勘とノリでやってたら、七戦士に選ばれた

札神 八鬼

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第六章 光の街トルマリン

雲の上のお絵描き会

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沢山のスハープ達が空を漂う中、
俺達はその一部のスハープに乗って移動していた。

目的地に辿り着くにはまだ時間がかかる。

あまりの雲の気持ち良さに、
イーツもすやすやと寝息を立てて眠っている。

着くまで眠るのも良いが、
俺は別のことをしてみたくなった。

「よし、お絵描き大会やるぞ」

唐突の俺の宣言に、
他の三人は眠気眼ねむけまなこをこすりながら、
戸惑いを隠しきれないようだった。

「どうしたんですか?急に」

「いや急にやりたくなってな」

「貴様の提案は本当に突拍子もないな
仮にやるとして、誰が審査をするんだ」

「そんなの俺に決まってるだろ
創造神、スケッチブックを三個作ってくれ」

俺がそう言うと、すぐにポンッという音と共に、
何もない所から三個のスケッチブックが現れる。

これはこの世界の住人ならではの特権で、
創造神が創造出来るものであれば、
声に出して頼めば作ってくれるのだ。

大抵は道具などを作ってもらうのだが、

お金のない孤児などは、食べ物を創造してもらうのだ。

と言っても、味はプロの飲食店に負けてしまうので、

食べるものに困ってない人はあまり使わないのだが…

先程頼めば創造してくれると言ったが、

何でも作ってくれるわけではない。

住人の手に収まらない物や、お金は作ってくれないのだ。

まあ、流石に全員にそれが出来てしまえば、
確実に良からぬことは起こるだろう。

あの創造神も考え無しに何でも創造してくれるわけではないのだ。

勿論この特権は全員使えるので誰も驚かない。

それだけ創造神とは身近な存在なのだ。

「あ、やべ、描くペンがないな」

俺が呟くと、すぐに人数分のペンも現れる。

相変わらずこの特権は便利だな。

ちなみに破壊神の場合は、
対象を破壊することしか出来ないので、
魔法では破壊しきれない対象に対して、
呪文に『破壊神の加護の元命じる』を付け加えると、
普段とは桁違いの威力になる。

この世界の破壊神の特権と言えばそれくらいだ。

さて、気を取り直してお絵描き大会を始めよう。

俺は他の三人にスケッチブックとペンを渡すと、
俺は絵のお題を提供した。

「今回のお題はウオルクスハープ
皆頑張って書いてくれよ」

最初はグレイ以外手を動かさなかったが、
次第に二人の手も動き始めた。

さて、それでは三人の結果を見てみよう。

まずは、ロイドからだ。



ロイドのスハープはとても可愛らしい出来だった。

あいつ、あんな顔で絵心あったんだな…

「ウオルクスハープは、
空を飛ぶことで足が退化し、
体の雲に埋まるくらい短くなっているのが特徴だ
わざわざ見えない足を描く必要はないだろう」

「あ、僕足描いちゃった」

「俺もです
いつも見てても分からないものですね」

「お前達は単に観察不足だな
この世界のモンスターを知るのは大事な事だぞ」

「それじゃあ次はディオンが見せてくれ」

「自信はないけど…上手く描けた方だと思うよ」



「上手いけど…何か向き違くね?」

「上手く描けてたら向きなんて関係ないでしょ」

「まあ、それもそうだけど…」

「ふっふっふっ!
これならディオン先輩に勝てる自信がありますよ!
ハワード様、ご覧ください!
これが俺のウオルクスハープです!」



「……………」

「ハワード様?どうなされました?
はっ!さては、上手すぎて驚きましたね?
俺、絵には自信があるんですよ!」

「………グレイ」

「はい!何でしょうか!」

「優勝はロイド、お前は最下位な」

「どうしてですか!
俺は誰よりも絵が上手いのに!」

本当に、その謎の自信はどこから出るのやら…

どうやらスハープ達は目的地に連れていってくれたようだ。

よっぽどイーツのお菓子が美味しかったのだろう。

無事光の街に着くと、俺はお礼として
スハープ達にお菓子を渡した。

イーツからお菓子の匂いがしたのか、
それともお菓子を作った人物が分かるのか、
沢山のスハープ達がイーツにすり寄ってきて、
しばらくすると空に帰っていった。
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