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第三章 暴風のコロッセオ
第236話 魔導士の戦い
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-----アルフェ視点------
リーフの詠唱の声が聞こえた。
次の瞬間、地面が揺れて金色のエーテルが氷の壁を構築し始めた。フロストディバイドは、エーテル過剰生成症候群のリーフが使えば強力な氷魔法になる。この広い大闘技場を四つに分断出来るほどに。
「へぇ~。氷の魔法で闘技場の中に小さいリングを作って一対一の状況を作ったっちゅーわけだ! さっすが、師匠♪」
これでワタシたちはそれぞれ一対一の状況に持ち込まれた。つまり、リーフがこの状況を作ってくれたということは、ワタシがメルア先輩に勝てると信じてくれたということ。
「……絶対に負けない」
リーフの期待に応えたい。強くなったワタシを見てほしい。だから、ワタシは相手が誰であれ、負けるわけにはいかない。
「メルア先輩、行きますよ!」
氷の壁の構築が止まるのを見届け、声を張り上げる。
「まったく、アルフェちゃんは律儀だよねぇ。じゃあ、うちも遠慮なく行くよ!」
メルア先輩が無詠唱で土魔法を放ち、石礫の雨を降らせる。ひとつひとつの攻撃のダメージは大したことはない。多分これは目眩ましだ。
ワタシは無詠唱で風魔法を放ち、石礫の軌道を逸らす。間髪入れずに頭上に石槍が具現する兆候があった。
すかさずワタシはウォーターランスを発動させ、それを迎撃する。
「凄まじい攻防! 無詠唱の魔法の撃ち合いのため、発動するまで一瞬たりとも気が抜けなぁああああいいぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ジョニーさんの実況の合間にもワタシたちは魔法を撃ち合っている。浄眼を持つ者同士の魔法の戦いは、ほぼ互角だ。メルア先輩の両眼の浄眼に対して、片眼だけのワタシは、半分だけ流れるエルフの血によってその魔力が底上げされている。
「ところで、そのローブって、発動する魔法を隠すため?」
メルア先輩の質問にワタシは答えない。これはワタシの切り札だから。
「まっ、言えないよねぇ。でも、魔導杖から出す一瞬でうちはどんな魔法か見切れちゃうから意味ないんだけどさ」
メルア先輩がそう言いながら石礫を石塊に変え、そこに石槍を合わせてくる。宙に浮かぶそれらに対し、ワタシは雷魔法を選択した。
「天雷よ、紫電の槍となり、敵を穿て。ライトニング・ファランクス!」
魔導杖から同心円状に雷を拡散させ、石槍を迎撃する。でも、メルア先輩の攻撃はそれで終わりではなかった。
「屹立せよ、我は城塞にして、敵を砕く鋼の勇者なり。アイアンクラッド!」
メルア先輩のアルケーミアの前に巨大な四枚の鋼鉄板が出現する。ワタシの放った雷魔法はその板に吸い込まれるように迸る。
「うわっ、すごい威力! こんなライトニング・ファランクス見たことないよ。やっぱ、うちも師匠の魔導杖が欲しくなっちゃう~!」
高出力の雷魔法であることを認めてもなお、メルア先輩の口調には余裕がある。なぜなら、地面の上に出現させた鋼鉄板のせいで、雷魔法が全て地面に逃れて無効化されてしまったからだ。
「まぁ、威力があっても魔法って結局相性なんだよね。ちゅーことで、はい、お返しっと」
死角となった鋼鉄板の向こうからメルア先輩がウィンドカッターを飛ばしてくる。ワタシはレムレスの噴射推進装置を噴かせて、咄嗟にその軌道から逃れた。
「でさ、作った素材を無駄にしないのがうちの拘りなんだよね。磁力操作!」
メルア先輩が磁力魔法を発動させる。磁力操作で四枚の鋼鉄板が宙に浮き上がった。
「からのぉ~! 鋼の身体よ、武威を示せ。武装錬成!」
この魔法はホムちゃんが得意としている武装錬成だ。メルア先輩が防御に転じたとは思えず、ワタシはその変形を見守る。
宙に浮かんだ鋼鉄の板はぐにゃぐにゃと形を変えて丸まったかと思うと、槍と盾を持った四体の騎士の像に変形した。上半身だけではあるけれど、独立して動いているのがわかる。
「合体魔法、磁力騎士団ってね♪」
凄いセンスだと素直に思った。最初の魔法を発動した時から、こうすることを想定していたことがよくわかる。メルア先輩は、複数の魔法を併用して全く異なる魔法現象を起こして見せたのだ。
「凄いです、メルア先輩!」
「褒めてもなんにもでないよ~! メルアちゃん親衛隊、突撃~!」
メルア先輩の指令で磁力騎士団が迫ってくる。元が鋼鉄の板だとわかっているので、もう一度溶かせば消えるはずだ。
ワタシは鋼鉄を溶かすため、炎魔法を無詠唱で投射する。けれど、メルア先輩はそれを予測していたのか、無詠唱のウォーター・シューターで見事に相殺した。
「さぁて、どうする? アルフェちゃん」
磁力騎士団が槍を構えて近づいてくる。これ以上接近されるのは危険だ。
「風よ、幾重にも重ね束ね、破鎚となれ。エアロ・ブラスト!」
風魔法で磁力騎士団を弾き飛ばし、畳みかけるように氷魔法を浴びせる。動きを止めたところで、追撃の詠唱に入る。
「湖の精霊に魅入られし、銀槍の主よ。その鋭き切っ先にて、我が敵を祓え。フィンブルナイト!」
騎士は騎士同士戦わせるのがいいと咄嗟に思った。だから、氷で出来た馬に乗った巨大な騎士を出現させた。
「突撃!」
氷の騎士が磁力騎士団に突撃していく。
「んー、やっぱりこれだけじゃダメかぁ」
メルア先輩は慌てた様子もなく、機体の腰のバックパックから取り出した植物の種を大闘技場の地面に撒き始めた。
「命よ芽生えよ、根付き育め、大地の祝福をここに。プログレシオ」
急速に成長した植物は巨木となり、磁力騎士団と交戦する氷騎士の槍を絡め取る。さらに地面から伸びて来た根が氷騎士と馬の脚を巨木に拘束した。
「そんな……」
「えへへっ。凄いでしょ? 土魔法ってこんなことも出来るんだよ。ちゅーても魔女が育てた植物の種が必要だから、あんまり無駄遣いはできないんだけどねぇ」
メルア先輩がそう言いながら、磁力騎士団の動きを鈍くしていたワタシの氷魔法を炎魔法で溶かす。自由の身になった磁力騎士団たちは、氷騎士に一斉に襲いかかり、躊躇なくバラバラに砕いた。
リーフの詠唱の声が聞こえた。
次の瞬間、地面が揺れて金色のエーテルが氷の壁を構築し始めた。フロストディバイドは、エーテル過剰生成症候群のリーフが使えば強力な氷魔法になる。この広い大闘技場を四つに分断出来るほどに。
「へぇ~。氷の魔法で闘技場の中に小さいリングを作って一対一の状況を作ったっちゅーわけだ! さっすが、師匠♪」
これでワタシたちはそれぞれ一対一の状況に持ち込まれた。つまり、リーフがこの状況を作ってくれたということは、ワタシがメルア先輩に勝てると信じてくれたということ。
「……絶対に負けない」
リーフの期待に応えたい。強くなったワタシを見てほしい。だから、ワタシは相手が誰であれ、負けるわけにはいかない。
「メルア先輩、行きますよ!」
氷の壁の構築が止まるのを見届け、声を張り上げる。
「まったく、アルフェちゃんは律儀だよねぇ。じゃあ、うちも遠慮なく行くよ!」
メルア先輩が無詠唱で土魔法を放ち、石礫の雨を降らせる。ひとつひとつの攻撃のダメージは大したことはない。多分これは目眩ましだ。
ワタシは無詠唱で風魔法を放ち、石礫の軌道を逸らす。間髪入れずに頭上に石槍が具現する兆候があった。
すかさずワタシはウォーターランスを発動させ、それを迎撃する。
「凄まじい攻防! 無詠唱の魔法の撃ち合いのため、発動するまで一瞬たりとも気が抜けなぁああああいいぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ジョニーさんの実況の合間にもワタシたちは魔法を撃ち合っている。浄眼を持つ者同士の魔法の戦いは、ほぼ互角だ。メルア先輩の両眼の浄眼に対して、片眼だけのワタシは、半分だけ流れるエルフの血によってその魔力が底上げされている。
「ところで、そのローブって、発動する魔法を隠すため?」
メルア先輩の質問にワタシは答えない。これはワタシの切り札だから。
「まっ、言えないよねぇ。でも、魔導杖から出す一瞬でうちはどんな魔法か見切れちゃうから意味ないんだけどさ」
メルア先輩がそう言いながら石礫を石塊に変え、そこに石槍を合わせてくる。宙に浮かぶそれらに対し、ワタシは雷魔法を選択した。
「天雷よ、紫電の槍となり、敵を穿て。ライトニング・ファランクス!」
魔導杖から同心円状に雷を拡散させ、石槍を迎撃する。でも、メルア先輩の攻撃はそれで終わりではなかった。
「屹立せよ、我は城塞にして、敵を砕く鋼の勇者なり。アイアンクラッド!」
メルア先輩のアルケーミアの前に巨大な四枚の鋼鉄板が出現する。ワタシの放った雷魔法はその板に吸い込まれるように迸る。
「うわっ、すごい威力! こんなライトニング・ファランクス見たことないよ。やっぱ、うちも師匠の魔導杖が欲しくなっちゃう~!」
高出力の雷魔法であることを認めてもなお、メルア先輩の口調には余裕がある。なぜなら、地面の上に出現させた鋼鉄板のせいで、雷魔法が全て地面に逃れて無効化されてしまったからだ。
「まぁ、威力があっても魔法って結局相性なんだよね。ちゅーことで、はい、お返しっと」
死角となった鋼鉄板の向こうからメルア先輩がウィンドカッターを飛ばしてくる。ワタシはレムレスの噴射推進装置を噴かせて、咄嗟にその軌道から逃れた。
「でさ、作った素材を無駄にしないのがうちの拘りなんだよね。磁力操作!」
メルア先輩が磁力魔法を発動させる。磁力操作で四枚の鋼鉄板が宙に浮き上がった。
「からのぉ~! 鋼の身体よ、武威を示せ。武装錬成!」
この魔法はホムちゃんが得意としている武装錬成だ。メルア先輩が防御に転じたとは思えず、ワタシはその変形を見守る。
宙に浮かんだ鋼鉄の板はぐにゃぐにゃと形を変えて丸まったかと思うと、槍と盾を持った四体の騎士の像に変形した。上半身だけではあるけれど、独立して動いているのがわかる。
「合体魔法、磁力騎士団ってね♪」
凄いセンスだと素直に思った。最初の魔法を発動した時から、こうすることを想定していたことがよくわかる。メルア先輩は、複数の魔法を併用して全く異なる魔法現象を起こして見せたのだ。
「凄いです、メルア先輩!」
「褒めてもなんにもでないよ~! メルアちゃん親衛隊、突撃~!」
メルア先輩の指令で磁力騎士団が迫ってくる。元が鋼鉄の板だとわかっているので、もう一度溶かせば消えるはずだ。
ワタシは鋼鉄を溶かすため、炎魔法を無詠唱で投射する。けれど、メルア先輩はそれを予測していたのか、無詠唱のウォーター・シューターで見事に相殺した。
「さぁて、どうする? アルフェちゃん」
磁力騎士団が槍を構えて近づいてくる。これ以上接近されるのは危険だ。
「風よ、幾重にも重ね束ね、破鎚となれ。エアロ・ブラスト!」
風魔法で磁力騎士団を弾き飛ばし、畳みかけるように氷魔法を浴びせる。動きを止めたところで、追撃の詠唱に入る。
「湖の精霊に魅入られし、銀槍の主よ。その鋭き切っ先にて、我が敵を祓え。フィンブルナイト!」
騎士は騎士同士戦わせるのがいいと咄嗟に思った。だから、氷で出来た馬に乗った巨大な騎士を出現させた。
「突撃!」
氷の騎士が磁力騎士団に突撃していく。
「んー、やっぱりこれだけじゃダメかぁ」
メルア先輩は慌てた様子もなく、機体の腰のバックパックから取り出した植物の種を大闘技場の地面に撒き始めた。
「命よ芽生えよ、根付き育め、大地の祝福をここに。プログレシオ」
急速に成長した植物は巨木となり、磁力騎士団と交戦する氷騎士の槍を絡め取る。さらに地面から伸びて来た根が氷騎士と馬の脚を巨木に拘束した。
「そんな……」
「えへへっ。凄いでしょ? 土魔法ってこんなことも出来るんだよ。ちゅーても魔女が育てた植物の種が必要だから、あんまり無駄遣いはできないんだけどねぇ」
メルア先輩がそう言いながら、磁力騎士団の動きを鈍くしていたワタシの氷魔法を炎魔法で溶かす。自由の身になった磁力騎士団たちは、氷騎士に一斉に襲いかかり、躊躇なくバラバラに砕いた。
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