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第一話 悔しい!!
しおりを挟む悔しさ。
幼い頃、かけっこの敵わない相手に芽生
えたのが最初のことだったろうか。
それとも、クラスの中でどう頑張っても成績の敵わない相手に抱いたのが、本当の悔しさだっただろうか。
いずれにしても、今感じているのも確かに悔しさだ。
同期の瀧田は、いつも私に得意げにこう言う。
「青木は、一生俺には敵わない」
その顔は、いつも満面の笑みで片方のロ
角を上げているものだから、あいつの白い歯がほんの少し見えていたりする。
負けず嫌いな性格の私としては、瀧田の
笑みには毎回イラっとさせられている。
「瀧田さんって、爽やかで素敵ですよねっ!!」
これは、今年の新入社員女子の言葉だ。
後輩女子に瀧田の笑顔は、そんな風に映
っているらしい………
私にはどう見繕っても、嫌味臭い薄ら笑いにしか見えないのだけれど!!??
だいたい、男のくせに顔が白いし、肌が綺麗過ぎると言えば、今時だろ?と顎を突き出し、自分よりも背の低い私を見下ろすその態度が気に入らない。
瀧田の身長がやたら高いのは仕方のない
ことだけれど、百八十センチもある体躯で上から見下ろされる私の身にもなってもらいたい。
ちなみに、私の身長は百六十センチピッタリだ。高くもなく、低くもなく。瀧田がそばにさえいなければ、ごく普通の身長だと思っている。
いいや、むしろ日本人女性の中なら高いのではないだろうか。
なのに、奴が隣に来ただけで、私はまるで上から押さえつけられているような圧迫感を覚えてしまう。
息苦しいというか、重苦しいというか。
とにかく、私はなるべく瀧田の近くにはいかないようにしているというのに、奴はいちいち傍にやって来ては自慢げな顔を向けてくる。
私が彼に劣っていると思っている事を見透かしたみたいに。
先日などは、デザインした案件が商品化
されたと、その現品を持ってわざわざ私の目の前に突き出し、あの白い歯を僅かにのぞかせる笑みを見せた。
どう?俺って凄いでしょ??とばかりにまたも顎を突き出し、褒めろと言うような顔つきをしてきた。
なんて図々しいことか。
そうかと思えば、新入社員から慕われているのを、よくあからさまに見せつけにやって来る。
ぞろぞろと引き連れた新入社員や私より年下の社員と共に、瀧田は得意そうな顔つきで私へと言った。
「青木も、どう??」
一緒にランチしてやってもいいけど?くらいの上から目線で、またも瀧田は私を見下ろしてくる。
その態度は、とにかく腹立たしくてならない。
先日行われた新商品のプレゼンだって、
同期で残ったのは私と瀧田だった。
最終的な一対一の戦いに敗れた理由が
なんなのか。
私の発案した商品に、何かしら
の魅力が足りなかったのか。いや、プレ
ゼン能力が劣っていたから??
まさか、女だからという理由なら許せはしないが……
私はなるべくその考えを捨て、初めの二つに改善点を見出そうとした。
そんな私に向かって、瀧田は偉そうな態度をとる。
「ま~次回も頑張れよ」
満面の笑みでとんとんと肩を叩かれた私
が、どれほど悔しい思いに駆られたことか彼は気づいているのだろうか。
わざとな気もしてきてそこもムカつくのだ。
ただ言い返せないのは、そのとんとんとたたく肩に優しさが少しでもあると思ってしまっているからなのだろう。
そんなやつじゃないのに。。
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