Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第3幕 男を愚かにさせるものとは

第6章 死へのカウトダウン②

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木造の廊下が、朝の光に照らされていた。

文化祭前のざわめきはまだ校舎の奥にとどまり、この渡り廊下の先には、ただ涼やかな風だけが吹き抜けていく。

はるかは、突き当たりの窓際に立っていた。

背筋を伸ばし、両手で欄干らんかんを軽くつかんで、外をじっと見つめている。

揺れる黒髪の先が頬に触れても、いつの間にか美しくなった彼女は気にした様子はない。

中庭の木々が、秋の色に染まり、葉を風にそよがせている。

――まるで何かを、振り切るように。


「なんで、教えてくれないの?」


その静寂を破るかのようにはるかは問うた。


「え?」


「中等部の卒業式で、私を振った理由のこと。何度聞いても答えてくれなかったじゃない」


「…………」


侑斗ゆきとは、言葉に詰まった。

だが、彼女の問い詰めは容赦なく続く。


「それくらいは、この際教えてよ。魅力がない、お前みたいな色気の欠片もないガリ勉女は女性としては見れない……
ハッキリ理由を言って、傷付けてくれた方が、こっちだって踏ん切りつくのに」


「それは違う……。はるかは魅力的な女性だよ」


「っ……じゃあ、何でよ……?!」


侑斗ゆきとを振り返ったはるの目は少し赤かった。

沈黙が流れる。

侑斗ゆきとは、ついに意を決して自分の気持ちを言葉にした。


「……中等部で早馬はやまはるかに出会ってから本当に楽しかったよ。
ずっとこんな日が続けばなって思ってた。
早馬はやまが中学三年間ずっとはるかを好きだったことも俺は知ってる。
俺にはあんな風に一途に人を想うことは出来ない。
はるかは……俺なんかには勿体もったいないくらい魅力的な女性だと思った。
だから、はるかの気持ちは受け取れなかった」


「…………」


はるか侑斗ゆきとの心の奥底の本音を見透かそうと、その瞳を真剣に見つめていた。


「俺は三人でこれからもずっと一緒にいたかったから。
そして、早馬はやまにはこの事は知られたくなかった。
何より早馬はやまの気持ちも俺からではなく、早馬はやまから直接、はるかに伝えて欲しかった。
でも、黙ってたことが、こんなにもはるかを傷付けてたならごめんね。
それでも――」


侑斗ゆきとは、目を伏せて一呼吸置くと、再び真剣な顔ではるかを見据えた。


「俺は友達の方が大事なんだ。この選択に今も後悔はしていない」


「…………」


その瞬間、はるかの中で怒りとも諦めともつかない感情が浮かんだ。

そして、そんな複雑な気持ちが顔に出ていただろう。


「分かった。そんなに友達ごっこがしたいなら勝手にして」


「……はるか!」


はるかは立ち去ろうする。

それを、侑斗ゆきとが引き留めようとしたその瞬間だった。
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