【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵

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本編

36.婚約発表①

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 今日は狩猟祭の最終日。

 恒例の夜会があり、そこで正式に私とブラッドの婚約が発表が決まっていた。

 私は午前中からお風呂にマッサージ、そして軽食を挟んでネイルの手入れやコルセット装着が始まる。

 コルセットは長時間かけ、何回にも分けて少しずつ締めていく。

 急に締め付けると気を失うとか、具合が悪くなるからだ。

 そしてやっとすべての支度が終わったのは夕方のこと。

 侍女たちの頑張りにより姿見の中の私は、見違えるような美少女に仕上がっていた。

 ドレスはブラッドの瞳の蒼玉サファイア彷彿ほうふつさせる青。

 所々に黒のリボンやレースが使われている。



「ステフィー、キレイだ」

「気に入った?」

「もちろん。と言いたいところだけど……見せ過ぎじゃないか?」



 私の胸元をブラッドが気にしている。

 そして背中も大きめに開いているのを見て眉根を寄せた。



「そう? 今の流行りなのよ?」

「誰がこんなデザインを流行らせたんだ。……どうせろくな奴じゃないだろ」



 ボソッと呟くのが聞こえて私もさすがに苦笑した。

 そんなに気にしなくても私はおじい様の孫だもの。

 そんな邪な目で見るだなんて怖いこと、誰もしないと思う。

 だけどブラッドに独占したいと思ってもらえるのは素直に嬉しい。

 だから私は、仏頂面した彼の頬に自分からキスをした。



「ん……!?」



 完全な不意打ちにブラッドの耳が赤くなった。

 私は珍しいものが見れて得した気分だ。



「今日のブラッドは特別かっこいいわ」



 サイドの髪をスッキリ撫で付け、上部は色気のある流し髪で、いつに無く艶やかな黒髪。

 私の髪と瞳に合わせた、シャンパンゴールドの夜会服と紫水晶アメジストを思わせる淡い紫のアスコットタイ。

 長身で程よく鍛えられた体躯たいくのブラッドは、大人の色気が漂いはじめていて、私は惚れ直してしまった。



「やっとステフィーは俺のものだって、堂々と言えるようになる」

「もう婚約は調ってるのに?」

「……お披露目が終わるまでは、やっぱり形だけなんだよ」



 そっぽを向いてボソッと言うから聞き取れなかった。



「ブラッド?」

「いや、何でもない。とにかく今夜、名実ともに婚約者になれる」

「うん」



 歯切れの悪いブラッドに私は違和感を覚えた。
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