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第四話 ねむり姫
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石川たち捜査一課に連絡が来たのは、朝の早い時間だった。その知らせに石川と陣内の二人は、多摩南警察署に急ぎ向かった。
「どうしてです? なぜ、白河菜々美が服毒自殺しなきゃあならないんですか!」
「わからん。わからんが、自殺とは限らんぞ」そう言って助手席で石川は腕を組んだ。
先日、逮捕された白河菜々美が取り調べ中に死亡したのだ。移送されてすぐの事だった。
「軽い火傷の処置を済ませて、こちらに移送しました。軽食を取らせた後に事情聴取をおこなったのですが……その最中に苦しみだしまして、救命処置をしましたがダメでした」
取り調べをおこなった刑事は戸惑いながら事情を説明した。
「何を食べたんだ?」
「べっ、別に普通のサンドイッチとお茶です。どっちもコンビニで買ったものです」狼狽えながら答えた。
「毒の種類は?」
「青酸系のようですね」もう一人の刑事が答える。
「自殺目的で何か隠し持っていたんでしょうか?」陣内が言うと、焦りながら刑事が反論する。「所持品はこちらで預かっていますし、ボディチェックもしました……」
「下着の中まで見たんじゃあないだろう。隠そうと思えば隠せるんだよ」じろりと石川はその刑事を睨んで言った。
自殺か? 殺しか? 石川には白河菜々美が自殺するとはどうしても思えなかった。ならば殺しか……。誰が何の目的で?
「事情聴取の最中なんですよね、菜々美に何か言われちゃあ都合の悪い事があったんでしょうかね?」となりの陣内が独り言のようにつぶやく。
「このヤマ、もう一度調べ直す必要があるって事ですよね」陣内の視線を受けて、石川は大きくうなずいた。
☆ ☆ ☆
「ふぁ~っ」
お弁当を食べ終わった福岡ヒナタは伸びをしながら大きなあくびをした。
「ヒナタ、今日はいつもに増してたるんでるねえ」一緒にお弁当を食べていた、親友の大分千夏がからかい気味に笑った。
「寝不足? 彼氏と長電話とかしてた?」楽しそうに聞く。
「そんなんじゃあないよ。彼、今忙しいみたいでさ。あんま迷惑かけたくないし……」
「じゃあ何なの?」千夏が何気に聞く。
「ちょっとね。夢見が悪くて……久しぶりだよ、怖い夢見たのは」困った顔でヒナタが答えた。
「たまには、あるんじゃあない?」なんだって顔で千夏は笑って言った。
「ちなみにどんな夢だったの?」話のついでって感じに千夏は聞くと、ヒナタは断片的に覚えてる夢の内容を話し出した。
「目を開けたら車の助手席にいたんだ……運転席には細身の優しそうな男の人がいて、わたしはその人と手をつないでいるの……」
「何それ、良い夢じゃん!」千夏は遠慮なしに突っ込む。
「でもね……その人、死んでいるの、つないだ手が冷たくて、つないだ手を離そうとしても離せなくって……そのまま、わたしも冷たくなっていくみたいで……怖くなって、でもわたし、笑っているの。幸せだって感じているの……可笑しいでしょ? 変だよね……」
強張った顔で千夏の表情をうかがった。
よしよしと千夏はヒナタの背をさすり「また見るようだったら、晶子先生に相談しよう。わたしも一緒に行ってあげるから」そう約束をした。
ヒナタの顔が少しだけ明るくなった。
「どうしてです? なぜ、白河菜々美が服毒自殺しなきゃあならないんですか!」
「わからん。わからんが、自殺とは限らんぞ」そう言って助手席で石川は腕を組んだ。
先日、逮捕された白河菜々美が取り調べ中に死亡したのだ。移送されてすぐの事だった。
「軽い火傷の処置を済ませて、こちらに移送しました。軽食を取らせた後に事情聴取をおこなったのですが……その最中に苦しみだしまして、救命処置をしましたがダメでした」
取り調べをおこなった刑事は戸惑いながら事情を説明した。
「何を食べたんだ?」
「べっ、別に普通のサンドイッチとお茶です。どっちもコンビニで買ったものです」狼狽えながら答えた。
「毒の種類は?」
「青酸系のようですね」もう一人の刑事が答える。
「自殺目的で何か隠し持っていたんでしょうか?」陣内が言うと、焦りながら刑事が反論する。「所持品はこちらで預かっていますし、ボディチェックもしました……」
「下着の中まで見たんじゃあないだろう。隠そうと思えば隠せるんだよ」じろりと石川はその刑事を睨んで言った。
自殺か? 殺しか? 石川には白河菜々美が自殺するとはどうしても思えなかった。ならば殺しか……。誰が何の目的で?
「事情聴取の最中なんですよね、菜々美に何か言われちゃあ都合の悪い事があったんでしょうかね?」となりの陣内が独り言のようにつぶやく。
「このヤマ、もう一度調べ直す必要があるって事ですよね」陣内の視線を受けて、石川は大きくうなずいた。
☆ ☆ ☆
「ふぁ~っ」
お弁当を食べ終わった福岡ヒナタは伸びをしながら大きなあくびをした。
「ヒナタ、今日はいつもに増してたるんでるねえ」一緒にお弁当を食べていた、親友の大分千夏がからかい気味に笑った。
「寝不足? 彼氏と長電話とかしてた?」楽しそうに聞く。
「そんなんじゃあないよ。彼、今忙しいみたいでさ。あんま迷惑かけたくないし……」
「じゃあ何なの?」千夏が何気に聞く。
「ちょっとね。夢見が悪くて……久しぶりだよ、怖い夢見たのは」困った顔でヒナタが答えた。
「たまには、あるんじゃあない?」なんだって顔で千夏は笑って言った。
「ちなみにどんな夢だったの?」話のついでって感じに千夏は聞くと、ヒナタは断片的に覚えてる夢の内容を話し出した。
「目を開けたら車の助手席にいたんだ……運転席には細身の優しそうな男の人がいて、わたしはその人と手をつないでいるの……」
「何それ、良い夢じゃん!」千夏は遠慮なしに突っ込む。
「でもね……その人、死んでいるの、つないだ手が冷たくて、つないだ手を離そうとしても離せなくって……そのまま、わたしも冷たくなっていくみたいで……怖くなって、でもわたし、笑っているの。幸せだって感じているの……可笑しいでしょ? 変だよね……」
強張った顔で千夏の表情をうかがった。
よしよしと千夏はヒナタの背をさすり「また見るようだったら、晶子先生に相談しよう。わたしも一緒に行ってあげるから」そう約束をした。
ヒナタの顔が少しだけ明るくなった。
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