上 下
1 / 50
プロローグ

1

しおりを挟む

ボクは、スペアらしい。



つまり、将来家を継ぐあの子の代理。



あの子がある程度大きくなるまで、ボクはあの子でいなければいけなかった。



ボクは偽物の跡継ぎとして家に泥を塗らないために、いっぱい勉強をして、常に気高であることを求められていた。


それからあの子は、命を狙われていた。

みんなから見たらあの子であったボクは、これまで何度も死にそうになっていた。怖いことや痛いことをいっぱいされた。



ボクは常に不安や恐怖を抱え、どこか遠くへ逃げてしまいたいと思っていた。


だけど、逃げるわけにはいかなかった。


ボクはあの子のためじゃなくて、唯一ボクを愛してくれるママのために一生懸命だった。



ボクが頑張ればあの子も無事でいられる。あの子が笑えば、ママも笑う。



ボクは、ママの笑顔を守るために、あの子を守ろうと、なんとか自分を奮い立たせて生きていた。


でも、もう無理かもしれない。


だってママは、ボクのことを忘れてしまったから、ボクは、生きる意味を失ってしまった。











ねぇ、だから、




だから、もう、ボクを許して、





ボクを解放して、


ボクを殺して、





ボクのことを気が狂うほど憎んでいるんでしょ、


おとうさん。

しおりを挟む

処理中です...