欺瞞の剣

刻夜 煌

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時の剣舞

虚無

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虚無ニヒル
 そう言うと、閉ざされた時空間が歪み、割れた。
 「どうしてお前がそこにいるんだよ!」
 剣を構え、立ち向かった。
 「どうしてもこうしても、な。」
 どうして、分からなかったのだろうか。
 「久しぶりだな、澪。」
 「死ねよぉ、クソ兄貴!」
 そう言って切りかかると、ひらりと躱された。
 「久々に会ったのにクソ兄貴とは酷いねぇ。」
 「この親殺しが!」
 また、切りかかった。
 しかし、また躱される。
 「無駄だよ、澪。そんなことでこの俺を殺れると思ったら大間違いだよ!」
 刃をもろに喰らった。
 「うぐっ。」
 でも、余り、深くないようだ。
  「これでも一応手加減してやってるんだぜ?」
 僕は強烈な既視感デジャヴを覚えた。
 
~十年前~
澪の兄は澪の両親を殺した。
 澪の目の前で、言い争っていた父と母の間を割って入ると、包丁でグサリと、一刺し。倒れる父を横目に見て、恐れ戦いた母は腰を抜かした。
 そしてその母も包丁で、殺した。
 「うるさい。」
 その一言が動機。
 そんな兄を僕は空恐ろしく思っていた。
 と、同時に恨んでいた。
 夫婦間のいざこざに過ぎず、いつもと少しだけ違うだけの些細な喧嘩、幸せな日常を赤く染めた彼を怨み続けた。
 警察にまず通報した。
 兄は捕まった。それは呆気なく。
 そして、5年の懲役を全うした後、それ限りで姿を消してしまった。

「巫山戯るなぁ!」
 僕は叫んだ。
 声の限りを尽くして。

 「ははははははははははははははははははははははははぁ!」
 嗤っていた。
 僕は、いや。

 俺は。
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