Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第1幕 企業研修編

第4章 日英対抗、枕合戦⑥

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翌朝のことだった――。

薄明かりが障子越しょうじごしに差し込む和室には、静寂せいじゃくとは程遠い光景が広がっていた。

敷布団はめくれ上がり、部屋にあった枕は全て、あらゆる方向に散乱。

押し入れから引っ張り出されたクッションも中から羽根が飛び散り、裂けた毛布までもが戦場のように転がっており、畳の上は見事なまでのカオスと化していた。

昨日の「異文化交流」という名の愚行――

いや、「日英対抗枕合戦」は、どうやら盛大な爪痕つめあとを残したらしい。


「……痛ってぇ」


「……頭が痛い」


混沌を極めた場所に雑魚寝ざこねして、転がってるサルヴァトーレと侑斗ゆきとはそれぞれ呻きながら目を覚ます。

そして、半身を起こした瞬間、互いの視線がぶつかった。


「……ひでぇ有り様だな」


「お前が言うな」


ぷっ――

二人そろって、互いがぼろ雑巾のようになった姿に思わず吹き出した。

サルヴァトーレと侑斗が、再び寝転んで応酬を続ける。


「とんだ性悪お坊しょうわるおぼっちゃまだな、お前」


金髪の少年の一言に、侑斗ゆきとの表情には優等生の色は欠片もない。

年相応の幼さと性格の悪さを滲ませる顔つき――、悪ガキ高校生そのものだった。


「“財閥家ざいばつけ御曹司おんぞうし”の仮面を、この俺が心から喜んで身に着けていると思うか?」


「いや、初対面からお前には俺と同じ臭いがした。穿うがった目で世の中見てる、皮肉屋の目だ」


「奇遇だな。俺も最初から思ってた。顔の綺麗な奴が性格悪いのは、万国共通ばんこくきょうつうの標準装備らしいな」


そして、二人がそんな憎まれ口を叩き合っていると、早馬はやまが部屋のドアを開けた。

 
「おい、侑斗ゆきと。そろそろ時間だぞ……って、なんだよ、この部屋?!
それに、その顔……ブロッサムも……何があった?」


ふっと、侑斗ゆきととサルヴァトーレの二人は起き上がると不敵に笑う。


「別に」


「何もない」


「???」


二人が制服や髪の乱れを整える中、早馬はやまだけが、その状況を理解できないと言った顔で、いつまでも立ち尽くしていた。
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