天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第十一話

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「舐めるでないぞ合いの子が!!」

「くっ………!!」

 風楽に首を絞められ地面へと落ち、激しく打ち付けられて砂埃が舞い、二人を覆い隠す。
 
 そして二人を包む砂埃が落ち着き、彼らの姿が露になると、風楽押し倒され、首に手を掛けられた秋人の額や腕から血が滴り落ちていた。

「はっ………」

 地面に叩き付けられた衝撃で息も絶え絶えになる秋人。
 その上の風楽が一見勝ったかのように見えたが次の瞬間、風楽はゴホッと血を吐いた。
 見ると彼の胸には秋人の錫杖が突き刺さっている。
 錫杖には秋人の妖力が纏っており、触れたものを切り裂く、謂わば剣と化した錫杖となっていた。

「………その合いの子に殺られる気分はどうだ?」

 接近戦は苦手とは言え、戦えないとは言っていない。

「きさ……まっ………!!」

 風楽の目から光が消え、塵となって消え去った。

「はっ………」

 風楽との戦いに勝った秋人だが、自身のダメージも相当なもの。
 もう戦う気力は残されていないが、まだまだ周りは戦いの最中。

「風楽様!!」

「………っ!?」

 それに風楽の眷属は主を殺され逆上し、秋人に襲い掛かってくる。
 戦う気力は残されて無いものの、死なないと真尋と約束したからには何としてでも生きなければならないと、立ち上がる。
 その時だった___

「悪鬼、ここより消滅せしめよ、急急如律令!!」

「………っ!?」

 横から現れたその人物の人差し指と中指に挟んだ札が複数の光の矢のような刃となり天狗らを貫いた。

「アンタ大丈夫か?」

「君は、確か栗郷家の……」

 秋人を襲う天狗を祓い、助けたのは栗郷蓮だった。
 栗郷家の跡取り息子は天明道では有名なので誰が知っていてもおかしくはない。

「一応聞くが、アンタは天明道だよな?」

 秋人は栗郷を知っていても、栗郷は秋人を知らないので、見た感じ秋人は天狗である為、敵か味方か判断が付きにくい。

「愚問だな。
今しがた、天狗を滅したと言うのに……」

 心外だと言うと確かにそうだと栗郷は返す。

「あとは俺が殺る」
 
 そしてまだ襲ってくる風楽の残党に向かい術を放つ。

黒呪水こくじゅすい

 栗郷が唱えると地面から天狗らの周りに黒い渦が現れ、それが水柱となって天狗らを囲うとシャワーのように黒い水を浴びせた。

「な…んだ………」

 すると天狗達はたちまち踠き苦しみ出す。
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