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本編

28.おじい様参上②

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 おじい様はいつになく厳しい顔で、デニスを見据えて言う。



「デニス。お前は今さら自分が何を言い出したのか分かっているんだろうな?」

「えーと。俺、ずっと辺境伯になれるって、そう思ってたから……」



 ブラッドに負けたこともだけど、辺境伯も自分の物だと思ってた分、余計に悔しいのかもしれない。



「しかしお前は自分の意思で、ステファニーではなくそこの令嬢を選んだのだろう?」

「それはその……」

「大かたステファニーの小言がうるさいから、小言を言わないその令嬢のほうが良いくらいに思ったのだろう」

「なんで……」

「赤ん坊のころから見ているのだ、分からないわけがあるまい」



 低く大きな声で恫喝どうかつされ、デニスがビクっと跳ねる。



「お前がもう少し真面目に勉学に取り組んでいるか、少なくとも領地経営のことを学ぶ姿勢があれば、ワシも熱心に止めたのだがな」

「え?」

「デニスは辺境伯には向いて無さそうだったからな。好きな女子おなごげるほうが良いかと好きにさせたまで。全てお前の選んだ道なのだぞ?」



 デニスは言葉なく項垂うなだれる。



「辺境伯になりたかっただけでステファニーと結婚されたのでは、ステファニーがかわいそうだろう。そうは思わんか?」

「俺はステファニーが嫌だったわけじゃないんだ。これからは優しくするし、言うことも聞く。それでもダメなのかよ?」

「はぁー」



 深~いため息を吐いて、おじい様は頭を抱えてしまった。



「ステファニー、今まで済まなかったな」

「もう良いです」

「お前には苦労をかけて悪いな」



 デニスがムクリと顔を上げてこちらを見ている。

 心なし表情が明るい。



「デニス」

「はい、おじい様。俺これから頑張ります!」



 この人何言ってるの?

 また変なこと考えてるのでは?



「今までのことを許してくれるんだよな? これからはステファニーと仲良くするよ。な? ステファニー?」

「この馬鹿者!!」



 雷のような声が響き渡った。

 ブラッドでさえ片目を閉じて固まっている。

 私は慣れているけど、これは久しぶりの大きさだった。

 ブリトニーはさっきから審判を務めた騎士の後ろに隠れている。

 そこはほら、運命の人なんだし……恋人のデニス以外に助けを求めたらダメだと思うのだけど?



「お前は、まだ分からんのか!」



 そう思ったけど、デニスのそばのほうがとばっちりを受けそうで、ブリトニーのことを責められないと思った。

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