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現在編7
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イワンが泣いていた。
ごめんなさい、ママと言って。
母親に暴力を振るわれていたことを思い出してしまったらしい。
スタッフの人がイワンを落ち着かせようと耳元で何かを囁いていた。
僕はイワンに近づけなかった。
何故か、過去の記憶が、フラッシュバックしてしまった。
拉致された時のことではない。
もっと昔、ママと一緒に暮らしていた時のこと。
ボクもイワンと同じように、泣きながら必死に謝っていた。
あの時、ママは、ボクを叩いた。
理由はあまり覚えていないけれど、ボクが何か悪いことをしたから叩かれたはすだ。
でもその後は、ママがボクに謝っていた。
ボクがそうしたように、泣きながら、必死に、謝っていた。
「高宮に行くのは止めません。でも、直ぐに行かせるわけにはいきません。高宮樹里の行動はアンリを誘き寄せるための罠である可能性もあります。菫と連絡を取り合ってから準備をするので少し待っていてください」
気持ちは焦るが、勢いだけで行動するわけにはいかない。
樹里は死んでいない。ママも死なない。
まだ時間はある。
今の僕にできることはちゃんと治療を受けることと、樹里に会ってどうするのかを考えておくことだった。
「僕は、行かなきゃいけない。でも、ただ行くだけじゃ駄目だよね」
「そうですね。考え無しに出向いた結果、高宮樹里に捕まれば確実に監禁されるはずです。一人だとやはり心配なので、護衛を数人つけますか?」
「状況がいまいちわからないから、他に情報が入ってから決めたい」
「わかりました」
「ねぇ、仮に僕がまた樹里に捕まったら、助けに来てくれる?」
「アンリが望むのなら、どこにだって助けに行きます」
「ジェイは、完璧だね」
完璧過ぎて、ちょっと怖い。
僕が言うと、ジェイは困ったように眉を下げた。
「完璧な人間なんていませんよ」
それはそうだと頷く。
完璧なはずではないとわかっているからこそ、怖いと思っているのだ。
「アンリの前ではいい子にしているけれど、本当の私は、凄く醜い。アンリに嫌われるのが嫌だから、結構無理をしているんですよ」
悪戯っぽく笑うジェイは、どこまで本気なのかわからない。
ジェイは怖い。その優しさが怖い。菫さんがしたように急に突き放されたとしたら、それこそもう、僕は生きていけないだろうと思う。
「今の僕には、本当のジェイを受け入れる余裕はない。でも、いつかはって、思ってる。だから僕を、見失わないでね」
ジェイは返事をする代わりに、僕の瞼にキスを落とした。
僕はやっぱり恐怖を感じているのか、胸が痛くなった。
「ジェイだったら、樹里のために何をしてあげる?」
「鼻で笑ってあげます」
「本気で言ってる?」
「私は、嫌いな人間は徹底的に嫌うタイプなんです」
「……マジか。でも、鼻で笑ったところで何も解決しないでしょ」
「そうですね。結局、樹里に会うこと自体が無意味なんですよ」
「なんて本末転倒な」
「樹里じゃないんです。おそらくキーパーソンは、母親ですよ」
「……ママ?」
「始まりは、そこだと思うので」
ママを死なせたくない。
だから樹里に、会いに行く。
でも、何故か今の僕は、ママに会いたいとは全く思っていなかった。
ごめんなさい、ママと言って。
母親に暴力を振るわれていたことを思い出してしまったらしい。
スタッフの人がイワンを落ち着かせようと耳元で何かを囁いていた。
僕はイワンに近づけなかった。
何故か、過去の記憶が、フラッシュバックしてしまった。
拉致された時のことではない。
もっと昔、ママと一緒に暮らしていた時のこと。
ボクもイワンと同じように、泣きながら必死に謝っていた。
あの時、ママは、ボクを叩いた。
理由はあまり覚えていないけれど、ボクが何か悪いことをしたから叩かれたはすだ。
でもその後は、ママがボクに謝っていた。
ボクがそうしたように、泣きながら、必死に、謝っていた。
「高宮に行くのは止めません。でも、直ぐに行かせるわけにはいきません。高宮樹里の行動はアンリを誘き寄せるための罠である可能性もあります。菫と連絡を取り合ってから準備をするので少し待っていてください」
気持ちは焦るが、勢いだけで行動するわけにはいかない。
樹里は死んでいない。ママも死なない。
まだ時間はある。
今の僕にできることはちゃんと治療を受けることと、樹里に会ってどうするのかを考えておくことだった。
「僕は、行かなきゃいけない。でも、ただ行くだけじゃ駄目だよね」
「そうですね。考え無しに出向いた結果、高宮樹里に捕まれば確実に監禁されるはずです。一人だとやはり心配なので、護衛を数人つけますか?」
「状況がいまいちわからないから、他に情報が入ってから決めたい」
「わかりました」
「ねぇ、仮に僕がまた樹里に捕まったら、助けに来てくれる?」
「アンリが望むのなら、どこにだって助けに行きます」
「ジェイは、完璧だね」
完璧過ぎて、ちょっと怖い。
僕が言うと、ジェイは困ったように眉を下げた。
「完璧な人間なんていませんよ」
それはそうだと頷く。
完璧なはずではないとわかっているからこそ、怖いと思っているのだ。
「アンリの前ではいい子にしているけれど、本当の私は、凄く醜い。アンリに嫌われるのが嫌だから、結構無理をしているんですよ」
悪戯っぽく笑うジェイは、どこまで本気なのかわからない。
ジェイは怖い。その優しさが怖い。菫さんがしたように急に突き放されたとしたら、それこそもう、僕は生きていけないだろうと思う。
「今の僕には、本当のジェイを受け入れる余裕はない。でも、いつかはって、思ってる。だから僕を、見失わないでね」
ジェイは返事をする代わりに、僕の瞼にキスを落とした。
僕はやっぱり恐怖を感じているのか、胸が痛くなった。
「ジェイだったら、樹里のために何をしてあげる?」
「鼻で笑ってあげます」
「本気で言ってる?」
「私は、嫌いな人間は徹底的に嫌うタイプなんです」
「……マジか。でも、鼻で笑ったところで何も解決しないでしょ」
「そうですね。結局、樹里に会うこと自体が無意味なんですよ」
「なんて本末転倒な」
「樹里じゃないんです。おそらくキーパーソンは、母親ですよ」
「……ママ?」
「始まりは、そこだと思うので」
ママを死なせたくない。
だから樹里に、会いに行く。
でも、何故か今の僕は、ママに会いたいとは全く思っていなかった。
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