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[第2部] 第8話 夜めぐりの祭り

11 優しい灯り

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 次の家では、るりなみが灯籠とうろうあかりをともした。

 杖先つえさきで、こん、と灯籠をたたくと、わぁん……というひびきとともに光が宿やどった。

 そのやさしい色の光は、ゆめづきが先ほど宿した光とは少しいろいがちがって、あわい雲につつまれた空のような色だった。

兄様にいさまの色みたいです」

 ゆめづきが灯籠の光とるりなみをくらべながら言った。

「みんなの心の色が、うつるのかな?」
「次はどうでしょうね。ちがう気持ちで叩いたら、色も変わるのでしょうか?」

 るりなみは、ゆめづきの言ったことを考えて、思い出した。

「新しい年を祝福しゅくふくするぼうの心でめぐりなさい、って、ゆいりは言っていたね」

 ゆめづきはくすくすと笑い出した。

「兄様は昔っから、ゆいりさんの言うことだけは、しっかりおぼえるのですよね」
「うん!」

 るりなみはうれしくなってうなずいてから、はっとする。

「ほ、ほかのことも、ちゃんと覚えているよ!」
「本当でしょうかね」

 ゆめづきはくすくすと笑い続けていた。

   *   *   *

 次の家、また次の家……。
 るりなみとゆめづきはかわるがわる順番じゅんばんに、家の玄関先げんかんさきの灯籠に光をともしていった。

 すべての光の色合いが、少しずつ違っていた。

 ゆめづきのともす光は、海の中で揺れたり、木々のわかかしておどったりする、優しいの光のようだった。

 るりなみのともす光は、れの日も、雨の日も、あさけのときもゆうれどきも、いつもうつりかわっていく空のさまざまな光り方のようだった。

 二人は、光の色をたしかめるたびに嬉しくなって、もうずかしさもなく、高らかに歌いながら歩いていった。


   *   *   *
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