断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第64話

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国王の短剣が止まった瞬間、空の巨大モニターが――勝手に“引いた”。

王の顔だけじゃない。王都の空、地方の広場、港、畑。画面が自動で分割され、全国の「いま」が並べられる。

私は声が出ない。息だけで、配信の枠に文字を落とす。

喉の首輪が「ちり…」と鳴って、喉の内側を刃が撫でた。

いま心拍が跳ねたら、終わる。だから私は、ただ見る。

国王の右腕の刻印が、赤黒く脈打った。

その脈が、合図みたいに全国へ伝播していく。

水晶灯の前の人々が、同時に胸を押さえた。

次の瞬間、空に新しい字幕が整列した。

【教皇 広域聖務 開始】

【対象:国民全員】

【処理名:魂の回収】

「……回収?」

私の喉の奥が冷えた。首輪がまた「ちり…」。

怖い、と思っただけで刃が動く。だから私は、怖がらないふりをする。

映像の端に、教皇の“優しい”顔が出た。

声は耳じゃなく、骨の内側に直接響く。

『迷える民よ。秩序へ戻りなさい』

同時に、コメント欄が――変わった。

さっきまでの怒りや疑いが、薄い祈りの文言で埋め尽くされる。

同一文体。同じ語尾。同じ間隔。

サクラじゃない。もっと悪質だ。祈りそのものを量産して、流し込んでる。

祈りは精霊力になる。

精霊力は現実を動かす。

そして、教皇の狙いは逆だ。祈りを燃料にして、魂を“吸い取る”。

画面分割の全国映像で、異変が見える。

畑の男が膝から崩れ、目の焦点が抜ける。

港の女が笑ったまま固まり、次の瞬間、息だけが抜けた。

広場の子どもが、泣く前に止まる。

魂が、薄く光って、胸から引き抜かれていく。

透明な糸みたいに上へ伸び、空のどこかへ吸い込まれる。

私は理解した。これは“広域呪詛”。国民全員から、魂を回収する装置。

教皇の声が、さらに深く刺さる。

『多数派が騒ぐなら、多数派ごと静かにすればいい』

『祈りは私が集める。魂は私が管理する』

空に表示が走った。

【信仰吸収 拡大】

【同時接続数:全国】

【回収率:開始】

私の心拍が跳ねそうになって、首輪が「ちり…っ」と強く鳴った。

喉の内側の刃が、今までより近い。

焦るな。焦ったら死ぬ。

でも、焦らなきゃ弟が消える。焦ったら私が消える。最悪の二択。

私は息だけで、テロップを落とした。

【教皇の回収は“接続”で起きてる】

【水晶灯=回線=魂の導管】

【今、全国が“ログイン”させられてる】

教皇は配信を上書きできる。

だけど、精霊契約は偽造できない。

そして王命放送は、もう王家のものじゃない。“見ている人たち”のもの。

なら、逆にする。見せない。繋げない。触らせない。

前世の記憶が、最悪の場面で役に立つ。

炎上を止める時、私がやったこと。

コメント欄の毒を遮断する時、私がやったこと。

――全ユーザーブロック。

全員をブロックして、まず“入口”を閉める。

私は息を整えた。

首輪が鳴らない速度で、ゆっくり吸って、ゆっくり吐く。

禁忌の精霊石が、私の意図を拾う。空が勝手に震えた。

【機能提案:全ユーザーブロック】

【権限:多数派】

【注意:視聴・接続の遮断を伴います】

全国のコメントが一斉に止まった。

いや、止めたんじゃない。

“入ってこなくなった”。教皇の祈りの量産文も、流れの途中で途切れる。

画面分割の全国映像で、魂の糸が――揺らいだ。

引っ張っていた力が弱まり、糸が戻り始める。

胸へ、身体へ、持ち主へ。

教皇の“優しい”顔が、初めて歪んだ。

『接続を、切るな』

骨の内側に圧が来る。跪け、と。

でも、いまは違う。支持率80%の拒否は、圧を拒む。

国王の右腕の刻印が、狂ったように脈打った。

赤黒い光が、全国の水晶灯へ走る。

回線を無理やり繋ぎ直そうとしてる。

私は息で、最後の一文を落とした。

【ブロック対象:教皇/回収系命令/祈り量産クラスタ】

【全ユーザーブロック=“魂の接続拒否”】【実行】

空が、無音になった。

全国の水晶灯が、一斉に暗転する。

視聴者を守るための遮断なのに、私の枠まで落ちかける。

――その瞬間、地下第三層の巨大モニターだけが、勝手に点いた。

【例外接続:王宮地下・黒礼拝堂】

【回収元:ここ】

【最優先対象:リオン】

【投票確定まで 残り:00:59】

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