Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第1幕 企業研修編

第3章 孤独を恐れるな③

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この国では、ほんの少し「違っている」だけで、子供は簡単に“問題児”や“落ちこぼれ”に分類される。

黒板に書かれた文字が読めない。

教師の話を最後まで聞けない。

体育の列に並ぶのが苦手。

あるいは、誰とも目を合わせられない。

ただそれだけの理由で、彼らは「普通」ではないとされる。

だが、その“違い”こそが、まだ誰も見たことのない未来を創るかもしれないとしたら――。

蛍雪高校けいせつこうこうに通う生徒達、侑斗ゆきと、サルヴァトーレ、早馬はやま、そしてはるかが、特別課外研修という名のもとやってきたのは、子供達の早期教育に特化した次世代型の学習支援ベンチャー企業だった。

プログラミングやロボティクス、創造的思考を育てるワークショップを通じて、子供達一人ひとりの「違い」を肯定し、個性を才能へと育てることを理念に掲げるこの企業は、ここ数年、教育界でも注目を集めている。

知的好奇心の芽を摘まずに伸ばし、どの子にも“居場所”と“伸びしろ”を見出みいだす――

それが、この場の大人たちの仕事であり、子供達にとっての救いとなっていた。

そして今、ここにいる四人の高校生達もまた、自分達が「何を選び、どんな未来を作っていくのか」を問われていた。


「このロボット、うまく曲がらない……」


「タッチしたら音が鳴るはずだったのに……なんで?」


「ねえ、お兄ちゃん、変数ってなに?」


子供達の素朴で鋭い疑問が飛び交うなか、侑斗は端末を操作する幼い男の子の隣にしゃがみ込み、画面を覗き込んだ。


「うん、たぶんここ。“ifいふ”の条件の前にスペースが多すぎる。直してみようか」


「あ……ほんとだ! できた、すごい!」


小さな歓声と一緒に、画面の中のキャラクターがくるりと回転し、子供の顔がぱっと輝く。

そのすぐ後ろでは、遥がロボティクスキットを使って小型のアームを動かしていた。

センサーに手をかざすとアームがぎこちなくも的確に動くたび、周囲の子供達が「わあ!」と歓声をあげる。


「こっちは角度の計算。πぱいって知ってる? 覚えなくてもいいから。でも、“すごい”って思ってくれたら、それで十分だよ」


その落ち着いた声は、不思議と子どもたちを惹きつけていた。

一方、早馬は「プログラムを“魔法の呪文”に例える」作戦を取っていた。


「これは“まほうのじゅもん”。ここに『ジャンプ!』って書くと、キャラがぴょーんって飛ぶ! やってみるか?」


「やるーっ!」


と元気な声が返り、彼は笑いながら子供達にタブレットを渡す。

三人とも、教え方もテンポもまったく違う。

けれど不思議と調和が取れていた。

笑い声と歓声のなかに、大人びた空気と真剣さが混じっている。

――それは、「子供の可能性」と向き合うことが、単なる遊びでは済まされない、本物の仕事であることを意味していた。

賑わう子供達の輪の外で、サルヴァトーレだけが一歩引いた位置に立ち、静かにその光景を見つめていた。

やはり来るのではなかったと後悔しながら。

そして――
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