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第三章 暴風のコロッセオ
第159話 ファラの真の実力
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模擬戦ということで、ホムもファラも訓練用の武器が選べることになった。
レギオンの武器はハルバードなどの斧が主流だが、武器庫には遠距離戦用に鋼鉄の弾丸を発射する魔導砲なども置かれている。
武侠宴舞・カナルフォード杯が行われている影響もあるだろうが、かなり本格的なものが揃っている。
「魔導砲は、火器取り扱いの訓練が済むまで除外だが、それ以外は自由に選んでくれ」
タヌタヌ先生の許可を得て、ファラは短めの小剣を二本、ホムは打撃用のナックルを選択した。
「……マスター」
「なんだい、ホム?」
いよいよ搭乗という段階になり、ホムが改まって僕に切り出した。
「この模擬戦、ファラ様に本気を出して頂きたいと考えております。ご許可をいただけますか?」
ああ、ホムは多分自分の実力を知りたいと本気で思っているのだろうな。
「適性値だけではわからないこともあるだろうね。ファラが良いなら、僕は構わないよ」
「怪我しちゃっても、アルフェが治してあげるからね」
「「リリルルも協力しよう」」
傍にいたアルフェとリリルルが手を繋いで協力を申し出てくれる。いざとなれば、マチルダ先生がどうにかしてくれるだろうけれど、その申し出は心強い。
「にゃはっ! それなら、あたしも本気出して大丈夫そうだな」
「はい。ファラ様の『真の実力』をお見せください。隠し立てはなしです」
直接言葉にはしなかったが、ホムがほのめかしているのはファラの魔眼のことだ。ファラはごく親しい一部のクラスメイトにしか魔眼のことを話していないので、その言い方にホムの配慮を感じた。
「ファラならきっと大丈夫だろうけど、一発でも攻撃が当たったらそこで終了だ。いいね?」
「心得ました」
念のため模擬戦の終了条件を呈示すると、ホムが嬉しそうに頷いた。
* * *
模擬戦の許可を得てから、程なくしてホムとファラはそれぞれ割り当てられたレギオンに乗り込み、演舞場へと移動を開始する。
「にゃはっ、まさかこんなに早く実現するとはな」
レギオンに取り付けられた拡声器を通じて、ファラの楽しげな声が聞こえてくる。
映像盤にはマチルダ先生の投影魔法によってホムとファラの姿が映し出され、デモンストレーションという体でA組を除く多くの生徒らが、二人の模擬戦を見守ることになった。
「ファラ様は、機兵での模擬戦の機会を伺っていらしたのですか?」
「まあな。父さんの機体があるだろ。地元で結構乗らせてもらってたんだが、対人戦なんて素人にゃ無理でさ」
なるほど。確かに機体に乗ることは出来たとしても、『戦う』というのはこうした機会でもなければ不可能だろうな。僕みたいに女神に襲われるような経験なんて、普通の人には無縁だろうし。
「……そういうわけだから、巻き込んじまって悪ぃな」
「いいえ。わたくしも、今後のために自分の力を見極めたいと思っておりましたので」
ホムが即答すると、ファラの快活な笑い声が演習場に響き渡った。
「にゃははっ! あたしたち、気が合うな!」
「ええ」
受け答えしているホムの声も楽しそうだ。戦争が悲惨なものであることは、前世の僕は身に染みてわかっているけれど、機兵戦を娯楽にまで昇華できている今の時代はいいものだな。強い軍事力は他国への牽制にもなるだろうし、女神たちがそこまで考えていたとは考え難いが、こうした平和はずっと享受していたいものだ。
現代の情勢を鑑みるに、それこそ人魔大戦の時のように魔族からの襲撃でもない限りは簡単には崩せないはずだけれど。
レギオンの武器はハルバードなどの斧が主流だが、武器庫には遠距離戦用に鋼鉄の弾丸を発射する魔導砲なども置かれている。
武侠宴舞・カナルフォード杯が行われている影響もあるだろうが、かなり本格的なものが揃っている。
「魔導砲は、火器取り扱いの訓練が済むまで除外だが、それ以外は自由に選んでくれ」
タヌタヌ先生の許可を得て、ファラは短めの小剣を二本、ホムは打撃用のナックルを選択した。
「……マスター」
「なんだい、ホム?」
いよいよ搭乗という段階になり、ホムが改まって僕に切り出した。
「この模擬戦、ファラ様に本気を出して頂きたいと考えております。ご許可をいただけますか?」
ああ、ホムは多分自分の実力を知りたいと本気で思っているのだろうな。
「適性値だけではわからないこともあるだろうね。ファラが良いなら、僕は構わないよ」
「怪我しちゃっても、アルフェが治してあげるからね」
「「リリルルも協力しよう」」
傍にいたアルフェとリリルルが手を繋いで協力を申し出てくれる。いざとなれば、マチルダ先生がどうにかしてくれるだろうけれど、その申し出は心強い。
「にゃはっ! それなら、あたしも本気出して大丈夫そうだな」
「はい。ファラ様の『真の実力』をお見せください。隠し立てはなしです」
直接言葉にはしなかったが、ホムがほのめかしているのはファラの魔眼のことだ。ファラはごく親しい一部のクラスメイトにしか魔眼のことを話していないので、その言い方にホムの配慮を感じた。
「ファラならきっと大丈夫だろうけど、一発でも攻撃が当たったらそこで終了だ。いいね?」
「心得ました」
念のため模擬戦の終了条件を呈示すると、ホムが嬉しそうに頷いた。
* * *
模擬戦の許可を得てから、程なくしてホムとファラはそれぞれ割り当てられたレギオンに乗り込み、演舞場へと移動を開始する。
「にゃはっ、まさかこんなに早く実現するとはな」
レギオンに取り付けられた拡声器を通じて、ファラの楽しげな声が聞こえてくる。
映像盤にはマチルダ先生の投影魔法によってホムとファラの姿が映し出され、デモンストレーションという体でA組を除く多くの生徒らが、二人の模擬戦を見守ることになった。
「ファラ様は、機兵での模擬戦の機会を伺っていらしたのですか?」
「まあな。父さんの機体があるだろ。地元で結構乗らせてもらってたんだが、対人戦なんて素人にゃ無理でさ」
なるほど。確かに機体に乗ることは出来たとしても、『戦う』というのはこうした機会でもなければ不可能だろうな。僕みたいに女神に襲われるような経験なんて、普通の人には無縁だろうし。
「……そういうわけだから、巻き込んじまって悪ぃな」
「いいえ。わたくしも、今後のために自分の力を見極めたいと思っておりましたので」
ホムが即答すると、ファラの快活な笑い声が演習場に響き渡った。
「にゃははっ! あたしたち、気が合うな!」
「ええ」
受け答えしているホムの声も楽しそうだ。戦争が悲惨なものであることは、前世の僕は身に染みてわかっているけれど、機兵戦を娯楽にまで昇華できている今の時代はいいものだな。強い軍事力は他国への牽制にもなるだろうし、女神たちがそこまで考えていたとは考え難いが、こうした平和はずっと享受していたいものだ。
現代の情勢を鑑みるに、それこそ人魔大戦の時のように魔族からの襲撃でもない限りは簡単には崩せないはずだけれど。
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