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第76話 夜の海
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船のエンジンが復活して動いてくれたのは良かったけれど、祖父に言わせればどうやら本調子には程遠く、速度が上がらずなかなかのロースピードで船は進んで行く。
おまけに辺りは暗くなる一方だというのに、船の電灯も故障して使えないままという有り様だった。
電灯の故障に関しては、流石に祖父の管理不足だと思ったのだが、敢えてそこは子供ながらに黙したものである。
「いちぃ、すまんどんこいを持って船ん前ば照らしてくれ」、そう言って祖父は古びた懐中電灯と雨合羽を僕に手渡した。
僕は祖父の指示に従い雨合羽を身にまとい、船の先端付近に腰を下ろし、点くかどうか分からない懐中電灯のスイッチを入れた。
幸いなことに古びた懐中電灯は弱々しいながらも明かりを発してくれた。もちろん車のライトのように前方を照らしてはくれなかったけれど、少なくとも周囲に船の存在を知らせるにはこと足りていたかも知れない。
雨合羽は肌寒かった僕の身体を守ってくれて、立っていた鳥肌もいつの間にか消えていた。
とはいえ船の周囲には灯りがまだ一つと見えず、小学三年生の僕にとっては遊園地のお化け屋敷並みの怖さがあったものである。
そんなことを考えつつ、港を目指して進む船の周囲を見渡していると、不意に僕の視界へある何かが飛び込んで来た。
僕は疲労の所為で見間違ったのではないかと手の甲で瞼をゴシゴシと擦り、その「ある何か」の方へ再度視線を送った。
見間違いではなかった。
船の右斜め前の水上に、それは確かに発光しながら浮いていたのだった...
おまけに辺りは暗くなる一方だというのに、船の電灯も故障して使えないままという有り様だった。
電灯の故障に関しては、流石に祖父の管理不足だと思ったのだが、敢えてそこは子供ながらに黙したものである。
「いちぃ、すまんどんこいを持って船ん前ば照らしてくれ」、そう言って祖父は古びた懐中電灯と雨合羽を僕に手渡した。
僕は祖父の指示に従い雨合羽を身にまとい、船の先端付近に腰を下ろし、点くかどうか分からない懐中電灯のスイッチを入れた。
幸いなことに古びた懐中電灯は弱々しいながらも明かりを発してくれた。もちろん車のライトのように前方を照らしてはくれなかったけれど、少なくとも周囲に船の存在を知らせるにはこと足りていたかも知れない。
雨合羽は肌寒かった僕の身体を守ってくれて、立っていた鳥肌もいつの間にか消えていた。
とはいえ船の周囲には灯りがまだ一つと見えず、小学三年生の僕にとっては遊園地のお化け屋敷並みの怖さがあったものである。
そんなことを考えつつ、港を目指して進む船の周囲を見渡していると、不意に僕の視界へある何かが飛び込んで来た。
僕は疲労の所為で見間違ったのではないかと手の甲で瞼をゴシゴシと擦り、その「ある何か」の方へ再度視線を送った。
見間違いではなかった。
船の右斜め前の水上に、それは確かに発光しながら浮いていたのだった...
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