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第三話 流される
しおりを挟む翌日私は気合いを入れ直しはやめの出社した。
彼に勝つため、張り切ってしまったのか今日ははやく会社に行きたすぎて朝ごはんを食べ忘れてしまった。
食べ忘れるってどういうこと?と私は自身にツッコミは入れてある。
そしてとりあえず何か飲もうと思ってカップに入れたコーヒーを眺めていた。そこでボーッとして休憩室で座っていた所に聞き覚えのある声をかけられた。
「どうした……?具合でも悪いのか?」
この声は……瀧田…?
こんな優しい言い方など、今までかつて聞いたことがない。
いつものあの挑戦的でいて、得意げな口調はどうしたというのだ。
私は、両腕を枕にして術せていた顔をむ
りと上げた。
すぐそばには、やはりあの瀧田が、いつにもない心配そうな顔をして私を見下ろしていた。
どんな時でも、見下ろすのは一緒だな皮肉に思っていると、突然すっとしゃがみ
こんだ瀧田と視線が同じになった。
互いの顔の位置が平衡になり近づいたこ
とで、動揺した私の目が大きく見開かれる。
私が今までにない距離感に心を乱していると、間髪入れず、大沢のゴツく大きな手がこちらへと伸びてきた。
なにが始まるのか、少しも予想だにしていない私のおでこへ、その手が講踏うことなく伸びて触れた。
な、なにが……起きた……?
脳内が働きだす前に、体の方が素早く反
応を示した。
おでこに触れたままの瀧田の手に、なかったはずの?熱が一気に上がっていく。
「……なっ…!!」
まともな声にも言葉にもなりはしない。あたふたする感情を表面上は必死に押し殺しているけれど、心は動揺でパニックだ。
「青木、お前微熱あるんじゃない??」
ほぼ平衡に合ったままの視線は逸らせず、私の心臓が暴れ出す。
「青木は、いつも頑張りすぎんだよ。たまには、息抜きすればいいのに」
あの瀧田が私に優しい。
なんだこの気遣いは…
目の前にいるこの男は一体誰なのだろう。
いや、というか私熱あるの??
なくない??まぁ、朝ごはんは抜いたけども!
微熱と言われて意識したせいなのか、はたまた何か違うもののせいなのかバクバクと騒がしい心音が、思考を鈍らせる。
「い……、息抜き?」
あまりの優しい対応に、不覚にも言い返すことも熱があると言われた事に対しても反応出来ず、気の抜けた声でどうでもいい事を訊ね返してしまった。
「いつもがむしゃらに頑張ってて、上も認めさせてるし。青木は、すげな一って思ってるけどさ。そんなんだと、いつか倒れちゃうんじゃないかって、俺、本気で心配してんだけどな」
そう言って笑った顔は、いつもの皮肉めいた片方の口角を上げる笑みじゃなくて。見惚れてしまうくらい、柔らかくて、優しい笑みだった。
ほんとに心配してくれてると性格がひん曲がっている私ですら理解できる顔だった。
だから、つい………
「……心配してくれて、ありがと………」
しおらしい言葉や態度なんて、私には到底似合うはずもなくて。
だから、口にしてしまった途端、恥ずかしさに目肢が起こりそうになった。
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