転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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最終戦争【9】

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 数多の天使を千切っては投げ千切っては投げた。私一人だけならばよかったのだけれど、後ろにドロウ君もいるし別の人間も居る。私は空中で指示を飛ばした。リチェルリットの兵士は眉をしかめることもなく、自身よりも優秀で強いと理解したら、忠実に私の指示を戦いながら聞く態勢に。その他は不愉快そうに顔を歪めながらも周りに流される形で聞く態勢へ……。リチェルリットの柔軟性に感謝しながら声を張り上げた。

「羽を狙いなさい! 天使の羽は致命傷になるから庇う為に絶対に動きが止るわ! そこをさらに弓で効率よく追撃して!」

 味方も敵側にも戦いにくい背の高い建物が並ぶところ、敵も自分たちも見晴らしが悪い土地勘の利はこちらにある。ドロウ君も背中に乗せながら、天使達の攻撃を空中で避けては槌で殴り堕とすの繰り返し。どれもこれも受肉の済んでいない若い天使ばかり、かといって中央や南に受肉済みがあつまっているかといえばそうじゃない。

「まだ上で様子見か……感じが悪いったらありゃしないわ」

 受肉済みの天使の気配の中で強力なのはまだ雲の中に隠れている。雲の中で大規模魔法を詠唱するそぶりも、それを隠す【サイレス】の気配もない。本当に様子見をしているだけ、感じが悪いし気持ちの悪いことこの上ない。羽をバタつかせて、近くの天使を2連続で殴り堕とす。何時終わるともわからないその繰り返しの中で、それも落ち着いて来た。そろそろ私も別の所をと思って羽を一回大きく羽ばたかせた。それに驚いたのか、何かを感じたのか背中にしがみつかせたドロウ君が急に顔を上げる。

「どうしたの?」

「わかんねぇけど、嫌な予感がする。カリスティアちゃんとグラス……。ラッパ?」

「嘘、神具を此処まで持って来たの!?」

 嫌な予感、ラッパ、その単語で私の遙か昔の記憶が呼び起こされる。最終審判のラッパ……あちらの四大天使ガブリエルが所有する死者を蘇らせるラッパと呼ばれているもの。実際は音を聞けば瞬時審判の始まる前に状態回帰する能力……。傷も消耗もない状態で無効化した天使が蘇るというもの……。

「アドラメルクさん、もしかしたら勘違いか、も」

「ドロウ君、飛ばすわよッッッ!!!」





 そうして、ラッパを吹かれるのを阻止したかったママが来たけどあえなく吹かれてしまい。こんな混沌とした状態となってしまった。そうだ……しゅんとしたアドラメルクママがよぼよぼのドロウ君を立たせながらそう説明してくれた。

【ウォーターアロー】

 勿論戦いながら、体力がなければあのモルゲンスペシャルを飲みたいところだけど、複製具現化コスト的にも乱用は避けたいところ。ママが来たことで戦況が総崩れというのは防げたんだけど、それでもじり貧なのは変わらない。ラッパが吹かれている時は例外なく復活してくるからだ。

 先ほどの色とりどりの天使達の頭が地に伏してると思ったら数秒で、むくりと起き上がってくる軽いホラーだ。5人の天使を退けて私の所まで後退してくるグラス、大きく身体が傾いて地に膝をついた。慌てて追撃してくる天使を剣でなぎ払う。

「はぁ……はぁ……」

「グラス……飲む?」

「いえ、まだ……」

「夜になると天使達は、悪魔の時間と嫌って攻撃が止むからそれまで耐えて」

 転移を使えるグラスの消耗が激しい、苦し紛れに具現化ポーションでごり押してるけど私のポーションじゃ疲労まではどうしても取れない。そんな中でママが夜までという情報をくれて慌てて天を見る……いつの間にか空が若干赤さがでる時間だ。

【全リチェルリットの為に尽力してくれる者に告ぐ、夜まで持ちこたえるのじゃ。それで一旦天使達の猛攻は止る……頑張っとくれ!!!】

 通信のできる魔術なのか、頭の中に王様の声が響く。疲労でクタクタの私とグラスもその言葉になんとか気力を振り絞って立ち上がった。一人でキツくなったら二人で、それが私とグラスの今やるべき戦い方。グラスが攻撃を受け止め私が天使を戦闘不能にするという効率はわるいけれど、負担を二分割できる戦い方に変えた。

「なんか余計にお似合いに磨きがかかったな二人とも」

「コレは孫が見られる日が近いわね」

 キャッキャと嬉しそうに天使の頭を槌で殴り潰したママに慣れたドロウ君が呟いたことを、ママは色々すっ飛ばして解釈と妄想を広げた。普通ベットインまでデートとか段取りとか……ある……よね? この世界も。少し不安気味に手を動かして居たら疲労困憊のグラスがツッコミを入れた。

「脳天気に馬鹿なこと言っているお暇が、あるのでし、たら。手を、動かしてください。はぁ……」

「なんか私達、三人以上になると死にそうなのに緊張感なくなるなぁ……」

 死にそうなのに馬鹿をやってるときのほうが、私もグラスも動きが良くなる。本当に肩の力が良い具合に抜けて疲労感がマシになってきた。クスリと笑って天使を屠る。もうそろそろこんな戦いが終わったら……ちゃんとデートしたりしたいなぁ。そう願ってラッパの音を聞きながら敵をなぎ払った。



「おわった……」


 夕焼けという時間帯になった時に、敵の天使族が全員そらの向こうへと飛んでいった。あれだけ騒がしかった戦いは一気に静寂と終わった。疲労でフラフラな中で城に帰った。主にまだ元気なママが、誰かと話しをつけている所をうつらうつらと立ちながら聞いていた。そうして、私とグラスは城の中の……懐かしの我が家へと案内された。フラフラで眠かったけど、テンションが上がって一気に覚醒する。

「わぁぁぁぁ……。私の愛しの倉庫部屋無事だったんだね! あぁ、太鼓も無事だぁ!!! ありがとうございます」

 案内してくれたメイドさんにお礼を言って無表情鉄面皮を貫いているグラスを引っ張って、浄化魔法を掛けながら具現化で私とグラスの分の寝間着を取り出した。

「……」

 グラスは疲労で、反応のない無表情で虚空を見つめて立っている。流石に血だらけのローブでせっかくの倉庫部屋ベットに寝て貰いたくない。

「グラスー着替えて」

「……」

「ダメだこりゃ」

 完全にガス欠になったグラスに反応がない、仕方が無い、強硬手段だとばかりにぼんやりしたグラスのローブを……無理矢理開いた。

「カリスティア!」

「よし、覚醒したな、着替えて」

「……はい」

 こうやってぼんやりしてるときに無理矢理ローブを開くと意識が覚醒するのに気がついた。案の定覚醒したグラスが此処はどこだ? と周りを見渡してから懐かしむように目を細めて、寝間着をもって洗面台のある方へと消えていった。

 その間に私は一足先にベットへと潜り混む。リアンとアルマの開けた穴もないし元通りの懐かしの部屋だ。ちょっと古くさい日本家屋の押し入れのような匂い。戦いが終わってママとドロウ君は別の部屋に案内されて……。スケイスとセシルはどうなったかわかんなくて……。ラブマルージュとディザがどうなったのかもわからない。眠い頭の中でぽやぽやと考えていると、着替え終わったグラスがベットの中に入ってきた。

「カリスティア」

「グラス」

 名前を呼ばれた方に身体を向けると、グラスが抱きしめてくれた。懐かしい部屋の匂いとグラスの香の葉の匂いが混ざって落ち着く。深く息を吸って吐いてを繰り返して、グラスの胸のあたりに顔を押しつけた。グラスがそんな私の頭を撫でながらぽつりと聞いた。

「終わってからの記憶がおぼろげなのですが……なぜ私は此処に?」

「わかんない、クタクタのままお城に入って、眠くて……ふぁ……。ママが話し付けてくれてここに」

「……そうですか」

 とりあえず、それだけ聞いて納得することにしたのかグラスはそれ以降言葉を発することはなかった。最後に互いにお休みとだけ呟いて……また来るだろう戦争へ向けて目を瞑った。グラスのさらさらな髪の毛に香る匂いと、呼吸の音と安らかな心臓の音。段々と力が無くなってゆく頭を撫でる手が時折意識を失ってぽとりと、頭の上に落ちては気がついたように頭を撫で始めるの繰り返し。

 やがて、完全に撫でる手が止った頃に、私は眠い目をあけて上に顔を傾けると。

「すぅ……。すぅ……」

 安らかに力が抜けて寝入る綺麗な顔が見えた。それだけ見れて満足した私は今度こそ力なく瞼を降ろして眠った。
 





 
 まだ日の昇らぬ頃に私は目が覚めた。目の前を見れば昨日の戦争の傷もない……綺麗な姿で寝息を零したカリスティア。規則正しく上下する肩と、寝息……。少し眠気に霞んだ思考のままに喉元をみると……綺麗な首元が。誘われるように首筋へと自身の口を持って行き……軽く噛みついた。自分以外の異世界人が犠牲になったことを、受け止める者にしては細すぎる首筋。首筋だけではない、手足も身体も全てが細すぎる。

 噛むだけで物足りなくなった私は、舌を出して数度だけぺろりと首筋を舐めた。身じろぎして唸るカリスティアの髪が首筋を舐めている自身の舌の上にパサリと降り注いだ。

 いつもの私の香の葉の移り香を纏ったカリスティアではなく……昨日の戦争を彷彿とさせる血の匂いが髪から香ってきた。一度頭を離して自身の手を嗅ぐと……辛うじて香の葉の香りはするが、浄化では消せない血の匂いが混じっていた。すぅ……と戦後で高ぶったままの自身と、眠気で霞んだ思考が冷めてきた。

「……そろそろ日が昇る時間ですか」

 これほどに太陽を疎ましいと思うのはこれっきりでありたいと願いながら、眠りこけるカリスティアの横で二枚の香の葉を取り出して一枚を自身の口に含んで噛まずに飲み込んだ。その後にもう一枚を自分の口の中に含んで数度自分の口の中へ転がした。そして、未だに眠るカリスティアの身体を仰向けにして覆い被さった。

 締まり無く空いた口から漏れる呼吸の音が愛おしい。

 そう思ってカリスティアの口と自身の口を重ねた。






「ん~ん~!!」(なになになになに!? 戦闘で盛っちゃった系? ねぇぇぇ!!!)

 夢も見ないほどに深く眠っていた私は、息苦しくなったから目を開けると。香の葉の香りを纏うグラスが覆い被さって乞うように私の舌を自身の舌で撫でていた。最初は夢かと思って拙いながらにゆるゆると答えてたんだけど……段々と意識が覚醒して……今に至る。

 ちうちう、ちうちう、拙い口吸いの音が部屋に響く。

 五月蠅いと言わんばかりに、指と指の間を縫って手を握りこまれた。やがて酸欠で朦朧とする中で口移しに何かを舌伝いに渡された。こくりと力なく飲み込んだ所でやっとグラスの口が離れる。私の乱れた息だけ響く昔懐かしの部屋と、口は離しても未だに覆い被さるグラスの欲に濡れた目。暫く見つめ合うとグラスが、上から退いた。

「おはようございます。太陽が昇ったらすぐに戦いが始まります……着替えてすぐに参りますよ」

「おはよ、その前にさっきの説明をだね」

「やりたいからやりました。楽しかったです。以上です」

「簡潔で宜しい!!!」

 こんな時はヤケに素直というか、歯に物着せないというか……。勘違いなんてする予知もないほどにスッパリと言う所が男らしい。私は渾身の叫び声でつっこみながら具現化で二人の服を具現化した。前のは血だらけの血みどろで浄化に時間がかかるから、新しいのにしたほうがいい。

 互いにせっせと着替えながら部屋に出ると。

「カリスティア様、グラス様、おはようございます」

「おはようございます?」

 部屋の外へ出ると知らないメイドさんが扉のすぐそこに控えていた。ピッタリと礼儀正しく腰を折る様を見つめて、目をパチクリさせながらおはようございますと言い返した。グラスは一回首を縦に振るだけで済ませた……この世界だとそっちのが普通なのかしら? なんて考えながら、メイドさんに何のようか聞く前に教えて貰った。国王からの呼び出した。ディザのことか戦争のことか……どれを聞かれるのやらと思いながら、部屋の前で待っててくれたメイドさんの後に付いていく形で、国王の間に通された。重苦しい扉が兵士の手で開けられると……。

「わぁ……お二人さん派手にボロボロで」

「もう、お化粧が台無しよ」

「僕は、お前のせいで全てが台無しだ。化粧がなんなんだ」

「お二人揃って、ろくでなしが何故こちらに?」

 二人の台無しコールをグラスがろくでなしの一言で両断した。ラブマルージュとディザの二人がボロボロの状態で国王の前に座らせられている状況。入ってそうそう気の抜けた返答で流されそうになるが、何が聞きたいのか、若干疲れ気味の国王を見ると、目に隈をひっつけた顔で「来たか」と言った。

「ラブマルージュはラブマルージュで……大変なことをしでかして居ったみたいじゃの、して、二人の処罰はグラスとカリスティア二人に一任することとなった。二人ともとても一国の王程度で裁ける罪状ではないのでな……。他の国王に連絡を入れて、悪魔族、宗教国家、精霊国、リチェルリットの4人の王によってそう決まったのじゃ」

 ディザは世界を恐慌させたことと……王妃殺害未遂やら後ろ暗いことに加え。ラブマルージュは親友殺害と裏で薬物の政策と人身売買組織の癒着問題。どれもこれも罪が大きすぎて……なおかつ一番被害を被ってるのは私とグラスだから。最初にもうディザの方で私は色々済ました。だから、「わかった」と国王に告げて座っているラブマルージュの目の前に来た。化粧は剥がれ、顔は火傷を負い……身体もボロボロ、私の見て居たラブマルージュからは想像付かない体たらくだ。それでも、笑みは絶やさない所が本当にとことんオカマだと思う。

「カリスティアちゃん、カリスティアちゃんの罰ならなんだってうけるわぁん」

「じゃあ、話しを聞いて?」

 お安い御用と笑うラブマルージュ。私は……その食べた鍵倉雅美が親友であることを打ち明けた。

「そのラブちゃんが食べた鍵倉雅美って人ね。親友なんだ……。私はこの世界に来る前にその親友を庇って……死んだの」

「それは」

 それだけでも、ラブちゃんは威力が絶大だろう。だって、異世界とは言えいろんな人間が居るのにわざわざ……私が死んでまで助けた親友を呼び出して食べてしまったのだ。結果的には私の為になった……結果的には。確かにラブマルージュの手助けなしだったら、グラスはもっと早く父の反感を買って処刑されていたかもしれない……。私はもっと今以上に弱くて生き残れなかったかもしれない。結果論で助けた親友に助けられる状況……正直辛い物だ。

「……」

 ラブちゃんの目から光がなくなり、顔は地に伏せられた。その表情だけで充分罰になったと私は思うよ。失った物は帰ってこない……。死んだもの、死んで残された者に……殺した者が手向けられる物は一つも無い。グラスのあのときの言葉に習って、ラブマルージュに一つ罰を願った。

「償いの言葉も要らないし、罰も求めない。前と同じように接して……前と同じように私の、私達の……親で居てよ。それが私の願うこと」

 リチェルリットの書類上……ラブマルージュが私とグラスの身元引受人だ。それを……続けて貰う。ずっと。

「……それが、罰ね。手痛いわ」

 手痛いの言葉に隣で不敵に笑うディザの瞼がピクリと反応した。それに苦笑いをして「ディザのはもうやったから」とだけ告げて後ろへ下がった。次はグラスとばかりにグラスの方へ向かうと、グラスも足をこちらへ足を進めた。手を上げず下に手を置いたままパァンと、すれ違いざまに手を合せた。バトンタッチ。

「ディザ様、ラブマルージュ様、顔をお上げください」

 その静かな声と共に顔を上げたディザとラブマルージュの横っ面を魔力を乗せた……手加減なしどころか本気のグーパンチで殴り飛ばした。遠くの両脇に控えている兵士の髪がなびくほどの強さで殴られたのにもかかわらず。二人とも若干痛そうにグラスを見ただけだった。

「私の方は終わりました。それでは国王様……私とカリスティアは今度は何をされれば良いのでしょうか?」

「ほんと、お主らは……欲がないわい。これなら三人も同席させてもよかったかの」

「……どれだけ血みどろの復讐を繰り広げられる予定だったのさ」

 確かに復讐されてもおかしかないし、別にしないわけじゃなかったのに聖人みたいに見られるのが微妙に嫌だ。あと、三人に見せるのをためらう程のえげつない復讐する人間だと思われるのも心外だ。ちょっとムッとしながら国王の指示を聞いた。

「お主達は昨日の通りに自由に助けてくれればよいぞ……。それに今日は、強力な助っ人がおるからの、お主達のおかげじゃ。ありがとうよ」

 ありがとうと笑う国王様に私もグラスも顔を見合わせる。強力な助っ人に心当たりがまったくないからだ。良くわからないままに、何もしなくて良いの一点張りで二人仲良く部屋に押し詰められた。せめて……ことの状況を把握しようと、私もグラスも慌ただしい城の中を動き回った。




 
 
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