天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(下)

第八話

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 一つ目の鬼の式神。
 男はその式神の鬼に栗郷を殺せと命じ、鬼は大口を開けて迫ってきた。

「滅!!」

 栗郷は人差し指と中指で五芒星を胸の前で描き、術を放つ。
 白く光る五芒星は一つ目の鬼に一直線に放たれ、鬼を弾き飛ばす。

 それを見た男は更にもう一体の鬼を召還する。
 一つ目と同じような風貌だが、こちらは二本の角がある。
 
「何匹来ようが同じだ」

 栗郷は上着のポケットから文字の書かれた札を取り出し、人差し指と中指で挟んで呪文を唱える。

「悪鬼、ここより消滅せしめよ、急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう

 栗郷は札を鬼へ放つと札は複数の光の矢のような刃となり鬼の身体を貫く。
 すると鬼の身体はバラバラに弾け飛ぶ。

「蓮!!」

「………っ!?」

 一瞬勝負が着いたかのように思われたが狐の一匹が何かに気が付いて栗郷をその場から退避させるように体当たりして突き飛ばす。

 鬼の身体が黒い液体へと変化しその場に雨を降らせる。
 するとそこにある草木が途端に枯れてしまう。

「蠱毒か………」

 間一髪狐のお陰でその雨を浴びずに済んだ栗郷は呟いた。
 鬼の中に仕込んだ蠱毒の術。
 栗郷が鬼を倒したことによって蠱毒が雨となって栗郷を襲った。
 もし浴びていれば身体を蝕み、呪われる。
 
 あの男は栗郷と同じように呪術に特化した者なのだろう。
 だがその男は周りを見渡しても見当たらない。

「クッソ逃げられた!!
かい、追え!!」

 魁と呼ばれた狐の片割れはすぐさま男の匂いを頼りに探しに行く。
 栗郷も体勢を立て直し男を追おうとしたその時、利音の犬神がこちらに向かってくるのを見つける。

 犬神が栗郷の元に降り立つと背中に乗っていた利音が転げ落ちるように降りる。

「おい宗像、大丈夫か?
つか高住は?」

 満身創痍の利音。
 そして姿が無い真尋。
 男を追い掛けている場合ではないと栗郷は利音に声を掛ける。

「おいしっかりしろ!!
高住はどうした?」

「ん………栗郷………!?」

 漸く意識がはっきりしてきた利音に栗郷がもう一度高住真尋は何処かと問う。

「………あの馬鹿、俺だけ逃がしたのか?」

 まだ大蝦蟇と一人で戦っているのかと栗郷はもう一匹の狐に目を向ける。

てい高住に加勢しろ」

「分かった」

 もう一匹の片割れの狐、啼は真尋の元へ向かう。
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