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第19話 老夫婦
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あわよくばそのまま過ぎ去って欲しかったのだけれど、大方の予想通りお爺さんの運転する耕運機は僕達の目の前で狙い澄ましたかのようにピタリと止まった。
ハンドルを握り耕運機に跨ったまま、麦わら帽子を被った皺くちゃ顔のお爺さんが訝しげに目を細める。
「あんたらぁ、他所者じゃろ。風車を壊したとこはぁ、しっかりこの目で見させてもらったぞ」
ドキっとした。...どころではない。
ひょっとしたら事の一部始終を見られていたかも知れない。
と云うかお爺さんはそう言っているではないか...
「この村の空気が余りにも美味しいものではしゃぎ過ぎたようでして!申し訳ありませんでしたっ!」
「はしゃぎ過ぎて申し訳ありません!」
僕が子供言い訳のような理由を述べ即座に頭を下げると、未桜も間髪入れずに追随した。
下げた頭をサッと上げて事の解決を図る。
「もちろん弁償か修復をさせて頂きます!あのぉ、良ければこの風車の所有者の方を教えて頂けないでしょうか?」
風車の所有者はこのお爺さんとお婆さんかも知れないけれど、念のため確認しておかなければならない。
すると細めた目を更に細めて、ニンマリと笑みを浮かべた耕運機のお爺さんが言う。
「ふぁっふぁっふぁっ。残念なことにこの風車の持ち主はもう生きておらんよ」
えっ!?まじか!?でも、それって笑って言うことか!?
僕が更に突っ込んで持ち主のことを尋ねようとしたが、それよりも早くお爺さんが続けて話す。
「今はこの風車の管理は儂が管理しているようなもんじゃ。そうじゃなぁ...あんたらの正直さに免じて今回は許してやろう。ほれ、儂が家でなおして戻しておくから後ろの婆さんに渡してくれ」
なんと!?てっきり怒られると覚悟していたのに意外にも真逆の展開ではないか!
しかし、お爺さんの寛大さに甘え、何もせずに無罪放免というのもなんだか悪い気がする...
「あのう、僕達今夜は井伊影村で一泊するんです。もし風車が明日までになおるのであれば手伝わせていただきたいのですが...どうでしょう?」
と細やかながら提案すると今度はお爺さんではなく、荷台でニッコリしながら話を聞いていたお婆さんが口を開く。
「あんたら若いにのに偉いねぇ。そんな大したことじゃないし気ぃ使わんでええよぉ」
なんだか耕運機の老夫婦が神様に見えてきた...
風車をお婆さんに渡そうとしていた未桜が言う。
「いえいえ、是非手伝わせてください。じゃないと私達の気が晴れませんから...」
「気が晴れない」は自己都合とも取られかねないけれど...
「分かった分かった。明日の同じ時間にここに来れば良い。風車を直して持って来るけぇ」
「ありがとうございます!」
僕は神対応の老夫婦に「感謝」の二文字しか頭に浮かばなかった...
ハンドルを握り耕運機に跨ったまま、麦わら帽子を被った皺くちゃ顔のお爺さんが訝しげに目を細める。
「あんたらぁ、他所者じゃろ。風車を壊したとこはぁ、しっかりこの目で見させてもらったぞ」
ドキっとした。...どころではない。
ひょっとしたら事の一部始終を見られていたかも知れない。
と云うかお爺さんはそう言っているではないか...
「この村の空気が余りにも美味しいものではしゃぎ過ぎたようでして!申し訳ありませんでしたっ!」
「はしゃぎ過ぎて申し訳ありません!」
僕が子供言い訳のような理由を述べ即座に頭を下げると、未桜も間髪入れずに追随した。
下げた頭をサッと上げて事の解決を図る。
「もちろん弁償か修復をさせて頂きます!あのぉ、良ければこの風車の所有者の方を教えて頂けないでしょうか?」
風車の所有者はこのお爺さんとお婆さんかも知れないけれど、念のため確認しておかなければならない。
すると細めた目を更に細めて、ニンマリと笑みを浮かべた耕運機のお爺さんが言う。
「ふぁっふぁっふぁっ。残念なことにこの風車の持ち主はもう生きておらんよ」
えっ!?まじか!?でも、それって笑って言うことか!?
僕が更に突っ込んで持ち主のことを尋ねようとしたが、それよりも早くお爺さんが続けて話す。
「今はこの風車の管理は儂が管理しているようなもんじゃ。そうじゃなぁ...あんたらの正直さに免じて今回は許してやろう。ほれ、儂が家でなおして戻しておくから後ろの婆さんに渡してくれ」
なんと!?てっきり怒られると覚悟していたのに意外にも真逆の展開ではないか!
しかし、お爺さんの寛大さに甘え、何もせずに無罪放免というのもなんだか悪い気がする...
「あのう、僕達今夜は井伊影村で一泊するんです。もし風車が明日までになおるのであれば手伝わせていただきたいのですが...どうでしょう?」
と細やかながら提案すると今度はお爺さんではなく、荷台でニッコリしながら話を聞いていたお婆さんが口を開く。
「あんたら若いにのに偉いねぇ。そんな大したことじゃないし気ぃ使わんでええよぉ」
なんだか耕運機の老夫婦が神様に見えてきた...
風車をお婆さんに渡そうとしていた未桜が言う。
「いえいえ、是非手伝わせてください。じゃないと私達の気が晴れませんから...」
「気が晴れない」は自己都合とも取られかねないけれど...
「分かった分かった。明日の同じ時間にここに来れば良い。風車を直して持って来るけぇ」
「ありがとうございます!」
僕は神対応の老夫婦に「感謝」の二文字しか頭に浮かばなかった...
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