルクさんは羽があるから飛べば良いとして、いたって普通の人間である俺は傾斜にへばりつきながらやっとのこと、登り切って地べたに寝転がってエピクさんのこの一言……あんまりだぁ。
「料理人に、ぜぇ、それ以上の、たいりょ、く……求めないでください!」
「大丈夫? ドロウ君も私に乗れば良かったのに」
「いや、流石に女の人に乗るのはちょっと」
「僕も手を少しお貸しすれば良かったですね。至らなくて申し訳ないです」
「いやいや」
その言葉が一番のトドメですリュピアさん。本当に心配している二人の顔が、刺さっちゃいけない何かを俺の心にサクサク刺してる気がする。苦笑いの俺を差し置いてエピクさんは「王妃様降ろします」っと男の俺よりも騎士らしくエスコートをこなしながら魔力を練り上げた。
【大規模空間転移、すぐに国王様の御膳に飛ばすから失礼のないように】
「え、ちょ、まってくれぇぇぇ!」
俺の叫びも空しく、問答無用で俺は地べたに寝転がった状態で転移させられた。
転移の光がなくなった頃に起き上がると……如何にも重鎮や重役といった面々が俺らを見て居た。シアン色の長い髪の赤目の騎士や、洒落た茶色の鍔広帽子を深々と被った中年あたりの騎士、ピンク色の露出度の高い服を着た猫の獣人、仙人みたいな白くて長い髪とそれに負けじと長い髭の老人、ローブを深く被っていて顔は見えないが雰囲気が裏に近い者を纏う男。俺の幻視なのか、くしゃみしたら首が落ちたスキンヘッドの白衣の男、強烈にギラギラと目に刺すようなオカマ、それと、この場所で堂々と立ちながらいびきをかく謎の美形、寝言が爆発だとか錬金だとか呟いているから多分危ない奴。
ここはリチェルリットの王の間、それぞれの幹部などの重役が王に控える形で両脇に経っている。
そんな中で憂いの瞳を灯す一人の国王と、いつの間にか俺らから離れて横に控えたリュピアがその女の横で傅いた、この方が姫様なのだろう。王妃に似た髪色が眩しい。王様は今にも泣きそうな声で「エルロイド」と王妃の名前を呼び王妃様も「アルハイル」と王様の名前を呼んだ。王様は立ち上がり王妃様の元へよろよろと駆け寄った、王妃様も駆け寄った。
感動の再会、誰もが涙をのむ再会が今繰り広げられるのだろう。俺の脆い涙腺は速くも緩んできた。
「エルロイド!」
「アルハイル!」
今にも王妃様と国王様が互いに抱きつこうと、手を広げた。俺はいよいよ涙腺が緩んで。
バチィィィィィィィィィィィィィィン!!!
すぐに引っ込んだ。
「あ~な~た~? どういうことかしらねぇ? どうして、この国がわざわざ内部分裂していらっしゃるのかしら?」
幹部の数人はこうなることが予測出来ていたのか、やれやれと言わんばかりに首を振った。国王を王妃が扇子で顔をひっぱたいたのに、やれやれで済むのはリチェルリットならではだと思う。王妃様は鼻息を荒くしながら国王様にずかずかと寄った。国王様はその威力に気圧されてどんどん縮こまって後ろに押されていた。
「あ、あ、あ、あのじゃから、いや、だからワシが死んでの? エリニュスの暗殺の悲願を私の死でたたたた、たっしぇいして、存在のひててて、い、をの……」
「それで?」
「はい」
「はいじゃありません!!! この、この、大 馬 鹿 者!!!」
拝啓、宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲンに居る。カリスティアちゃんとグラスとスケイスへ、王妃様がすげー怖いです。凄い恐妻です。リチェルリット国王様が送ってくれた思い出の品で毎日手入れしている魔具を、存分に国王様の頬に叩き付けて聞くに堪えない音を奏でています。国王様がどんどん縮こまってもはや怯えた犬のようになっています。けど、何だかんだ言い合いながらも互いを心配する内容で……そこは愛が感じられました。
「お母様。こんなに素晴らしい平手うち。わたくしもまだまだですわ」
そして、娘さんも凄い怖いです。
カリスティアちゃんとグラスとスケイスへ、できるだけ急いでリチェルリットに帰ってくれるととても嬉しいです。皆待ってます。
不安にさせるわけじゃないが……嫌な予感がするんだ。できるだけ速く来てくれると……いや、嫌な予感って程度だから気にすんな。
・
・
「わ~楽しそうだねグラス」
「ええ、付いても羽を伸ばし過ぎてはいけませんよ。すぐとのことで出発しましたが、まだ病み上がりなのですから」
「は~い」
私達はこの手紙が届いてすぐにリチェルリットに向かった。病み上がりとはいえ、セシルが帰る時の馬車にお邪魔すれば楽に帰れるしとのことで、許可されたのだ。本当の姫が乗ってそうな白い馬車とそれの似合うグラスの膝に乗っています。もう、恥ずかしさとかは捨てた。バカップルでも何とでも言うが良いと開き直ってセシルが居るのにも関わらずに、甘んじてお膝に乗せて貰ってる。それに最近は餌付けがなくなったのでよかった。
「あ~!!! リチェルリットは契約魔物にも理解あるから、肩こらなくてええわ」
「骨ならば凝る肉はないからな。カリスティアちゃん、グラスさんそろそろ王都に……」
王都にその言葉に心を弾ませ笑顔で窓から身を乗り出した。遠くても幼少期の思い出通りで懐かしい町並みがどんどん近づいてくる。今か今かとワクワクして待っていたら。
【我が秩序に従いし善よ 別たれる袂を掴み引き留める】
「なにこの声」
不意に高らかな詠唱の声が上空に響いた。もっと身を乗り出して上を見てみると私の記憶にある天使という見た目にそっくりな男が杖をかざして魔力を練っていた。全員その高らかな詠唱を聴いて、主に宗教国家出身のセシルとスケイスが叫ぶようにこの詠唱を言った。
「大規模詠唱や、もし成功すりゃここいら一帯ふっとぶで!!!」
その言葉で急いで馬車を止めさせて四人降りて向かう。この詠唱の恐ろしさを知る見知らぬ冒険者も大声で「あの天使族を止めろ!」っと騒ぎ初めてリチェルリット王都へと向かっていた数多の腕の覚えがある者が私達に続いた。全力で走りながらセシルは聖書を開いた。
「大規模殲滅魔法フルットプロイビート。術者が悪と断じた対象を速やかに塵にする神聖魔法です。僕とこいつで魔力妨害をします。お二人はお手数ですが、無力化をお願いします【我が自由を縛りし悪よ 共に進む袂を分かち歩ませたまへ】」
聖書の開いているページが光を放つ。遠目から詠唱をしていた天使の顔が不機嫌に歪み、手をあげると雲の中から無数の天使が雨のように降ってきた。嘘でしょなんて言いたい所だけど残念ながら現実だ。
「カリスティア」
「今即席でグラスでも空飛べるような魔具を具現化してるかちょっと待って……出来た。ほい」
指輪にしてグラスに渡して、私は風魔法の【フライ】で自力でお空を飛んで降り注ぐ天使の中へ突っ込んだ。けれど、天使達は弓で足止めしてから、近接距離武器を持った天使でさらに足止め……連携の取れた動きですぐに私の歩みを止められた。今つばぜり合いしている天使は、中々にクールビューティ系で綺麗なのだけど無表情だ。どうにか話しを聞こうと何度か話しかけても返事はない。
(まるでロボット相手にしているみたい)
【手の中には慈しみが ルールの中には庇護がある】
【させへんわ、手の中には憎しみが ルールの中には迫害がある】
セシルとスケイスが交互に魔力妨害を施す高らかな詠唱が聞こえる。それに混じって他の冒険者や魔術師が加わり天使とそれ以外の軽い乱戦状態となった。けれど、こちらの方が劣勢だった。どうやっても上空を支配しているほうが有利だった。
「錬金術師はいないか? そこら辺の木でもいいから矢をくれ!」
「今馬車の木を解体して作ってるわ! その他も木材があったら私の所に運びなさい」
それでも、ベテランの冒険者は的確に周りに指示をだし、団体戦に慣れた者は積極的に自己で動いた。要らない箱や馬車などを解体して武器を作る。不利な戦闘なのにそれぞれの工夫で長く持たせていた。けれど、このまま長期戦になったら明らかに不利なのは変わらない……どうする。
「カリスティア、カリスティアが下さった杖のスキルを使います。受肉した天使以外は殺せませんが……戦闘不能にすることはできます。カリスティア……詠唱が終わるまでよろしくお願いします」
「おっけー……任せて」
私ならば了承するという信頼なのかすでに私の返事を聞く前から、魔力を練り上げるグラス。身体が白く発光し吐く息は雪となり。瞬きすれば雪の結晶が舞い散る。その様子を見た指揮官のような天使がグラスと私を指さすと一斉にあたりの天使が攻撃を始めた。
私は水明の剣に薄く魔力を纏い……笑う。
「また、よくわからないままに……頑張りますか!」
「僕は男ですけど、可愛い服が好きですから」
「まあ! じゃあ私がいーっぱい着せ替えの服あげるわ」
「馬鹿悪魔の服なんぞ、どうせ悪趣味極まりないだろ? 無理して着なくて良い」
「そんなことはありませんよ。アドラメルクの服のセンスは私のお墨付きです」
見た目だけ見れば、男装麗人の女と、落ち着いたセクシーさを誇る女と、素朴系の華奢で大人しい感じの女と、育ちの良さ満点の包容力満点のマダム。そこら辺の男ならば涎物の美女が俺の周り集まっているのだが、実は男と人妻と同性愛者と無性愛者というラインナップで……物語のような事なんて100%起こらないのだ。
なんでこうなったか? それはだな。
最初は王妃様と俺とアドラメルクさんの三人で居たんだが、リチェルリットの中でも情報に明るい役職に就いているという、エピクさんとリュピアさんが王妃様の少数護衛として来たのだ。王妃様の存在が城に密かに知れ渡ってディザという悪魔の存在に傷が付いた。元の縋っている人の感情と絵本の悪魔として国を守っているという信頼の元で力を得て居たのに、その信頼が崩れてしまったのだ。
ディザはわかりやすく弱体化して、現在は城に謹慎というなの幽閉状態にあるそうだ。魔力封じの枷をしているから特に何かを出来る状態ではないと思うのだが、俺はちょっと嫌な予感半分にその話を聞いていた。その間で段々プライベートな話しになり……。結構リュピアちゃんって可愛いなって思って居たのに、ナチュラルにあっさりとその思いは砕かれた。ここまで嬉しくないハーレムはどこの世界探してもいないだろう。
「そろそろ、空間魔法の魔力が安定するポイントまで付いたぞ。なんだ、野郎だってのに体力ないな、お前」
そんな暗い気分の中で、俺たちはエピクの言う魔力が安定するところまで行く事となった。それが魔物がうようよの足場の悪い獣道の最悪な山道だった。王妃様はエピクさんに抱えられて登っているから良いとして、それ以外は自力で登るのだが、リュピアさんは思ったより身軽でシュッシュッとスタイリッシュに登りながら、短剣を投げて魔物を仕留めてた。アドラメルクさんは羽があるから飛べば良いとして、いたって普通の人間である俺は傾斜にへばりつきながらやっとのこと、登り切って地べたに寝転がってエピクさんのこの一言……あんまりだぁ。
「料理人に、ぜぇ、それ以上の、たいりょ、く……求めないでください!」
「大丈夫? ドロウ君も私に乗れば良かったのに」
「いや、流石に女の人に乗るのはちょっと」
「僕も手を少しお貸しすれば良かったですね。至らなくて申し訳ないです」
「いやいや」
その言葉が一番のトドメですリュピアさん。本当に心配している二人の顔が、刺さっちゃいけない何かを俺の心にサクサク刺してる気がする。苦笑いの俺を差し置いてエピクさんは「王妃様降ろします」っと男の俺よりも騎士らしくエスコートをこなしながら魔力を練り上げた。
【大規模空間転移、すぐに国王様の御膳に飛ばすから失礼のないように】
「え、ちょ、まってくれぇぇぇ!」
俺の叫びも空しく、問答無用で俺は地べたに寝転がった状態で転移させられた。
転移の光がなくなった頃に起き上がると……如何にも重鎮や重役といった面々が俺らを見て居た。シアン色の長い髪の赤目の騎士や、洒落た茶色の鍔広帽子を深々と被った中年あたりの騎士、ピンク色の露出度の高い服を着た猫の獣人、仙人みたいな白くて長い髪とそれに負けじと長い髭の老人、ローブを深く被っていて顔は見えないが雰囲気が裏に近い者を纏う男。俺の幻視なのか、くしゃみしたら首が落ちたスキンヘッドの白衣の男、強烈にギラギラと目に刺すようなオカマ、それと、この場所で堂々と立ちながらいびきをかく謎の美形、寝言が爆発だとか錬金だとか呟いているから多分危ない奴。
ここはリチェルリットの王の間、それぞれの幹部などの重役が王に控える形で両脇に経っている。
そんな中で憂いの瞳を灯す一人の国王と、いつの間にか俺らから離れて横に控えたリュピアがその女の横で傅いた、この方が姫様なのだろう。王妃に似た髪色が眩しい。王様は今にも泣きそうな声で「エルロイド」と王妃の名前を呼び王妃様も「アルハイル」と王様の名前を呼んだ。王様は立ち上がり王妃様の元へよろよろと駆け寄った、王妃様も駆け寄った。
感動の再会、誰もが涙をのむ再会が今繰り広げられるのだろう。俺の脆い涙腺は速くも緩んできた。
「エルロイド!」
「アルハイル!」
今にも王妃様と国王様が互いに抱きつこうと、手を広げた。俺はいよいよ涙腺が緩んで。
バチィィィィィィィィィィィィィィン!!!
すぐに引っ込んだ。
「あ~な~た~? どういうことかしらねぇ? どうして、この国がわざわざ内部分裂していらっしゃるのかしら?」
幹部の数人はこうなることが予測出来ていたのか、やれやれと言わんばかりに首を振った。国王を王妃が扇子で顔をひっぱたいたのに、やれやれで済むのはリチェルリットならではだと思う。王妃様は鼻息を荒くしながら国王様にずかずかと寄った。国王様はその威力に気圧されてどんどん縮こまって後ろに押されていた。
「あ、あ、あ、あのじゃから、いや、だからワシが死んでの? エリニュスの暗殺の悲願を私の死でたたたた、たっしぇいして、存在のひててて、い、をの……」
「それで?」
「はい」
「はいじゃありません!!! この、この、大 馬 鹿 者!!!」
拝啓、宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲンに居る。カリスティアちゃんとグラスとスケイスへ、王妃様がすげー怖いです。凄い恐妻です。リチェルリット国王様が送ってくれた思い出の品で毎日手入れしている魔具を、存分に国王様の頬に叩き付けて聞くに堪えない音を奏でています。国王様がどんどん縮こまってもはや怯えた犬のようになっています。けど、何だかんだ言い合いながらも互いを心配する内容で……そこは愛が感じられました。
「お母様。こんなに素晴らしい平手うち。わたくしもまだまだですわ」
そして、娘さんも凄い怖いです。
カリスティアちゃんとグラスとスケイスへ、できるだけ急いでリチェルリットに帰ってくれるととても嬉しいです。皆待ってます。
不安にさせるわけじゃないが……嫌な予感がするんだ。できるだけ速く来てくれると……いや、嫌な予感って程度だから気にすんな。
・
・
「わ~楽しそうだねグラス」
「ええ、付いても羽を伸ばし過ぎてはいけませんよ。すぐとのことで出発しましたが、まだ病み上がりなのですから」
「は~い」
私達はこの手紙が届いてすぐにリチェルリットに向かった。病み上がりとはいえ、セシルが帰る時の馬車にお邪魔すれば楽に帰れるしとのことで、許可されたのだ。本当の姫が乗ってそうな白い馬車とそれの似合うグラスの膝に乗っています。もう、恥ずかしさとかは捨てた。バカップルでも何とでも言うが良いと開き直ってセシルが居るのにも関わらずに、甘んじてお膝に乗せて貰ってる。それに最近は餌付けがなくなったのでよかった。
「あ~!!! リチェルリットは契約魔物にも理解あるから、肩こらなくてええわ」
「骨ならば凝る肉はないからな。カリスティアちゃん、グラスさんそろそろ王都に……」
王都にその言葉に心を弾ませ笑顔で窓から身を乗り出した。遠くても幼少期の思い出通りで懐かしい町並みがどんどん近づいてくる。今か今かとワクワクして待っていたら。
【我が秩序に従いし善よ 別たれる袂を掴み引き留める】
「なにこの声」
不意に高らかな詠唱の声が上空に響いた。もっと身を乗り出して上を見てみると私の記憶にある天使という見た目にそっくりな男が杖をかざして魔力を練っていた。全員その高らかな詠唱を聴いて、主に宗教国家出身のセシルとスケイスが叫ぶようにこの詠唱を言った。
「大規模詠唱や、もし成功すりゃここいら一帯ふっとぶで!!!」
その言葉で急いで馬車を止めさせて四人降りて向かう。この詠唱の恐ろしさを知る見知らぬ冒険者も大声で「あの天使族を止めろ!」っと騒ぎ初めてリチェルリット王都へと向かっていた数多の腕の覚えがある者が私達に続いた。全力で走りながらセシルは聖書を開いた。
「大規模殲滅魔法フルットプロイビート。術者が悪と断じた対象を速やかに塵にする神聖魔法です。僕とこいつで魔力妨害をします。お二人はお手数ですが、無力化をお願いします【我が自由を縛りし悪よ 共に進む袂を分かち歩ませたまへ】」
聖書の開いているページが光を放つ。遠目から詠唱をしていた天使の顔が不機嫌に歪み、手をあげると雲の中から無数の天使が雨のように降ってきた。嘘でしょなんて言いたい所だけど残念ながら現実だ。
「カリスティア」
「今即席でグラスでも空飛べるような魔具を具現化してるかちょっと待って……出来た。ほい」
指輪にしてグラスに渡して、私は風魔法の【フライ】で自力でお空を飛んで降り注ぐ天使の中へ突っ込んだ。けれど、天使達は弓で足止めしてから、近接距離武器を持った天使でさらに足止め……連携の取れた動きですぐに私の歩みを止められた。今つばぜり合いしている天使は、中々にクールビューティ系で綺麗なのだけど無表情だ。どうにか話しを聞こうと何度か話しかけても返事はない。
(まるでロボット相手にしているみたい)
【手の中には慈しみが ルールの中には庇護がある】
【させへんわ、手の中には憎しみが ルールの中には迫害がある】
セシルとスケイスが交互に魔力妨害を施す高らかな詠唱が聞こえる。それに混じって他の冒険者や魔術師が加わり天使とそれ以外の軽い乱戦状態となった。けれど、こちらの方が劣勢だった。どうやっても上空を支配しているほうが有利だった。
「錬金術師はいないか? そこら辺の木でもいいから矢をくれ!」
「今馬車の木を解体して作ってるわ! その他も木材があったら私の所に運びなさい」
それでも、ベテランの冒険者は的確に周りに指示をだし、団体戦に慣れた者は積極的に自己で動いた。要らない箱や馬車などを解体して武器を作る。不利な戦闘なのにそれぞれの工夫で長く持たせていた。けれど、このまま長期戦になったら明らかに不利なのは変わらない……どうする。
「カリスティア、カリスティアが下さった杖のスキルを使います。受肉した天使以外は殺せませんが……戦闘不能にすることはできます。カリスティア……詠唱が終わるまでよろしくお願いします」
「おっけー……任せて」
私ならば了承するという信頼なのかすでに私の返事を聞く前から、魔力を練り上げるグラス。身体が白く発光し吐く息は雪となり。瞬きすれば雪の結晶が舞い散る。その様子を見た指揮官のような天使がグラスと私を指さすと一斉にあたりの天使が攻撃を始めた。
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