Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第4幕 無駄なアナログ感は正確に伝わるだろう

第4章 正しきもののために④

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サルヴァトーレは背筋を伸ばし、日本刀を鞘から抜き放つと、そのやいばは、冬の光を淡く反射してきらめいていた。

彼は左手で柄を、右手で刀身の背を添えるように持ち、ゆっくりとその刀を頭上高く、空に向かって掲げた。

刀身が天を指す。

その動きは厳かで、どこか儀式のような静謐さがあった。

しばし無言で静止した後、サルヴァトーレは深く息を吸い、凛とした声で誓いの言葉を紡ぐ――


「My sword is sworn to defend the helpless, uphold the right, and bring no shame upon the name I bear. ―― , In the name of my father, and by the honor of all that I hold dear, I swear to wield this blade only in defense of the innocent and my friends—never in malice, never for pride, but always for what is right.」

――“我が剣は、弱き者を守り、正義を貫き、己の名に恥じぬために抜かれる。――、父の名にかけて、そして自らのすべての誇りにかけて、この剣はただ、弱き者と友を守るためにのみ抜く。
決して悪意や驕りのためでなく、正しきもののために”――


彼のその刀を掲げたその姿は、騎士の誓いにも、武士の忠義にも、どこか似ていた。

刀身を掲げたまま、サルヴァトーレの背筋は少しも揺らがない。

それは、何かの儀式のように――いや、彼自身の人生をかけた“祈り”そのものだった。

暫し彼を観察していた本家の使用人女性は、呆れた顔でこう言った。


「ふん、神頼みかしら……? 日本刀はサーベルじゃないわよ」


「形式だけの伝統より、心が要るんだよ。これだから島国は……開国しても、世界共通語の理解力はその程度か」


彼のポケットにあるスマートフォンは早馬のスマートフォンと通話中状態だ。

こちらはスピーカーモードにしている。


(これは時間稼ぎだ……佐伯、九条、気づけ。
手負いの侑斗ゆきとかばった上、剣はサーベルではなく、日本刀。
形勢はこちらに明らかに不利だ。
やはり、初めから日本の剣術を学んでいる佐伯さえきを連れてくるべきだった)


使用人女性の周りに控えている体格のいい男達数人が、刃物を持って、サルヴァトーレを取り囲むように距離を詰めていく。

しかし、サルヴァトーレも心中で考えていることは、顔には出さない。

相変らず、無表情かつ冷静な表情のまま、一歩も引かずに相手の一分の隙すら見逃さないといった鋭い目つきだ。

そして、後ろからタイミングを見計らうかのように――、
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