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8月
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千晶の通う大学も前期試験が終わり、何事もなければ夏休みとなる。誰からだろう『やっと半分終わった』『林間学校でもいい思い出が欲しいな』そんなつぶやきから話は進み1年生で軽く打ち上げをすることになった。
敷地内…ではなく校舎の植栽の見える河川敷で適当に買い出して始める。特に火気は禁止されていないようで手分けして準備をしていく。
「高遠ちゃんはいつも涼しそうね」
「これでも暑いんですよ」
遮る木陰のない西日に背を向けてやり過ごす。かろうじてトイレと水道があるだけの場所なのもあってか参加者は多くない。
千晶は例の女子会の後、女子だけのお誘いも新歓系のお誘いもパスしていた。高校の友達ともGWに会ったきりで、彼女たちは女子大生ライフをエンジョイしているらしく遊んでもらえていない。バイトが忙しかったのもある。大人数の集まりは久しぶりだった。
無理に関わらなくてもやっていける、でもそれだけではきっともったいない。
「サマーキャンプったらテント設営だよな」
「サバイバルキャンプ行かされたわ」
同学年でも年齢に開きがあってなんとなくぎこちなかったのが、準備を進めるうちに少しずつ打ち解け、さらに酒が入ると砕けていった。盛り上がる輪に落ち着いた輪にと、ゆるく重なっていく。が。
「なんだか人が増えてません?」
「まぁ仕方ないわよ、女だけで飲んでても邪魔は入るでしょ。医者の卵なんてスキあらばなんでしょ」
「はぁ、そんなもんですかね」
まだ1年なのに気が早いと呟けば、まともなのは早い者勝ちだと返ってきた。私は同じクラスは嫌だけどね、と付け足されたのには千晶も頷いた。
共学校出身の千晶はあの周囲を巻き込んでの色恋沙汰に辟易していた、そして今度は6年間、クラス替えもないメンバー内でのいざこざに巻き込まれたくはない。
男も増えた気がして前回の戦犯疑いにも訊いてみたら案の定。のんびりお嬢さんなのに参加したのは「なんか面白そうかなーって。ああ、連絡しましたよ、同期っても男子もいるじゃないですか、あとで迎えにきてくれるって、恥ずかしいなぁ」
そして他にも華が欲しい面々が悪びれもせず。
「ああ、俺も呼んじゃった、だって可愛い女の子が――」
「黙れ」
「なんか楽しそうなことやってんねー」
「ーっす。ささ、一杯」
週末の大黒PAかと見紛うような河川敷に不似合いな高級車もちらほらとやってきて、運動部の上級生や他校の女子学生にその他も加わって何の集まりかさえもわからなくなってきていた。
そうして適当に飲み食いしている千晶の隣に、人影が。
「こんにちは、あれ前に会ったよね、どこだっけ」
「えー、気のせいですよーあなたみたいに素敵な人なら忘れないですって」
「どうせ僕なんてたいしたことないよね、忘れられちゃうくらいだもん」
そう白々しく声を掛けてきたのは胡散臭くて喰えない男で慎一郎のご学友。三度目はお互い顔を覚えていた。にこやかな表情と裏腹に白々しい会話を交わす二人。
「はいはい、女の子たち侍らせてた人でしたね」
「それは僕じゃないからさ」
「またまたご謙遜を、あー勝手に寄ってきちゃうんですね」
「そうなんだよ、折角静かなハコみつけたのにさ、あれでまだ二回目だったんだよ」
「誰かさんがエサを撒いて仕掛けてるんじゃないんですか」
「さあね、気になる?」
確信犯めいた言い方はまっくろくろ。
「どうでもいいです、今日もそれなりに集まってきてますからどーぞ」
「やだなぁ偶然通りかかっただけだよ、まぁこれ皆さんで」
「ありがとうございます」
偶然といいつつ用意周到すぎる差し入れにお礼を言って、もう誰のせいでもないけどどうしてこうなった、と心のなかで溜息をついた。
色々な思惑が飛び交う中、適度に気を配り、適度にサークル勧誘と恋慕の芽を摘み取り過ごしていく。多分私的に深く付き合うことはないだろうと思いながらも、将来的に同業として協力していけるだけの距離は保って過ごしたい。
ここで適当な相手を見つけて貢がせるのが賢いんだろうな、とは考えながら。
「ちあきちゃん、今度って言ったの覚えてる?」
いつの間にか、背中越しに斜向かいになっていた喰えない男に再び声を掛けられる。
前回下の名前は(仕方なく)教えたが連絡先は『また今度』。体のいい断りだったのは分かってて聞いてくるこのしつこさよ。
「何でしたっけふふ。今度とお化けは出た試しがないって言いますからねー」
「ふーん、最近のお化けは足がついてるんだね」
「それを言うなら幽霊ですよー」
「じゃぁ初めましてでいいよ、三田塾医学部4年の時田誠仁、よろしくね」
ああいえばこう言う、さすが慎一郎の類友。
「まさひとさん」差し出された個人名刺を一応両手で受けつつその名前に疑問を呈する。慎一郎もセイジと呼んでいたけれど仁をジでぶった切るか?
「あーあ」
「名前を知られたら困るんですか、アクマか何か?」
「ちあきちゃんの連絡先教えてくたら答えてあげる」
「じゃぁいいでーす、勝手に呪われててください」
横から「彼女、カレんとこは大病院だから教えておきなよ」と、名の知れた総合病院名が挙がる。
「いやいや私には立派すぎて」
「じゃぁ俺にしとく? 実家は栄(名古屋)なんだけどさ」
「福田にはもったいないわ。ウチ大きいのは建物だけだから、それに姉がお婿さんもらって僕は期待されてないからね」
「その発言は逆効果じゃないんですかー」
くだらない軽口は続く。誠仁も福田と呼ばれた彼も顔までいいのに天狗っぽさはない。ちょっとカタい人も多いのに、嫌味のない軽さと余裕は素直に尊敬する。
敷地内…ではなく校舎の植栽の見える河川敷で適当に買い出して始める。特に火気は禁止されていないようで手分けして準備をしていく。
「高遠ちゃんはいつも涼しそうね」
「これでも暑いんですよ」
遮る木陰のない西日に背を向けてやり過ごす。かろうじてトイレと水道があるだけの場所なのもあってか参加者は多くない。
千晶は例の女子会の後、女子だけのお誘いも新歓系のお誘いもパスしていた。高校の友達ともGWに会ったきりで、彼女たちは女子大生ライフをエンジョイしているらしく遊んでもらえていない。バイトが忙しかったのもある。大人数の集まりは久しぶりだった。
無理に関わらなくてもやっていける、でもそれだけではきっともったいない。
「サマーキャンプったらテント設営だよな」
「サバイバルキャンプ行かされたわ」
同学年でも年齢に開きがあってなんとなくぎこちなかったのが、準備を進めるうちに少しずつ打ち解け、さらに酒が入ると砕けていった。盛り上がる輪に落ち着いた輪にと、ゆるく重なっていく。が。
「なんだか人が増えてません?」
「まぁ仕方ないわよ、女だけで飲んでても邪魔は入るでしょ。医者の卵なんてスキあらばなんでしょ」
「はぁ、そんなもんですかね」
まだ1年なのに気が早いと呟けば、まともなのは早い者勝ちだと返ってきた。私は同じクラスは嫌だけどね、と付け足されたのには千晶も頷いた。
共学校出身の千晶はあの周囲を巻き込んでの色恋沙汰に辟易していた、そして今度は6年間、クラス替えもないメンバー内でのいざこざに巻き込まれたくはない。
男も増えた気がして前回の戦犯疑いにも訊いてみたら案の定。のんびりお嬢さんなのに参加したのは「なんか面白そうかなーって。ああ、連絡しましたよ、同期っても男子もいるじゃないですか、あとで迎えにきてくれるって、恥ずかしいなぁ」
そして他にも華が欲しい面々が悪びれもせず。
「ああ、俺も呼んじゃった、だって可愛い女の子が――」
「黙れ」
「なんか楽しそうなことやってんねー」
「ーっす。ささ、一杯」
週末の大黒PAかと見紛うような河川敷に不似合いな高級車もちらほらとやってきて、運動部の上級生や他校の女子学生にその他も加わって何の集まりかさえもわからなくなってきていた。
そうして適当に飲み食いしている千晶の隣に、人影が。
「こんにちは、あれ前に会ったよね、どこだっけ」
「えー、気のせいですよーあなたみたいに素敵な人なら忘れないですって」
「どうせ僕なんてたいしたことないよね、忘れられちゃうくらいだもん」
そう白々しく声を掛けてきたのは胡散臭くて喰えない男で慎一郎のご学友。三度目はお互い顔を覚えていた。にこやかな表情と裏腹に白々しい会話を交わす二人。
「はいはい、女の子たち侍らせてた人でしたね」
「それは僕じゃないからさ」
「またまたご謙遜を、あー勝手に寄ってきちゃうんですね」
「そうなんだよ、折角静かなハコみつけたのにさ、あれでまだ二回目だったんだよ」
「誰かさんがエサを撒いて仕掛けてるんじゃないんですか」
「さあね、気になる?」
確信犯めいた言い方はまっくろくろ。
「どうでもいいです、今日もそれなりに集まってきてますからどーぞ」
「やだなぁ偶然通りかかっただけだよ、まぁこれ皆さんで」
「ありがとうございます」
偶然といいつつ用意周到すぎる差し入れにお礼を言って、もう誰のせいでもないけどどうしてこうなった、と心のなかで溜息をついた。
色々な思惑が飛び交う中、適度に気を配り、適度にサークル勧誘と恋慕の芽を摘み取り過ごしていく。多分私的に深く付き合うことはないだろうと思いながらも、将来的に同業として協力していけるだけの距離は保って過ごしたい。
ここで適当な相手を見つけて貢がせるのが賢いんだろうな、とは考えながら。
「ちあきちゃん、今度って言ったの覚えてる?」
いつの間にか、背中越しに斜向かいになっていた喰えない男に再び声を掛けられる。
前回下の名前は(仕方なく)教えたが連絡先は『また今度』。体のいい断りだったのは分かってて聞いてくるこのしつこさよ。
「何でしたっけふふ。今度とお化けは出た試しがないって言いますからねー」
「ふーん、最近のお化けは足がついてるんだね」
「それを言うなら幽霊ですよー」
「じゃぁ初めましてでいいよ、三田塾医学部4年の時田誠仁、よろしくね」
ああいえばこう言う、さすが慎一郎の類友。
「まさひとさん」差し出された個人名刺を一応両手で受けつつその名前に疑問を呈する。慎一郎もセイジと呼んでいたけれど仁をジでぶった切るか?
「あーあ」
「名前を知られたら困るんですか、アクマか何か?」
「ちあきちゃんの連絡先教えてくたら答えてあげる」
「じゃぁいいでーす、勝手に呪われててください」
横から「彼女、カレんとこは大病院だから教えておきなよ」と、名の知れた総合病院名が挙がる。
「いやいや私には立派すぎて」
「じゃぁ俺にしとく? 実家は栄(名古屋)なんだけどさ」
「福田にはもったいないわ。ウチ大きいのは建物だけだから、それに姉がお婿さんもらって僕は期待されてないからね」
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