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二十話(???視点)
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「エリナ様、こちらは奥様からでございます」
「いつも、ありがとうございます」
はにかみながら、エリナ様がぺこりと頭を下げる。
特別愛らしい顔立ちをしているわけではないけれど、人の良さが顔によく出ている。
「では、クリストフ様にもよろしくお願いいたします」
公爵領に戻ってくださったものの、クリストフ様は未だに公爵家と距離を置いている。というより、どのように接すればいいのか分からないのだと思う。
何せ、現公爵家当主であられる奥様とクリストフ様は血が繋がっていない。
先代当主、つまり旦那様が屋敷のメイドと関係を持ち、産まれたのがクリストフ様だった。
ところが旦那様は、自らの非を認めようとしなかった。メイドに薬を盛られて、無理矢理襲われたと主張した。以前から奥様に女癖を指摘されていたにも拘わらず。
しかし使用人たちは、旦那様の言い分を信じた。いや信じる振りをした。そしてメイドを一方的に責め続けた。旦那様の機嫌を損ねないために。
住み込みで働いていた彼女は、クリストフ様を連れて屋敷を後にした。
けれど使用人は、その後も二人を徹底的に追い詰めていく。
彼女たちの住所を特定すると、悪評を流して住めなくしたり。暴漢を雇って彼女を襲わせたり。
一時でも、旦那様の寵愛を受けた彼女に嫉妬していたのだろう。
その旦那様は、使用人たちの暴挙を放任していた。メイドへの興味も愛も消え失せていたから。
やがてメイドは自ら命を絶ち、当時まだ幼かったクリストフ様も行方知れずとなった。
けれど、旦那様たちも報いを受ける時が来た。一連の騒動について何も聞かされていなかった奥様が、真実を知って激怒したのだ。
王族の血を引く彼女は、多数の高位貴族を巻き込み、旦那様を公爵家から追放した。この時、彼に盲目的だった使用人も一斉に解雇している。
奥様には五歳になるご子息がいらっしゃったが、彼が適齢期になるまではとご自身が家督を継がれた。
そして、十五年以上クリストフ様を探し続け、半年前にようやく見付け出した。
「俺は、公爵家の人間ではありません。放っておいていただけませんか」
素っ気ない物言いをするクリストフ様を、奥様はどうにか説得して公爵領に連れ帰った。
浮気自体は、彼の母親も合意の元で行われた。しかしその後の仕打ちは、到底許しがたい。
クリストフ様に豪華な一軒家を与え、時折私に菓子や紅茶の茶葉を届けさせているのは、奥様なりの罪滅ぼしだった。
私を乗せて走り出す馬車を、エリナ様が笑顔で見送る。
彼女が何者なのか、私たちは知らない。奥様でさえも。
だけど善良な方なのは確かだ。クリストフ様と幸せになって欲しい。
奥様がお二人を見付け出すのがあと数日遅かったら、あの街で起こった事件に巻き込まれていたかもしれない。
「いつも、ありがとうございます」
はにかみながら、エリナ様がぺこりと頭を下げる。
特別愛らしい顔立ちをしているわけではないけれど、人の良さが顔によく出ている。
「では、クリストフ様にもよろしくお願いいたします」
公爵領に戻ってくださったものの、クリストフ様は未だに公爵家と距離を置いている。というより、どのように接すればいいのか分からないのだと思う。
何せ、現公爵家当主であられる奥様とクリストフ様は血が繋がっていない。
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ところが旦那様は、自らの非を認めようとしなかった。メイドに薬を盛られて、無理矢理襲われたと主張した。以前から奥様に女癖を指摘されていたにも拘わらず。
しかし使用人たちは、旦那様の言い分を信じた。いや信じる振りをした。そしてメイドを一方的に責め続けた。旦那様の機嫌を損ねないために。
住み込みで働いていた彼女は、クリストフ様を連れて屋敷を後にした。
けれど使用人は、その後も二人を徹底的に追い詰めていく。
彼女たちの住所を特定すると、悪評を流して住めなくしたり。暴漢を雇って彼女を襲わせたり。
一時でも、旦那様の寵愛を受けた彼女に嫉妬していたのだろう。
その旦那様は、使用人たちの暴挙を放任していた。メイドへの興味も愛も消え失せていたから。
やがてメイドは自ら命を絶ち、当時まだ幼かったクリストフ様も行方知れずとなった。
けれど、旦那様たちも報いを受ける時が来た。一連の騒動について何も聞かされていなかった奥様が、真実を知って激怒したのだ。
王族の血を引く彼女は、多数の高位貴族を巻き込み、旦那様を公爵家から追放した。この時、彼に盲目的だった使用人も一斉に解雇している。
奥様には五歳になるご子息がいらっしゃったが、彼が適齢期になるまではとご自身が家督を継がれた。
そして、十五年以上クリストフ様を探し続け、半年前にようやく見付け出した。
「俺は、公爵家の人間ではありません。放っておいていただけませんか」
素っ気ない物言いをするクリストフ様を、奥様はどうにか説得して公爵領に連れ帰った。
浮気自体は、彼の母親も合意の元で行われた。しかしその後の仕打ちは、到底許しがたい。
クリストフ様に豪華な一軒家を与え、時折私に菓子や紅茶の茶葉を届けさせているのは、奥様なりの罪滅ぼしだった。
私を乗せて走り出す馬車を、エリナ様が笑顔で見送る。
彼女が何者なのか、私たちは知らない。奥様でさえも。
だけど善良な方なのは確かだ。クリストフ様と幸せになって欲しい。
奥様がお二人を見付け出すのがあと数日遅かったら、あの街で起こった事件に巻き込まれていたかもしれない。
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