天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(下)

第四話

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 座敷わらしの少年は対価を求められ、それを分かったと了承した。

「だけど、あなたが何を欲しいのか分かりません。
おいらは何をあげればいいですか?」

 何が欲しいか問われた利音はこう答えた。

「じゃあ金を。
妖祓いに見合った金額がいい」

「お金……」

 金銭を求める利音に真尋はちょっと待ったと遮る。

「え、お金ですか?
なんかもっと……こう………」

 利音なら価値のありそうな骨董品などを要求すると思ったので、こんな現実的な物を求めるとは思わなかった。
 しかもこんな子供に現金を要求するのは、いくら長くここに存在する妖とは言え、何だかなと思った。

 しかし利音としては、真尋への給料に生活費など考えたら最良である。

「富を運んでくると言われる座敷わらしにピッタリでしょ」

 そう利音が挑発するような目で少年を見ると、少年は一度小さく頷いた。

「……分かりました。
がんばってみます」

「じゃあ取り引き成立」

 そう言って立ち上がる利音だったが、やはり具合悪いようで壁に手をついて唸っている。

「大丈夫ですか?」

「これが大丈夫そうに見える?」

 これではあまり頼れないなと真尋は割り切って、妖探しに部屋の外へ出る。
 部屋を出た廊下は一応小さな灯りが点いている。
 利音はおそらく昼間に行った骨董部屋に潜んでいた妖だろうとそこへ向かおうとするが、あそこは関係者以外立ち入り禁止だ。

「しょうがない……」

 利音はそう言うと、懐から紙人形を取り出した。

「淡き灯火その中へ」

 人の形のその紙は利音が呪文を吹き込み、行けと命じると動き出し、関係者以外立ち入り禁止の場所へ向かった。

「どうするんですか?」

 真尋がそう質問する。

あれに入った霊力は妖に取っては美味しい物だろうから、あっちから探して貰ってこっちまで誘き出す」

 こちらから行けないのであれば向こうから来て貰えばいいと言う。
 とは言えまだかの部屋に留まっている保証はない。
 もしかしたら他の所に移動している可能性もある為、同時に他の所も見て回る事にした。


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