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第一話 始まりの一織り
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「たくっ…アイツどこで油売ってんだ?
ザードは舌打ちをしながら廊下を歩いていた。
今の時間、夕食の準備の為に厨房にいるはずなのに姿がなかった。朝の洗剤混入の件もあり、同じことをやらかさないように一応様子を見に行ったのだが…もしやどこぞで落ち込んで泣いているのではないか?とザードは考え苛ついた。
──アテナはよく泣く。
武国の城には女がいないのに加え、正直女という生き物とは縁がない。言い寄って来る女もいたがほぼ全員暗殺目的だったし、商売女はただの遊びで話なんてしない。何より武国の女は強くて逞しくて強かで、全く泣かないのだ。だからアテナがこんなにめそめそと泣くのには驚いた。そういえばヒサギも泣き虫ヘタレなので工国の人間は気質的にそんな感じなのかもしれない──と、ザードは鼻で笑い、裏庭へやって来ると倒れているアテナの姿を見つけた。
「──っおい!」
心臓が飛び跳ね、息を飲み、駆け寄る。冷汗を額ににじませつつ、動かないアテナの肩を掴み身を起こすと──心地良さそうな寝息を立てて眠っているだけだと分かった。
「……んだよ」
「…スゥ…ムニャ」
ザードは安堵の溜息を吐いた。紛らわしいにもほどがある。むしろ何故こんな裏庭の地べたで眠っているのか?一応、侵入者によって薬か何かで眠らされたのではないかと周囲を見回すが、それらしき気配はしない。何かしら、具体的には吹き矢の可能性も考え全身を触診してみるが、異常はない。
「…というか、細いし柔らかすぎんな、コイツ」
武国の女は戦いの為に鍛えている。なので全身ムキムキで硬く太い。しかし、アテナは力を込めたらすぐに折れてしまいそうな位細い上に柔らかい。ムニムニしている。そして全体的に小さい。体格も小柄で城の兵士達と並ぶと埋もれそうだし、顔なんてザードの手で鷲掴み出来てしまう位小さい。
ザードはそう思いつつ、おもむろにアテナの頬に指を添えた。輪郭をなぞる様に指を動かすが、アテナは起きない。その熟睡具合もどうかと思うが、日々の雑用で疲れているのだろう、という事にした。そんなアテナが起きない事を良いことに、ザードは引き続き頬を撫でる。口元から目尻、指でなぞっていたのがいつの間にか手の平で擦り、いつもは前髪で隠れている火傷部分に触れると皮膚が薄い為か、少々身動ぎした。が、眠ったままだ。
「…危機感ねぇのか、このバカ」
ザードは呆れたようにアテナに顔を近付けて呟いた。
武国の城は屈強な男しかいない。女はアテナ一人だ。無防備な姿を晒していたら、それは食卓の肉のように群がられて喰われてしまう。
今もザードに体を押さえられて、触れてしまいそうなくらい顔を近付けられている。にもかかわらず起きる気配がない。
「噛みついてやろうか」
ザードはそう言い、アテナの唇に触れようとした時
「ザード…さま…」
「──」
「私…ヒルデさん…代わり……何でもしま…ムニャ…」
「……」
アテナはいまだ眠りつつ寝言を言い、ザードに体を寄りかからせた。
「……」
「スゥ…スゥ…」
「…チッ」
ザードは大きく舌打ちをし、穏やかな寝息を立てるアテナを抱き上げると彼女の部屋へと歩き出した。
あまりにも無防備過ぎて興ざめしたのと、胸の底に言葉に出来ない苛つきが沸いたのだ。その苛つきの理由はザードにも分からない。
アテナが軽すぎるから。アテナの寝息が弱すぎるから。アテナの密着する体が柔らかすぎるから。アテナの寝顔が穏やか過ぎるから。アテナが寝言で「ザード様は喜んでくれる」と言っていたから。──アテナの全てが苛々させられた。
ザードはアテナを部屋のベッドに放り込んだ後、彼女が起きるまで隣に座って睨みつけていた。数十分後アテナが起きた後、滅茶苦茶説教したのは言うまでもない。
ザードは舌打ちをしながら廊下を歩いていた。
今の時間、夕食の準備の為に厨房にいるはずなのに姿がなかった。朝の洗剤混入の件もあり、同じことをやらかさないように一応様子を見に行ったのだが…もしやどこぞで落ち込んで泣いているのではないか?とザードは考え苛ついた。
──アテナはよく泣く。
武国の城には女がいないのに加え、正直女という生き物とは縁がない。言い寄って来る女もいたがほぼ全員暗殺目的だったし、商売女はただの遊びで話なんてしない。何より武国の女は強くて逞しくて強かで、全く泣かないのだ。だからアテナがこんなにめそめそと泣くのには驚いた。そういえばヒサギも泣き虫ヘタレなので工国の人間は気質的にそんな感じなのかもしれない──と、ザードは鼻で笑い、裏庭へやって来ると倒れているアテナの姿を見つけた。
「──っおい!」
心臓が飛び跳ね、息を飲み、駆け寄る。冷汗を額ににじませつつ、動かないアテナの肩を掴み身を起こすと──心地良さそうな寝息を立てて眠っているだけだと分かった。
「……んだよ」
「…スゥ…ムニャ」
ザードは安堵の溜息を吐いた。紛らわしいにもほどがある。むしろ何故こんな裏庭の地べたで眠っているのか?一応、侵入者によって薬か何かで眠らされたのではないかと周囲を見回すが、それらしき気配はしない。何かしら、具体的には吹き矢の可能性も考え全身を触診してみるが、異常はない。
「…というか、細いし柔らかすぎんな、コイツ」
武国の女は戦いの為に鍛えている。なので全身ムキムキで硬く太い。しかし、アテナは力を込めたらすぐに折れてしまいそうな位細い上に柔らかい。ムニムニしている。そして全体的に小さい。体格も小柄で城の兵士達と並ぶと埋もれそうだし、顔なんてザードの手で鷲掴み出来てしまう位小さい。
ザードはそう思いつつ、おもむろにアテナの頬に指を添えた。輪郭をなぞる様に指を動かすが、アテナは起きない。その熟睡具合もどうかと思うが、日々の雑用で疲れているのだろう、という事にした。そんなアテナが起きない事を良いことに、ザードは引き続き頬を撫でる。口元から目尻、指でなぞっていたのがいつの間にか手の平で擦り、いつもは前髪で隠れている火傷部分に触れると皮膚が薄い為か、少々身動ぎした。が、眠ったままだ。
「…危機感ねぇのか、このバカ」
ザードは呆れたようにアテナに顔を近付けて呟いた。
武国の城は屈強な男しかいない。女はアテナ一人だ。無防備な姿を晒していたら、それは食卓の肉のように群がられて喰われてしまう。
今もザードに体を押さえられて、触れてしまいそうなくらい顔を近付けられている。にもかかわらず起きる気配がない。
「噛みついてやろうか」
ザードはそう言い、アテナの唇に触れようとした時
「ザード…さま…」
「──」
「私…ヒルデさん…代わり……何でもしま…ムニャ…」
「……」
アテナはいまだ眠りつつ寝言を言い、ザードに体を寄りかからせた。
「……」
「スゥ…スゥ…」
「…チッ」
ザードは大きく舌打ちをし、穏やかな寝息を立てるアテナを抱き上げると彼女の部屋へと歩き出した。
あまりにも無防備過ぎて興ざめしたのと、胸の底に言葉に出来ない苛つきが沸いたのだ。その苛つきの理由はザードにも分からない。
アテナが軽すぎるから。アテナの寝息が弱すぎるから。アテナの密着する体が柔らかすぎるから。アテナの寝顔が穏やか過ぎるから。アテナが寝言で「ザード様は喜んでくれる」と言っていたから。──アテナの全てが苛々させられた。
ザードはアテナを部屋のベッドに放り込んだ後、彼女が起きるまで隣に座って睨みつけていた。数十分後アテナが起きた後、滅茶苦茶説教したのは言うまでもない。
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