Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第1幕 企業研修編

第5章 世界を変えてきた者は②

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脱線した会話もあったが、あれこれと四人が意見をぶつけ合った末に、彼らが練り上げた企画は、思いのほか真っ直ぐで、温かいものになった。

――ITと教育をつなぐ、子供達の“得意”を育てるプラットフォーム。

それは、テストの点数や偏差値では測れない力――感覚の鋭さや集中の偏り、発想の跳躍ちょうやく――そういった"普通"から少し外れた“個性”を、誰かの武器に変えるための場所だった。

発達障害の子も、そうでない子も、大人の目線からカテゴライズされて選択するのではなく、自分自身の言葉で“好き”や“得意”を見つけられるように。

そのために、地元企業や大学と連携し、小さな実験と体験の場を、社会の中に作ること。

ただのイベントでは終わらせない。

それは未来の就労に繋がる芽吹きであり、大人の側が変わるきっかけでもあると、彼らは信じていた。

「子供達のための企画」――そう言って始まった話し合いは、気がつけば、“どうすればこの社会が、誰にとっても生きやすくなるか”という問いにまで届いていた。

高校一年生の手による、静かで大胆な革命だった。

そして、発表を控えた前日、発表者である侑斗ゆきととサルヴァトーレは互いのプレゼンにつき会議室で意見を交わしていた。


「“普通”と“特別”を繋ぐ――、それが僕達が、子供の自由な未来に掲げたテーマです。そして――」


侑斗は、資料を背に演説を続けていた。

その様子を、サルヴァトーレは片足を組み、腕を組んでじっと見ていた。


「俺のパートはこんな感じ。どうかな?」


演説が終わった侑斗ゆきとはマイクを置き、サルヴァトーレに近付いた。


「悪くはない。だが冒頭で相手の心を掴むインパクトがない。
これがピッチコンテストで、競合他社との戦いだったら、勝てないだろうな。
俺が審査員なら確実に落とす」


「ふふ、そこまで想定する?」


「当たり前だ。俺はやるなら徹底的だ。演説はもう少し身振り手振りをくわえた方がいい。
冒頭のキャッチフレーズや資料の見出しなども再度調整が必要だ」


そう言って、サルヴァトーレは手元の印刷した資料を見たり、電子端末を操作していた。

さながら、彼はやり手の若きビジネスパーソンだった。

その様子に侑斗ゆきとは目を細めて笑っている。


「乗り気になってくれてよかった。これで俺の評価も上がる。うちの財閥でも教育とITは今注目している分野なんだ」


「ふん……。教育も、所詮は企業の金儲けの道具か」


「そうだね、皮肉なことに――。
ところで、サルヴァは将来何になりたいの?
俺の餌に食いつくということはやっぱり研究医志望?」


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