欺瞞の剣

刻夜 煌

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時の剣舞

兄貴。

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剣同士でぶつかれば疲弊していた俺より、兄貴の方が強いに決まっている。
 俺の剣が弾かれると剣を振り上げるとともに足で兄貴の顔を蹴飛ばした。
 兄貴は想定していなかったのか回避しきれなかった。
 地面に倒れた所で俺はその倒れた兄貴の体に自分の剣を刺した。グサリと、一刺しで。
 心臓を貫いた。
 笑いが止まらなかった。
 でも、
 笑っているのは僕じゃない。
 さっきの時間止め野郎をぶっ殺した、俺だ。
 俺と僕は違う。
 そう思ってないと僕は壊れそうだった。
 トドメに顔に蹴りを入れ踏み付けた、何度も、何度も、何度も。
 「ははははははははははははははははははははははは、死ねばいいんだよ!そのままァ!」
 兄貴は何も語らなかった。
 「断末魔の叫びでも上げたらどうだ!?えぇ?」
 「無反応ディスペル……。」
 何かを言っていた。
 「聞こえねぇなぁ?命乞いなら聞かねぇぜ?」
 「無反応ディスペル!」
 その時、僕のすべての感覚が消失した。
 今度こそ立つことも許されなかった。
 でも、視界だけは残っていた。
 形勢が逆転した。
 そしてそのまま兄貴の持つ剣の刃が僕の身体に吸い込まれて……。
 血が、身体から溢れてきた。
 何故心臓を貫かなかったのだろうか?
 「面白いじゃん、澪。」
 そう言った気がした。
 次に感覚が戻った時には、兄貴はそこには居なかった。
  紅い床と謎の端末だけを残して
 
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