ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する

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「じゃあ、僕はもう帰るね」


僕は優斗を見ずに言って、アプリを開く。


何人かのママから会いたいというメッセージが来ていた。


次へ気持ちを切り替えようとしている僕を、何故か優斗が引き止めた。



「いや、ちょっと待ってくださいよ。そんなにあっさりと。母とは遊びだったんですか!?」



優斗は納得できないと、身体を苛立たしげに揺らす。


優斗の望み通りにしてやるって言っているのに、なんでこんなに動揺しているのか。


優斗が結局なにを望んでいるのか、僕にはわからなかった。



「遊びだよ。お互い割り切って遊んでた。だからあっさり関係を切れる。本当の親子だったらこんなふうに切れないよね。君は早く家に帰って親孝行してあげればいい。僕との問題は解決したんだから、次の問題が起こらないように気をつけなよ」


「ちょ、待ってください。て、手切れ金。今からお金を下ろしてきます」


「手切れ金なんていらないからね」


「このままじゃ気が済みません」


優斗は言ってカフェを飛び出した。


「めんどうな子だな」



優斗は僕よりも年下なのに、頑固親父みたいなこだわりをみせる。



お金じゃないんだと、優斗に言う暇なんてなかった。



さっさと借金を返してしまいたい。だけど、借金のためだけにママ活をしているわけじゃない。


僕が優斗の事情をよく知らないように、優斗も僕の事情を理解することはない。



ここは、僕が大人の対応をするべきか。


手切れ金を払うことで気が済むなら勝手にすればいいと、僕は優斗の帰りを待つことにした。




優斗はよっぽど慌てていたのか、財布以外のすべての荷物を置いて出て行ってしまった。


ちょっと前から机の上にある優斗のスマホが震えている。


関係ないと思いながら、なんとなくディスプレイを見てしまうと、信じられない人物の名前が目に入った。




なんで。




その名前を見て、一気に身体中の血が騒めきだす。


今度は僕が動揺する番だった。




「お待たせしました」


しばらくして、優斗は息を切らして帰ってきた。


「これ、足りるかわかりませんけど、今の僕の出せる精一杯です。受け取ってください」


分厚い封筒を差し出されて、僕は手を伸ばす。


普通に受け取ればいいんだけど、自分の手が震えていることに気づいた。


それでもなんとか平静を取り繕って、受け取り切る。



「なんだかさっきよりも顔色が悪い気がします。大丈夫ですか?」



優斗は僕の震えよりも顔色のほうが気になったらしい。


僕は全然大丈夫じゃない。


そんなこと、優斗に言えるわけがない。


僕は小さく深呼吸をして自分を落ち着かせた。



「問題無いよ。それより、これで僕と君たち親子の関係は終わりだからね。僕は二度と美奈ママに連絡しない、だから君も、美奈ママも二度と連絡してこないでね。絶対だよ」



僕と美奈ママの関係を切りたがっていた優斗。


少し前までの僕にとって切れても切れなくてもどうでも良い関係だった。


でも今は、僕こそ完全に関係を切ることを望んでいる。






変なところで繋がりたくない。






今となっては、あの子も僕のことを覚えていない。



二度と、思い出して欲しくない。



それは僕のためで、あの子のためでもある。




だから僕らは、極力繋がるべきじゃないんだと、お金の入った封筒を強く握りしめた。





優斗は不思議そうにしていたけど、それ以上なにかを言うことはなかった。


カフェを出た優斗の姿を目で追うと、誰かに電話をかけているのがわかった。




優斗とあの子は友達で、2人はこれから会う約束をしていたのだろうか。




あの子が近くにいたらと考えるだけで、僕は、死にたくなった。




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