天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第九話

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 緋葉が真尋に助けられたのは何の因果か………
 これもきっと必然なのかもしれない。

 するとここで秋人のスマホが鳴った。
 見るとそれは天明道からのメール。

『天明道本部にて天狗の襲撃。
至急本部へ集まれ』

 天明道の全員に送信された物だ。
 
「何て事だ!!」

 天狗達がもう動き出した。
 それも本部への攻撃だ。
 メールには詳細が記載されていない事から天明道も相当慌てていることが予想される。
 秋人は急いで支度する。

「ただいま~」

 するとこのタイミングで真尋が風呂から上がってくる。
 この、ただいまは幼い頃から風呂から上がった時に言葉にする真尋の口癖だ。
 いつもなら秋人がお帰りと返事をくれるのだが、今回は返って来ない。
 どうしたのだろうかと思っていたら、何やら慌ただしく動いていた。

「ああ真尋、すまないが天明道から呼び出しだ。
あとは頼む」

 天明道から呼び出しと言うが、随分深刻な雰囲気だ。
 なんだか深刻そうな様子に真尋は不安を覚えた。

「何かあったの?」

「………天明道の本部が天狗に襲われているようだ」

「………っ!?」

 どうせ誤魔化しきれないので正直に真尋に話した。
 案の定心配そうな顔をする。

「お、俺も……」

「お前は天明道とは関わりはない。
だから行く義理もない。
ここに居なさい。
もしくは利音君の家に戻りなさい」

 きっと自分も行くと、今の真尋なら言うと思った。
 天狗を相手にあんなボロボロになった秋人を見たらそう思うのも理解出来る。
 しかし、天明道に所属していない真尋には関係の無いことだ。
 それに___

「私は大丈夫だ。
絶対に死んだりはしない。
約束しよう」

 何の迷いもない、真っ直ぐな目でそう伝えた。

「分かった………」

 こんな風に言われたらもう何も言えない。

「緋葉、真尋を頼む」

「………はい」

 秋人は緋葉に真尋を託し、家を出た。
 
 あの時は心の何処かで死ぬことも覚悟していた。
 それはもう十分長く生きたと何処か満足してしまっていたから。

 真尋も大学生になり、家を出た。
 万が一彼に何かあっても、朱兼や芙紗、竜樹、それに利音が居れば大丈夫だろうと、安心感を抱いてしまった。
 自分の役目はもう終わったのだと………

 だから負けた。
 秋人に圧倒的に足りなかったのはだ。

 だが、あんな風に真尋に泣かれてしまったからには、決して死ぬ訳にはいかない。

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